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将来の医師過剰が指摘されるが「病院の勤務医」は全国レベルで不足しており、医学部入学定員(臨時定員)は維持すべき—四病協

2024.2.29.(木)

医学部入学定員(うち臨時定員)について、将来の医師供給過剰を考慮して「削減」を求める動きがある。しかし、病院の勤務医は都市部も含めて全国レベルで不足しており、現状では「医学部入学定員(臨時定員)を維持」するべきである—。

2月28日に開催された四病院団体協議会(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成)の総合部会でこうした方針が固まったことが、日本医療法人協会の加納繁照会長から明らかにされました。

2月28日の四病院団体協議会・総合部会後の記者会見に臨んだ、日本医療法人協会の加納繁照会長

都市部では「自由診療分野での開業」が多い、病院勤務医は都市部でも不足している

厚生労働省が「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」(以下、検討会)を発足させ、▼医学部入学定員(臨時定員)の在り方▼医師偏在対策の在り方—に関する議論を行っています(関連記事はこちらこちら)。

前者の医学部入学定員に関しては、▼2020年8月に行われた将来の医師需給推計によれば「現在の医学部入学定員を維持すれば2029年頃から医師『過剰』になる」こと▼医師過剰となれば、「将来の医師の生活基盤が極めて不安定になる」「不適切な医療需要の掘り起こしが生じ、医療費の高騰→医療保険制度が逼迫する」こと—などから、「臨時定員部分を漸減していく」方針が概ね固められています(関連記事はこちら)。

一方、「東北地方を中心に医師少数県が依然として存在するなど、医師偏在が解消していない」点を踏まえて「臨時定員の継続、さらなる増員」を求める声も小さくありません。

この点について四病協の総合部会では、▼女性医師が増加し、出産・育児などの際の一時休職などが増えること▼都市部で医師多数となっているが、開業し自由診療(美容整形など)を行うケースも少なくなく、都市部でも病院の医師は不足していること▼医師働き方改革が2024年度から本格するが、その全容は見えてこないこと—などを踏まえ、「日本全国で病院の勤務医がとてもではないが充足しておらず、大学医学部の定員(臨時定員)は維持すべき」との見解で一致したことが加納・医法協会長から報告されました。定員の大幅削減を求める日本医師会とは異なる立場をとることになります。

このほか、医師の多い少ないを議論するベースとなる「医師偏在指標」(人口10万対医師数をベースに、地域の医療ニーズなどを勘案したもの)の見直しを求める考えも固められています。

また、検討会では「医師少数の地域(東北地方など)において、医学部定員(臨時定員)の維持、さらには増加を認めるべき」との声も出ていますが(関連記事はこちら)、加納・医法協会長は「医師多数の都市部でも、病院の勤務医は不足している。都市で医師が多く見える背景には、自由診療(美容整形など)分野で開業する医師のせいではないか。今後、高齢者が都市部で急増していく(=医療ニーズが増大する)ことを考えれば、全国的に病院勤務医は不足していると考えるべき」旨を述べ、「医師少数の地域『以外』でも、医学部定員(臨時定員)の維持が必要」との見解を明らかにしています。

検討会で出されたデータを見ると、主たる勤務先が「病院」である医師の偏在状況よりも、主たる勤務先が「診療所」である医師の偏在状況の方が、はるかに大きく、加納・医法協のコメントに頷ける部分もあります(東京では、診療所勤務医(人口10万対)が飛びぬけて多く、これが医師偏在を著しくしている可能性がある)。

医師多数県では40歳未満の若手医師も多い傾向にあるが、病院勤務医に限定すれば「東京が突出して多い」とまではいえない(医師偏在対策検討会 240226)

医師多数県では40歳未満の若手医師も多い傾向にあり、診療所医師に限定すると「東京で飛びぬけて多い」ことが分かる(医師偏在対策検討会 240226)



今後、検討会では▼今春(2024年春)までに2026年度の医学部入学定員(臨時定員)の在り方を決める▼その後、2027年度以降の医学部入学定員(臨時定員)の在り方を検討する▼医師偏在対策の在り方全体を考える—ことになりますが、病院団体サイドから上記のような考えが強く主張されることとなり、難しい議論となりそうです。



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