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GemMed塾 病床機能報告

国民の医療機関選択に資するよう「かかりつけ医機能報告」結果を公表、医師が「自身に必要なかかりつけ医機能」を選択研修—かかりつけ医機能分科会

2024.6.24.(月)

2025年4月から「かかりつけ医機能報告」制度などが施行される。各医療機関から報告された内容を、医療機能情報提供制度「ナビイ」を活用して公表し、国民の「どの医療機関をかかりつけとするか」の選択をサポートする—。

各医療機関・医師の「かかりつけ医機能」の維持・向上を目指して、「研修制度」を設ける(医師会や病院団体が実施)。その際、各医師が「自分に必要な研修内容を選択する」仕組みとしてはどうか―。

6月21日に開催された「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」(以下、分科会)で、こういった議論が行われました。

分科会では「かかりつけ医機能報告制度」の詳細に関する論点を一通り議論し、次回以降、取りまとめに向けた検討が急ピッチで進められます(7月中のとりまとめ)。

6月21日に開催された「第6回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」

医療機能情報提供制度で各医療機関のかかりつけ医機能公表、医療機関選択をサポート

2023年の医療法改正(「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」の一部)により、(1)医療機能情報提供制度の刷新(本年(2024年)4月施行済)(2)かかりつけ医機能報告の創設(来年(2025年)4月施行)(3)慢性疾患患者等に対する書面交付・説明の努力義務化(来年(2025年)4月施行)—を行うことになりました。

かかりつけ医機能報告制度の大枠は、次のように整理できます。
(A)医療機関が、自院が「かかりつけ医機能を持っているか、持っている場合、どのようなものか」を毎年度、都道府県に報告する

(B)都道府県は報告内容をもとに、「どの医療機関がどのようなかかりつけ医機能を持っているのか」を医療機能情報提供制度を活用して公表し、住民の医療機関選択をサポートする

(C)地域の協議の場において、「地域に不足するかかりつけ医機能は何か」を明確にし、関係者で膝を突き合わせて「不足する機能を充実するためにどうすればよいか」を協議し、地域のかかりつけ医機能の底上げを図る



5月24日に開催された前回分科会では、(A)と(C)に関して、例えば以下のような具体案(対象医療機関、報告内容、協議の場の在り方、文書を提供した患者への説明、かかりつけ医機能を発揮するための基盤整備や支援など)が示され(関連記事はこちら(報告対象医療機関、報告内容)こちら(協議の場、患者への説明、基盤整備など))、様々な角度からの検討が行われました。

▽報告対象医療機関は「特定機能病院、歯科診療所を除く、すべての病院、診療所」としてはどうか

▽報告内容のうち1号機能は、案1(症状症候への対応力報告を求める案)、案2(診療領域報告を求める案)、案3(広範な医療機関に報告を求める案)から考えてはどうか

▽報告内容のうち2号機能は、▼時間外対応▼病状が急変した場合の入院支援、病院等からの退院支援▼在宅医療対応▼介護連携—としてはどうか

▽協議の場は、入院医療については2次医療圏をベースに、在宅医療や医療・介護連携は市町村をベースに重層的に考えてはどうか

▽かかりつけ医機能対応力を強化するための「研修」体制を整備してはどうか



6月21日の会合では、(B)の患者・住人への情報提供、さらに前回会合でも議論された「研修」制度について、厚生労働省大臣官房の高宮裕介参事官(救急・周産期・災害医療等、医療提供体制改革担当)から具体案が示されました。

まず、「かかりつけ医機能」の情報提供について見てみましょう。上述のように、医療機関からの報告をもとに、「どの医療機関が、どのようなかかりつけ医機能を持つのか、あるいは持たないのか」を整理し、公表することで、患者・住民が「自分がどの医療機関をかかりつけにするか」を選択することを可能にするものです。

情報公表は刷新された医療機能情報提供制度「ナビイ」を用いて次のようなイメージで行われます。

▽トップページに「かかりつけ医機能で探す」ボタンを追加し、医療機関を検索しやすいようにする

▽各医療機関の概要情報を表示するページに「かかりつけ医機能」のタブを追加し、「当該医療機関のかかりつけ医機能に関連する事項をまとめて閲覧できる」ようにする

▽「1号機能・2号機能の報告で『当該機能有り』とならない場合の、今後、担う意向の有無」以外の項目は、医療機能情報提供制度の情報提供項目に位置付ける
→つまり、基本的に上記(A)として報告する事項はすべて住民・患者に公表される

医療機能情報提供制度「ナビイ」で、どの医療機関がどのようなかかりつけ医機能を持っているのか検索できるようにする



この方針に異論・反論は出ていませんが、「報告項目の中には一般国民には分かりにくいものもある。解説をつけることもよいが、分かりやすく馴染みのある文言への翻訳・加工も考えるべき」との注文が山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)や香取照幸構成員(未来研究所臥龍代表理事/兵庫県立大学大学院特任教授)らから出されています。見慣れない専門用語(例えば診療報酬項目など)が羅列されていれば、医学・医療に詳しくない一般国民は、それだけで拒否反応を示してしまい、せっかくの「かかりつけ医機能報告制度」が十分に活用されないおそれがあります。

報告内容については、まだ結論が出ておらず、さらに検討が続けられます。そうした議論の末に固められた報告内容は、基本的にすべて公表されますが、「公表の仕方」については「一般国民への分かりやすさ」を主眼に置いた工夫が求められます。

また、障害者やその家族が「障害に対応してくれる医療機関」を選択しやすくなるよう、▼施設のバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションの支援、情報アクセシビリティの向上、職員に対する研修等の対応状況等を情報提供項目に位置付ける▼医療情報ネット「ナビイ」のトップページに利用者区分として「障害児・者、難病患者」を選択できるボタンを設定した上で、障害児・者、難病患者向けの検索条件設定ページを作成し、障害者等で利用頻度が高い項目で医療機関の検索を行えるよう、2025年度に向けて改修を進める▼かかりつけ医機能に関する研修において、合理的配慮や障害特性の理解等に関する項目を盛り込む▼障害児・者、医療的ケア児、難病患者等も念頭において「かかりつけ医機能報告」制度を検討していく—方針も固められています。

なお、現在の「ナビイ」でも「かかりつけ医機能を持つ医療機関」を選択できますが、報告内容が▼日常的な医学管理・重症化予防▼地域の医療機関等との連携▼在宅医療支援、介護等との連携▼適切かつ分かりやすい情報の提供▼地域包括診療加算の届出▼地域包括診療料の届出▼小児かかりつけ診療料の届出▼機能強化加算の届出—にとどまっており、検索結果にやや偏りがあります。報告内容が上記のように見直されることで、検索される「かかりつけ医機能を持つ医療機関」も大きく変わってくる可能性があります。

かかりつけ医機能の知識・技術について「研修」を実施、医師が必要な項目を選択

次に研修制度について見てみましょう。

「自院はかかりつけ医機能を持っている」と報告する医師が、その意欲・力量を証明する手段の1つとして「研修受講」が考えられます。既に前回会合で示された1号機能案には「かかりつけ医機能に関する研修の修了者がいることを要件とする」考えや、「かかりつけ医機能に関する研修修了者がいるか否か、または受講者がいるか否かを報告してもらう」(要件とはしない)考えが示されており、結論はまだ出ていませんが「研修が非常に重要である」という点では構成員間に共通認識が生まれていると言えます。

この点について高宮参事官は、次のような考え方を示しました。

▽患者の生活背景等も踏まえて幅広い診療領域の全人的な診療を行う医師の増加を促していくため、「リカレント教育・研修を体系化して、行政による支援を行いつつ、地域医療機関での実地研修も含めた研修体制を構築する」など、地域で必要となるかかりつけ医機能の確保に向けた医師の教育や研修の充実を図る

▽かかりつけ医機能報告の報告対象として該当する研修について、知識(座学)と経験(実地)の両面から望ましい内容等を整理し、研修実施団体からの申し出に基づき「報告対象として該当する研修」を厚労省で示す
【対象者、研修修了】
▼地域で新たに開業を検討している勤務医や、地域の診療所や中小病院等で診療を行っている医師等を対象者とする
▼研修実施団体において「研修者が各研修の修了要件を満たしたことを確認」する
→「地域の診療所等で一定期間以上の診療実績がある医師」等では診療実績を考慮できる

【研修内容:座学(知識)】
▼「幅広い診療領域への対応に関する内容」(頻度の高い疾患・症状への対応、高齢者の診療、医療DXを活用した医療提供(診療情報等の共有・確認、服薬管理等)など)と、「地域連携・多職種連携等に関する内容」(在宅医療の導入、初期救急の実施・協力、多職種連携・チームビルディング、介護保険・障害福祉制度の仕組み、障害者への合理的配慮や障害特性の理解など)とを含める
→医師がE-learningシステムにより「研修項目を選択して学ぶ」形とする
→具体的な内容は厚生科学研究班で検討する

【研修内容:実地研修(経験)】
▼在宅医療や幅広い診療領域の患者の診療等を含める
▼かかりつけ医機能報告等を通じて、「実地研修の場を提供する医療機関」(かかりつけ医機能を支援する医療機関、在宅療養支援病院・診療所、地域医療支援病院等)と「受講の意向のある医師」とのマッチングを行う仕組みを国で整備する
▼「実地研修の場を提供する医療機関」における実地研修に要する設備整備等は地域医療介護総合確保基金を活用して支援を行う
→医師が「研修項目を選択して学ぶ」形とする
→具体的な内容は厚生科学研究班で検討する



こうした研修については、様々な考え方があり、その1つに「かかりつけ医機能(1号機能)の要件とすべきか、否か」という論点があります。要件となれば、「研修修了医がいない医療機関」は1号機能を持っていない(=かかりつけ医機能を持っていない)と報告することになります。この点、分科会では「研修は重要であるが、要件化は好ましくない」という意見が大勢を占めています。例えば、城守国斗構成員(日本医師会常任理事)や織田正道構成員(全日本病院協会副会長)は「医師は自身の専門性を中心に、研修を通じて診療の幅を広げていくものだ。研修は極めて重要であるが、かかりつけ医機能の要件とはすべきない」と強調しています。

関連して、医師の持つ知識・技術はさまざまであり「研修制度も一律に考えることはできない」と香取構成員は強調します。例えば、「すでに地域の医療機関でかかりつけ医として活躍するベテラン医師」と、「これまで大学病院で専門医として活躍してきたが、新たに地域でクリニックを開業する医師」とでは、研修で学ぶべき事項もおのずと変わってくるでしょう(前者の医師は最新の医学的知識の習得を、後者の医師は患者を全人的に診る能力や地域医療機関・介護施設等との連携について学ぶ機会の確保を求めることが多そうである)。厚労省もこの点を意識しており、上述のように「医師が自らに必要な研修項目を『選択』して受講する」仕組みを提案しています。

さらに香取委員は「地域で面として、かかりつけ医機能を発揮する体制を構築するためには、できるだけ多くの医師が研修を受講し、かかりつけ医機能の底上げを図っていけるような研修制度が必要になる。研修は、いわば医師自身が『かかりつけ医機能』に関する意欲と能力を持つことを証明するものと位置付けられ、要件と考えるべきものではない」旨の考えも示しています。

他方、大橋博樹厚生員(日本プライマリ・ケア連合学会副理事長/医療法人社団家族の森多摩ファミリークリニック院長)は、研修を▼すべての「かかりつけ医療機関」を対象とする研修(例えば、眼科や整形外科の医師でも「介護の相談にのれる」ようにする研修)▼かかりつけ医療機関を支援する病院など向けの研修—に分けて考えるべきと提案しました。前者では「かかりつけ医機能」全体の底上げを図り、後者では、まだ少ない「総合診療専門医」の機能を補完するために「総合診療専門医に準ずる医師」を養成するイメージです。

このほか、▼患者にとっては、医師が「このまま自分で診療を続けるか、他の専門医を紹介するか」を適切に判断できる能力が重要であり、そこを研修制度で担保してほしい(山口構成員)▼大学医学部でも「かかりつけ医機能」教育にも力を入れていくべき(今村知明構成員:奈良県立医科大学教授、長谷川仁志構成員:秋田大学大学院医学系研究科医学教育学講座教授)—などの意見も出されています。

こうした意見も参考にしならが、「研修制度」の詳細をさらに詰め、厚生労働科学研究班を設置して「具体的な研修プログラムや研修資材」などを作成していくことになります(最初の「かかりつけ医機能報告」は2026年1-3月となり(2025年4月に制度施行され、最初の報告が翌年1-3月となる)、そこに間に合うような形でプログラム等を作成するスケジュールが考えられる)。

かかりつけ医機能報告のスケジュール、2025年4月に制度施行された後、翌2026年1-3月が最初の報告期間となる

7月に分科会意見をとりまとめ、「かかりつけ医機能とは何か」の議論続く

これまでの会合で、「かかりつけ医機能報告制度」の詳細に関する論点が一通り議論されました。今後は、厚労省案とそれに対する構成員意見などをベースに「意見とりまとめ」に向けたフェイズに入っていきます。

とりわけ議論に時間が割かれたのが、いわゆる「1号機能」(かかりつけ医機能を「症状・症候への対応能力」で考えるべきか、それとも「診療科・専門領域」で考えるべきか、など)についてです(関連記事はこちら(報告対象医療機関、報告内容)こちら(協議の場、患者への説明、基盤整備など)こちら(医療部会論議))。

この点については、6月21日の分科会でも改めて議論となり、例えば▼英国のGP制度(患者が自身の担当医にまずかかり、そこから専門医療機関等を紹介してもらう仕組み)を目指そうとすれば、それは外来医療の質低下をもたらす。我が国の「医師の専門性」を生かした医療提供体制を維持すべき。(城守国斗構成員:日本医師会常任理事)▼1医療機関ですべての治療が完結することはない。ファーストアクセスをする医療機関(かかりつけ医機能を持つ医療機関)で幅広く患者の訴えに応じ、相談にのり、必要に応じて振り分けを行ってくれることが重要であろう(香取構成員)▼患者自身が「自分の病気の治療に最適な医師」を探し出すことは難しい、まず「かかりつけ医機能を持つ医療機関」にかかり、そこから最適な医療機関を受診できる仕組みを地域で構築すべき(大橋構成員)▼フリーアクセス下での「かかりつけ医機能報告」制度である。地域に「かかりつけ医機能を持つ医療機関」がなかったとしても、住民の医療アクセスは保障される。1号機能の対象は一定程度絞り込むべき(土居丈朗構成員:慶應義塾大学経済学部教授)—などの意見が出されました。

「かかりつけ医機能」(1号機能)に関する構成員間の意見・考えは、徐々に「門前払いせず、まず相談に乗ってくれ、自身で対応可能であれば診療を継続し、必要があれば適切な医療機関を紹介してくれる」機能という方向に収束してきているように感じられます。

今後の「とりまとめに向けた議論」に注目が集まります。



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