オンライン資格確認等システム、来年(2023年)4月からの原則義務化に向け「一刻も早い対応」が必須—厚労省・三師会
2022.8.25.(木)
オンライン資格確認等システムは、「医療機関等における事務負担軽減」にとどまらず、「安心・安全で質の高い医療の実現」にとって欠かせない仕組みであり、来年(2023年)4月からは導入が「原則義務化」される—。
義務を果たさない場合には「保険指定取り消し」という厳しい対応も行われることから、「やむを得ない」場合には救済措置の検討も予定されている。ただし、救済措置は「医療機関等やシステムベンダーの双方が努力する」ことが大前提であり、医療機関においては救済措置の状況を待たずに「オンライン資格確認等システム導入に向けた顔認証付きカードリーダーの申し込み、システムベンダーとの契約」を一刻も早く進めてほしい—。
8月24日に、厚生労働省と三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)が合同で開催した「オンライン資格確認等システムに関するWEB説明」で、厚生労働省保険局医療介護連携政策課の水谷忠由課長は、医療機関等に対してこのように強く要請しました(WEB説明会資料はこちら、後日の動画配信も予定されている)。
療養担当規則等で「オンライン資格確認等システム」導入を原則義務化
オンライン資格確認等システムは「患者の資格確認(どの医療保険に加入しているのかの確認)を円滑・確実に行う」仕組みですが、そのインフラを活用して「患者の診療情報(現時点では特定健康診査情報、薬剤情報)を医療機関等が確認し、診療内容に活かす」ことが可能となっています(近くより広範なレセプト情報、さらに将来的に電子カルテ情報にまで情報共有を拡大していく、関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。
こうした仕組みのメリットが最大限に活かされるためには「すべての医療機関がオンライン資格確認等システムを導入・運用し、すべての患者がマイナンバーカードの保険証利用を行う」ことが求められますが、導入・運用医療機関等が少ないのが実際です(本年(2022年)8月14日時点の運用開始は26.8%)。
このため厚労省は次のような「推進策」を決定しており、8月24日にWEB説明会が行われました。
(A)療養担当規則(保険医療機関及び保険医療養担当規則)などを見直し、来年(2023年)4月から「オンライン資格確認等システム導入を義務化」する(関連記事はこちら)
(B)本年(2022年)10月から、【電子的保健医療情報活用加算】を廃止し、新たに【医療情報・システム基盤整備体制充実加算】(初診料の加算、マイナンバーカードの保険証利用を行う場合には患者負担が少し小さくなるような工夫がなされている)を設ける(関連記事はこちら)
(C)医療機関等におけるシステム改修費への支援・補助を充実させる(例えば病院に対しては補助上限額を2倍に引き上げるなど)(関連記事はこちら)。
救済措置の内容を待たずに、「一刻も早い」カードリーダー申し込みを
WEB説明会では、上記推進策の解説とともに、質疑応答も行われています。
まず、医療機関等の現場は、冒頭に述べた救済措置(経過措置)に注目しているようです。(A)の「原則義務化」により、オンライン資格確認等システムを導入していない医療機関等は、最悪の場合「2023年4月以降、保険指定が取り消される」可能性もあります。この場合、医療費は「全額、患者負担」となるため、ほとんどの患者は「他医療機関等に流れていく」ことでしょう。導入後には再度の保険指定が受けられますが、「一度離れた患者」に戻ってきてもらうには大変な労力がかかることは間違いありません。
このように「非常に重い見直し」が行われていることから、8月10日に中央社会保険医療協議会では診療側委員から「導入が遅れた場合には、紋切り型に保険指定取り消しとせず、救済措置などを検討してほしい」と要望し、「本年(2022年)末頃の状況を見て、地域医療に支障を生じる等、やむを得ない場合の必要な対応について、その期限も含め検討を行う」旨の附帯意見が取りまとめられました。いわば「何らかの救済措置を検討する」というものです(関連記事はこちら)。
しかし、支払側委員は「医療機関等の申し込みが遅れ、それが原因で導入が間に合わないケースは『やむを得ない事情がある』とは言えず、救済措置の対象にすべきでない」と強く指摘(関連記事はこちら)。8月24日のWEB説明会でも水谷医療介護連携政策課長は「救済措置は『関係者がしっかりと取り組む』ことが大前提となる」との考えを示しています。
今後、多くの医療機関等でシステム改修が行われ、ベンダーが「極めて多忙になる」ことが予想されます。そうした中で医療機関等のカードリーダーシステム申し込みなどが遅くなれば「ベンダーの手が回らず、2023年4月の運用開始に間に合わない」ケースも出てきかねません。したがって医療機関等は「一刻も早い顔認証付きカードリーダーの申し込み、システム改修を行うベンダーの選定、改修計画の作成」などに努める必要があり、水谷医療介護連携政策課長もこの点を強く要請しています。
もっとも「ベンダー側がしっかり対応してくれない、法外なシステム改修費の見積もりが出され困っている」などの問題も出ていると指摘されます。この点について水谷医療介護連携政策課長は「大手・中小も含めたベンダーの導入促進協議会を開き、『来年(2022年)3月末までにすべてのクライアント(医療機関等)でオンライン資格確認等システムを稼働できる』ような対応を依頼している」旨を説明するとともに、「仮に『ベンダーの動きが遅い』などの問題がある場合には厚労省に連絡してほしい。個別の働きかけも行う」旨を強調しています。
また医療機関等には「マイナンバーの保険証利用が進んでおらず、オンライン資格確認等システムを導入しても利用場面が少ない」ために、導入の意義を感じにくい部分もあるようです。この点ついて水谷医療介護連携政策課長は「マイナンバーカードの保険証利用は徐々に進んできており、今後は『マイナンバーカードの保険証利用がスタンダード』になる。患者・国民には『マイナンバーカードの保険証利用のメリット』(過去の薬剤情報を診療に活かすことで、より良い医療を受けられる)を丁寧に周知し、実感していただく。また新加算(医療情報・システム基盤整備体制充実加算)では『マイナンバーカードの保険証利用の場合に、自己負担が小さくなる』仕組みとしており、この点もしっかり広報する。『マイナンバーカードの保険証利用』と『医療機関等へのオンライン資格確認等システム導入』を同時並行で進めていく」考えを強く示しました。
この点、日本医師会の長島公之常任理事は「自院では、診療の際に薬剤情報画面を患者と一緒に見ながら『この医薬品とこの医薬品は一緒に服用しても構いませんよ』などと話し合い、患者さんにもオンライン資格確認等システムのメリットを感じてもらっている」と実際の状況を説明しています。「マイナンバーカードの保険証利用」と「医療機関等へのオンライン資格確認等システム導入」とが同時に進むことで、こうした場面が飛躍的に増えていくことでしょう。診療形態も変化し、患者満足度が高まっていくと予想されます。
このほか、▼オンライン資格確認等システムに対応した通信回線は居住地ベースで99.3%に普及しているが、離島や山間地、光回線が導入されていないビルディングなどでは「他の仕組み」を活用することも可能である▼新加算などの詳細は9月上旬に通知等で示される▼補助金拡充の詳細などは、オンライン資格確認等システムのポータルサイトなどで詳説していく—ことなども紹介されています。
なお、オンライン資格確認等システムの「入口」となる顔認証付きカードリーダーは5社が作成し「全体で十分な量」が確保されている点も説明されました。しかし申し込みが遅くなれば「希望するカードリーダーを入手できない」事態も生じることから、「一刻も早く申し込みを行う」(自院にどのカードリーダーがマッチしているのかなどを、予めシステムベンダーと相談しておくことが重要)ことが必要です。
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