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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

かかりつけ医機能報告制度、報告内容をどう考えるか、研修修了をかかりつけ医機能要件とすべきか—社保審・医療部会

2024.6.10.(月)

2025年4月から「かかりつけ医機能報告」制度などが施行されるが、報告内容や対象医療機関などをどのように考えていくべきか—。

6月7日に開催された社会保障審議会・医療部会で、こうした議論が改めて行われました。出された意見も踏まえながら、さらに「「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」(以下、分科会)で詳細を詰めていきます(7月中に意見とりまとめ予定)。

6月7日に開催された「第108回 社会保障審議会 医療部会」

かかりつけ医機能、「症状への対応能力」報告求めるか、「専門領域」報告求めるか

2023年の医療法改正(「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」の一部)により、(1)医療機能情報提供制度の刷新(本年(2024年)4月施行済)(2)かかりつけ医機能報告の創設(来年(2025年)4月施行)(3)慢性疾患患者等に対する書面交付・説明の努力義務化(来年(2025年)4月施行)—を行うことになりました。

「まずかかりつけ医を受診し、そこから基幹病院の専門外来を紹介してもらう。専門外来での治療が一定程度終了した後には、かかりつけ医に逆紹介を行う」という外来医療の流れ・機能分化を推し進めると同時に、地域包括ケアシステムの中で極めて重要な役割を果たす「かかりつけ医機能を持つ医療機関」の明確化を図る狙いがあり、分科会で「かかりつけ医機能報告制度」等の詳細を詰めていきます(関連記事はこちらこちらこちら)。

かかりつけ医機能が発揮される制度整備1

かかりつけ医機能が発揮される制度整備2



かかりつけ医機能報告制度の大枠は、次のように整理できます。
(A)医療機関が、自院が「かかりつけ医機能を持っているか、持っている場合、どのようなものか」を毎年度、都道府県に報告する

(B)都道府県は報告内容をもとに、「どの医療機関がどのようなかかりつけ医機能を持っているのか」を医療機能情報提供制度を活用して公表し、住民の医療機関選択をサポートする

(C)地域の協議の場において、「地域に不足するかかりつけ医機能は何か」を明確にし、関係者で膝を突き合わせて「不足する機能を充実するためにどうすればよいか」を協議し、地域のかかりつけ医機能の底上げを図る



5月24日に開催された分科会には、厚生労働省大臣官房の高宮裕介参事官(救急・周産期・災害医療等、医療提供体制改革担当)から、(A)と(C)に関して、例えば以下のような具体案(対象医療機関、報告内容、協議の場の在り方、文書を提供した患者への説明、かかりつけ医機能を発揮するための基盤整備や支援など)が示されました(関連記事はこちら(報告対象医療機関、報告内容)こちら(協議の場、患者への説明、基盤整備など))。

▽報告対象医療機関は「特定機能病院、歯科診療所を除く、すべての病院、診療所」としてはどうか

▽報告内容のうち1号機能は、案1(症状症候への対応力報告を求める案)、案2(診療領域報告を求める案)、案3(広範な医療機関に報告を求める案)から考えてはどうか

▽報告内容のうち2号機能は、▼時間外対応▼病状が急変した場合の入院支援、病院等からの退院支援▼在宅医療対応▼介護連携—としてはどうか

▽協議の場は、入院医療については2次医療圏をベースに、在宅医療や医療・介護連携は市町村をベースに重層的に考えてはどうか

▽かかりつけ医機能対応力を強化するための「研修」体制を整備してはどうか

▽患者への説明に関する努力義務は「一定期間(概ね4か月)以上継続的に医療の提供が見込まれる場合」を対象としてはどうか

▽かかりつけ医機能には様々な形があることを明確化してはどうか



こうした案に対し、分科会では様々な意見が出ており、6月7日の医療部会でも分科会同様に上記案に対する様々な意見が出されました。とりわけ意見が集中したのは、「報告内容の1号機能」に関してです。

患者・住人の医療機関選択をサポートする機能を重視する委員(河本滋史委員:健康保険組合連合会専務理事、山口育子委員:ささえあい医療人権センターCOML理事長ら)からは「案1」をベースに詰めるべきとの考えが示されました。

一方、医療提供サイド委員からは「患者の訴える症状と、医師の判断とは必ずしも一致しない」(楠岡英雄委員:国立病院機構名誉理事長、城守国斗委員:日本医師会常任理事)、「案1の35症候は『臨床研修における到達目標』であり、すべての医師が対応可能なはずであり、ナンセンスな案ではないか」(神野正博委員:全日本病院協会副会長)などの反論が出ています。

いずれの意見にも頷ける部分がありますが、「あまり生産的な議論ではない」との指摘もあります。

かかりつけ医機能報告制度は、法律上、次のような複雑な立て付けとなっています。
▽対象医療機関は、「継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療、その他の日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能」を持っているか否かと、持つ場合にはその機能の内容を都道府県に報告する(医療法第30条の18の4第1項目第1号に規定されているため、法令では「1号機能」と呼ばれる)

▽対象医療機関のうち「(1)の機能(1号機能)を持つ医療機関」は、▼時間外の診療▼病状が急変した場合の入院支援、病院等からの退院支援▼在宅医療対応▼介護連携—などの機能を持っているか否かと、持つ場合にはその機能の内容を都道府県に報告する(同第2号に規定されているため、「2号機能」と呼ばれる)

かかりつ医機能報告制度の医療法上の立て付け(Gem Med編集部で作成)



この点について、次のような指摘があるのです。

◇症状・症候であっても、診療科であっても、医学の専門家でない患者自身が、その情報をもとに「自分の傷病に適した医療機関」を選択することはできない

◇まず、かかりつけ医に相談し、そこで「門前払い」されずに、「当該医療機関での対応してもらう」、それが不可能であれば「他医療機関を紹介してもらう」ことが重要である

◇その際、患者にとって重要となるのは、「門前払いせずに、まず相談にのる」意欲・能力があるかないか、さらに「時間外対応」を行っているかなどの2号機能である(時間外にこそ、患者は自身の傷病について相談を行いたいと考える)

◇法律上は「1号機能を持つ医療機関」のみが、2号機能を報告することとなっている

◇したがって、症状・症候であっても、診療科であっても、「1号機能を持つ医療機関」を絞り込んでしまえば、重要な情報(2号機能)が患者に十分に届かなくなってしまう

こうした考えは分科会構成員からも示され、「法律の規定・立て付けが好ましくない可能性がある」との意見もありますが、今から法改正を行うことは非現実です。

このため、1号機能については、できるだけ絞りこまず、「どのような患者でも門前払いにせず、まず相談に応じ、自院での対応を行う、自院の対応力を超えていれば、他院を紹介する」という意欲と能力があるかどうかを基本に考えるべきではないかとの声があるのです。この考えは「案3」に近いものがあります。

こうした考えも踏まえて、さらに「1号機能の内容」を分科会で検討していくことになります。

かかりつけ医機能に関する「研修」修了を、かかりつけ医機能に関する要件とすべきか

また、1号機能のうち「研修を修了した医師」等の配置について、案2では「研修修了医等が配置されていることが報告の要件」とされています。しかし、分科会と同様に、医療部会でも「研修修了医が配置されているかどうか」(案3)が重要で、「研修修了医がいなければ、かかりつけ医機能を持っていないとする案2は妥当ではない」との声が多数出されました。

この点、例えば上述のように「どのような患者でも門前払いにせず、まず相談に応じ、自院での対応を行う、自院の対応力を超えていれば、他院を紹介する」という意欲と能力があるかどうかを1号機能(かかりつけ医機能の1つ)と考えれば、その能力を証明するものとして「研修の修了」などを要件化することには一定の合理性がありそうです。

しかし、現在、様々な医療団体(日本医師会、日本プライマリ・ケア連合学会、病院団体など)が「かかりつけ医機能」や「総合診療医機能」に関する研修を行っていますが、視点や内容はさまざまです。

また、「長年地域医療を支えてきた医師」と「大学病院勤務からクリニック開業して間もない医師」とでは、必要となる研修は異なることでしょう(前者の医師では最新の医学・医療の知識を補填する研修が、後者の医師では患者の生活背景なども踏まえた診療を行う能力を充実する研修が必要となると考えられる)。つまり、すべての医師に「同じ研修受講を義務付ける」ことが妥当とは考えにくいのです。

したがって、研修を「かかりつけ医機能の要件」とすることに一定の合理性はあるものの、その前に、医学医療の専門家の視点で「研修内容などの整理」をしていく必要があり、それには一定の時間がかかると考えられます。こうした点も考慮しながら「研修」の在り方を考えていく必要があります。



このほか医療部会では、▼求めれば文書等での「説明」が得られることを、患者・住民サイドにも十分周知する必要がある(山口委員)▼かかりつけ医機能報告制度をベースに「どうすれば適切な医療機関を選択できるか」なども患者・住民サイドに情報提供してほしい(野村さちい委員:つながるひろがる子どもの救急代表)▼地域で「面」としてかかりつけ医機能を発揮する(複数医療機関が連携する)ことは重要だが、「患者の病態を全体として診る」司令塔の役割と果たす医師が必要であろう(島崎謙治委員:国際医療福祉大学大学院教授)▼都市部では「時間外診療を行わない」医師が多数いるが、地方病院勤務医は「時間外対応に忙殺」されており、こうした事態の解消も目指していくべき(小熊豊委員:全国自治体病院協議会会長)—といった重要意見も出ています。これらの意見も踏まえて、さらに分科会を中心に「かかりつけ医機能報告制度」の詳細を詰めていきます。



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