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介護情報を利用者・ケアマネ・介護事業者・市町村・医療機関で共有する【介護情報基盤】構築、共有情報などを整理—介護情報利活用ワーキング

2024.2.6.(火)

介護情報を利用者・ケアマネ・介護事業者・市町村・医療機関で共有する【介護情報基盤】を構築し、共有された情報をもとに「より質の高い、効率的な介護サービス提供」などにつなげていく—。

その仕組みの中で、どういった情報を、どういった関係者の間で、どういった手法を用いて共有するべきか—。

こうした議論が2022年秋から進んでおり、詰めの議論に入ってきました。2月5日に開催された健康・医療・介護情報利活用検討会「介護情報利活用ワーキンググループ」(以下、ワーキング)では、どういった情報を、どの関係者の間で、どういった手法で共有するかについて、方針案が厚生労働省から提示されました。次回(3月14日予定)会合でのとりまとめを目指します。

要介護認定・LIFEデータ・ケアプラン情報を【介護情報基盤】で共有へ

医療分野と同様に、介護分野についても「利用者の同意の下、過去の介護情報を介護事業者間で共有し、質の高い、効率的な介護サービスを提供する」ことが重視されます。

このため、政府は、新たに介護情報を多くの介護事業所やケアマネジャー、医療機関、利用者、市町村などの間で共有する仕組み【介護情報基盤】を構築します(医療・介護・健康等の情報を一元的に管理する全国医療情報プラットフォームの1要素となる)。

全国医療情報プラットフォームの一部に、介護情報を広く関係者で共有し「質の高い介護サービス提供」を目指す【介護情報基盤】を構築する(介護情報利活用ワーキング1 240205)



ワーキングでは、この【介護情報基盤】において、「どういった情報を」「どういった関係者の間で」「どのように共有」するか、といった議論を重ねてきました(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

2月5日の会合では、これまでの議論を踏まえ、厚生労働省から次のような方針案が提示されました。

【共有する情報】
▽まず(1)要介護認定情報(2)請求・給付情報(レセプト)(3)LIFEデータ(4)ケアプラン—の4情報から共有を進める
▽さらに、「調査研究事業等を通じて情報共有の有用性が想定される」「情報の標準化が進んでる」ものについても引き続き、共有の可否などを検討していく

【情報共有の関係者・対象者】
(0)基本的な考え方
▽介護事業所・医療機関:利用者が共有に同意したところとする
→事業所、院内のどのスタッフに情報共有可能とするかは各事業所・医療機関で判断
▽市町村(介護保険者):当該自治体における介護保険被保険者の情報を共有することを原則とし、災害時・住所地特例などでは例外的に「他自治体の介護保険被保険者情報」も共有可能とする
▽利用者:「本来記載すべき情報内容への影響」がない場合には、原則として共有する
▽家族:利用者が拒否した場合を除き、利用者と同じ扱いとする
▽都道府県:今後、検討していく

(1)要介護認定情報
▽認定調査票:現在、市町村が作成・保有しているが、新たに「ケアマネジャー」にも共有する
▽主治医意見書:現在、主治医が作成し、市町村が保有しているが、新たに「ケアマネジャー」にも共有する
▽介護保険被保険者証(要介護度等を含む):現在、市町村が作成し、利用者、介護事業所、ケアマネジャーが共有しているが、新たに「医療機関」にも共有する
▽要介護認定申請書:現行(利用者が作成し、市町村が保有)どおり

(2)請求・給付情報(レセプト)
▽給付管理票、居宅介護支援介護給付費明細書:現行(ケアマネジャーが作成し、利用者、市町村が共有)どおり
▽介護給付費請求書、介護予防・日常生活支援総合事業費請求書、居宅サービス・地域密着型サービス給付費明細書、介護予防サービス・地域密着型介護予防サービス介護給付費明細書、介護予防・日常生活支援総合事業費明細書、施設サービス等介護給付費明細書:現行(介護事業者が作成し、利用者、市町村が共有)どおり
→当面、新たな「介護情報基盤」(新たに構築する介護情報共有の仕組み)では情報共有せず、現行どおりとする

(3)LIFEデータ
▽科学的介護推進体制加算、利用者フィードバック票:現在、介護事業者が作成し共有はなされていないが、新たに「利用者」「市町村」「他介護事業所」「ケアマネジャー」「医療機関」に共有する

(4)ケアプラン
▽現在、ケアマネジャーが作成し、利用者、介護事業者に共有しているが、新たに「市町村」「医療機関」にも共有する

【介護情報基盤】で共有する情報の範囲、共有対象者などの方針案(介護情報利活用ワーキング2 240205)



幾度も議論されてきた内容であり、こうした方針案に対し異論・反論は出ていませんが、▼都道府県への情報共有も積極的に検討すべき(赤羽学構成員:国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部部長、田宮菜奈子構成員:筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野教授)、▼家族への情報共有については、利害関係(相続など)・虐待など、様々な事情を考慮してより深く検討すべき(江澤和彦構成員:日本医師会常任理事、加藤馨構成員:全国老人福祉施設協議会老施協総研運営委員会委員長ら)、▼事業所、院内で情報共有可能とするスタッフの範囲について、国が一定の指針等を示すべき(正立斉構成員:全国老人クラブ連合会理事・事務局長)、▼LIFE情報について「情報入力」の時点と、「情報共有」の時点に大きなタイムラグがあれば利用者が混乱してしまう点を踏まえた検討を行うべき(松田晋哉構成員:産業医科大学医学部公衆衛生学教授)—といった意見・注文が出されています。

情報共有に関する利用者の「同意」を、どのように取得すべきか

また、情報共有に当たっては、機微性の高い個人情報も数多く含まれるため「本人の同意」取得が原則となります。

この点については「介護サービス利用の契約時に、情報全体の共有について一括して同意を得る」、「同意取得が困難な場合(認知症が進行している、意思表示ができないなど)の対応は、法的な整理も含めて引き続き検討する」考えが示されました。

また、機微性の高い個人情報を取り扱うため、介護事業所等には情報セキュリティ確保が強く求められます。これを担保するために、介護事業所等では「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠した対応をとることを求める考えも示されました。ただし、膨大かつ専門的な内容であること、介護分野では小規模な事業所も少なくないことを踏まえ「介護事業所等向けの手引き」が作成される見込みです(関連記事はこちら)。

このほか、▼データの保存期間(介護情報基盤での保存期間)は医療情報と整合性はかり「5年」としてはどうか▼データの2次利用(集積されたデータを新たな介護サービスの開発や介護政策などに活かす)に向けた検討も並行して進める(関連記事はこちらこちら)—などといった方針案も示されています。

こうした点については、▼利用者本人の同意を「サービス契約時点で、一括して行う」ことは難しいのではないか(契約時の煩雑さ、情報量の膨大さなどの課題がある)(正立構成員、能本守康構成員:日本介護支援専門員協会常任理事、山本則子構成員:日本看護協会副会長)、▼データの2次利用と1次利用(得られた情報を当該利用者の介護サービス改善に活用する)とはセットで考えていくべきテーマである(山本隆一構成員:医療情報システム開発センター理事長)—といった意見が出ています。

とりわけ利用者本人の同意取得については、「情報共有のメリットなどを、どのように利用者・家族に理解してもらうのか」といった点のほか、「現時点でもサービス利用の契約時にはさまざまな点について説明と同意を得ているが、それだけでも30分から1時間はかかってしまう。さらに情報共有の説明・同意を得るとなれば、事業者サイドにも大きな負担となる」といった声も出ています。



厚労省は、こうした意見踏まえて上記方針案をブラッシュアップ。それを次回会合(3月14日予定)に提示し、そこで「報告書」を取りまとめたい考えです。

その後、報告書を踏まえて、具体的な【介護情報基盤】の仕組みづくりがスタートします。



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