能登半島地震、DMAT派遣など既に実施しており、さらに「看護師等の派遣」や「被災患者の受け入れ」などの中長期支援実施―全自病・小熊会長
2024.1.17.(水)
能登半島地震の被災者、被災医療機関等を支援するために、自治体病院からはすでにDMAT(災害派遣医療チーム)・DPAT(災害派遣精神医療チーム)が数多く派遣されている。今後、さらに「看護師等の派遣」や「被災患者の受け入れ」などの中長期的支援を行っていく—。
全国自治体病院協議会が1月11日に記者会見を開き、小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)ら幹部から、こうした考えが示されました。
マイナンバーカードの保険証利用、医療機関のシステム改修支援、国民の不安払拭など重要
2024年度の次期診療報酬改定論議が中央社会保険医療協議会を中心に進んでおり、1月12日にはこれまでの審議内容の整理案を取りまとめました。その中で注目ポイントの1つとして「診療報酬による医療従事者の処遇改善」があげられます。
Gem Medで報じているとおり、武見敬三厚生労働大臣・鈴木俊一財務大臣の折衝により「看護職員、病院薬剤師、その他の医療関係職種の処遇改善(賃上げ)に向けて0.61%の診療報酬プラス改定を行う。2024年度にベースアップ分で2.5%の賃上げ、25年度に同じく2.0%の賃上げを行う」方針が決まり、入院・外来医療等の調査・評価分科会で技術的な検討が急ピッチで進んでいます。また、武見厚労相・鈴木財務相の折衝では「40歳未満の勤務医・勤務歯科医、薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所に勤務する歯科技工士などの賃上げに資する措置分」としてプラス0.28%程度を充当する方針も固められています。
小熊会長は「0.61%、0.28%の財源で、看護師をはじめとするメディカルスタッフや40歳未満勤務医の賃上げに対応できるのであろうか。その程度の財源では厳しいのではにか」と疑問を示すと同時に、近く示される詳細・具体的な対応案を見ながら対応方法を検討する考えを示しています。
また、2024年度診療報酬改定では「医療DX」も重要な柱の1つになっており(関連記事はこちら、その入り口が「マイナンバーカードによる資格確認」です。この点、政府は「本年(2024年)12月2日に保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化する」考えを示していますが、全自病幹部の間では「病院サイドのシステム改修は大掛かりになる。例えば再来受け付け機でマイナンバーカードによる資格確認ができればよいが、それには大きなシステム改修が必要で、相応のコストがかかるが、すべての費用補填はなされない」「患者・国民がマイナンバーカードに不信感を持っており、その払拭が十分になされなければ十分な普及は難しい」との考えで一致していることが小熊会長や松本昌美副会長(奈良県・南和広域医療企業団南奈良総合医療センター院長)から報告されています。
他方、能登半島地震において「医療従事者、とりわけ看護職員の不足が著しい」状況を踏まえ、被災地(石川県)から厚生労働省を通じて全自病に宛てて「看護師の派遣」に関する要請が来ていることが小熊会長や竹中賢治副会長(熊本県・天草市病院事業管理者)等から紹介されました。
自治体病院の多くは、すでに災害発生直後に医療的支援を行うDMAT(災害派遣医療チーム)・DPAT(災害派遣精神医療チーム)を数多く派遣しており、今後、さらに「看護師等の派遣」や「被災患者の受け入れ」などの中長期的支援を行っていく考えを小熊会長はじめ全自病幹部は強調しています。
この中長期的支援に向けては、「DMAT等は自立支援活動が可能であるが、一般の看護職員派遣等にあたっては、宿泊施設や食事などの確保が必要となる。その点の調整を進めたうえでスタッフ派遣を行っていく」(小熊会長、竹中副会長、松本副会長、田中一成副会長:静岡県立病院機構理事長、末永裕之参与:愛知県・小牧市病院事業管理者)、「東日本大震災では津波被害にあわなかった内陸の病院への被災者搬送を積極的に行った。能登半島地震でも広域搬送を積極的に進めていく必要がある」(望月泉副会長:岩手県立中央病院 名誉院長・岩手県八幡平市 病院事業管理者)といった考えが示されました。自治体病院病院をあげて被災地支援を行う体制が整えられます。
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