電子処方箋の導入促進に向け、補助率・補助上限の引き上げ、補助引き下げの廃止などが必要—四病協・日医等
2023.2.22.(水)
電子処方箋の導入について「実態に合った補助」を行う必要があり、補助率(現在病院3分の1、診療所2分の1)の引き上げ、補助上限((⼤規模病院486万6000円、それ以外の病院325万9000円、診療所38万7000円)の引き上げを行ってほしい—。
また、電子処方箋導入が本年(2023年)4月以降になる場合には補助率の引き下げ(病院3分の1→4分の1、診療所2分の1→3分の1)が行われる予定だが、ほとんどの医療機関は年度内導入は困難であり「引き下げの廃止、または引き下げ期限の大幅延期」を行ってほしい—。
⽇本病院会・全⽇本病院協会・⽇本医療法⼈協会・⽇本精神科病院協会・全国医学部⻑病院⻑会議・国⽴⼤学病院⻑会議・⽇本私⽴医科⼤学協会・日本医師会は2月16日、加藤勝信厚生労働大臣に宛てて、こうした「電⼦処⽅箋導⼊に伴う補助⾦の拡充に関する要望」を連名で提出しました(全日病サイトはこちら)。
オンライン資格確認等システムの導入で、医療機関もベンダーも余裕が全くない状況
電子処方箋は、オンライン資格確認等システムのインフラを活用し、これまで「紙」で運用されていた、医療機関から薬局への処方指示(処方箋発行)を「オンライン」で行うものです。
大まかな流れは以下のようになります(関連記事はこちら)。
(a)患者が医療機関を受診し、「電子処方箋の発行」を希望する(オンライン資格確認等システムでの資格認証や診察時などに確認、マイナンバーカード以外で受診する場合には口頭で確認する)
↓
(b)医療機関において医師が、オンライン資格確認等システムの中に設けられる【電子処方箋管理サービス】に「処方箋内容を登録」する
↓
(c)医療機関は患者に「電子処方箋の控え」(紙、アプリ)を交付する
↓
(d)患者が薬局を受診し、「電子処方箋の控え」を提示する
↓
(e)薬局において、薬剤師が【電子処方箋管理サービス】から「処方箋内容」を取得し、調剤を行う
↓
(d)患者に薬剤を交付する
このうち(b)および(e)において、患者同意の下で「過去に処方・調剤された薬剤情報」の閲覧が可能になるため、重複投薬や多剤投与、禁忌薬剤の投与などを「リアルタイム」でチェックし是正を図ることが可能になります。
厚労省は、こうした電子処方箋の仕組みを全国で本年(2023年)1月26日から運用開始していますが、まだ対応医療機関・薬局は少数にとどまっています(関連記事はこちら)。
電子処方箋導入医療機関には「医療情報化支援基金」を活用した補助が行われていますが、日病等は▼補助率が低い(病院3分の1、診療所2分の1)▼事業額上限が低い(⼤規模病院486万6000円、それ以外の病院325万9000円、診療所38万7000円)▼導⼊期限が短い(本年(2023年)4⽉以降は補助率が病院4分の1、診療所3分の1に低下する)—という課題があるために「導入が遅れており、このままでは⼗分なインセンティブになり得ず、普及が進まない」と指摘します。
さらに日病等は「電⼦処⽅箋の導⼊により医療機関は収益増につながるわけではない。電子処方箋の受益者は患者と国(重複投薬防止による医療費適正化)であり、電⼦処⽅箋を含めた医療DXを国策として推進するのであれば、現場のシステム導⼊・維持、セキュリティ対策などの費⽤は、本来、国が全額負担すべき」であるとし、次のような要望を行いました。
(1)補助率の引き上げ
→現在「病院3分の1、診療所2分の1」であるが、本来は「10分の10」が望ましく、医療機関の⾃⼰負担分ができる限り少なくなるよう補助率を引き上げるべきである
(2)事業額上限の引き上げ
→現在、電⼦処⽅箋のシステムが明確化する前に実施したシステム事業者(ベンダ)への聞き取り調査を参考に「⼤規模病院486万6000円、それ以外の病院325万9000円、診療所38万7000円」と設定されているが、そこでは「医療機関側の作業⼯程が多めに設定される」など実態にそぐわない低めの⾦額で⾒積もられている
→国で、改めてシステム事業者に調査し、「実態を反映した事業額上限の引き上げ」を行うべきである
(3)補助申請期限の⾒直し
→本年(2023年)4月1日以降導入の場合には補助率が引き下げられる(病院3分の1→4分の1、診療所2分の1→3分の1)が、医療機関には「公表と同年度内での予算確保」は難しい
→医療機関・システム事業者もオンライン資格確認等システムの導入で余裕がなく、電⼦処⽅箋対応のための開発・現場受け⼊れ態勢整備は全く不十分である
→このため本年度(2023年3月まで)に電子処方箋を導入できる医療機関はごくわずかであり、「2023年度度以降に導⼊する場合の補助率低減の廃⽌」もしくは「低減するまでの期限の⼤幅な延⻑」を行うべきである
こうした要望を踏まえ、厚労省がどう判断するのか注目する必要があるでしょう。
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