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「80歳以上女性」の34.8%が1人暮らし、世帯全体では所得減少し「生活が苦しい」との声は過去5年間で最多―2023年国民生活基礎調査

2024.7.9.(火)

65以上の高齢者がどのような世帯で生活しているのかを見ると、女性では年齢階級が上がるにつれて「単独世帯」が増加し、2023年には80歳以上の女性のうち、34.8%、つまり3人に1人超が「単独世帯」で生活している(つまり「1人暮らし」である)—。

2021年から22年にかけて世帯全体では所得が増加し、「生活が苦しい」との声は過去5年間で最も多くなっている—。

厚生労働省が7月5日に公表した2023年の「国民生活基礎調査の概況」から、このような状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(前年(2022年)の大規模調査の記事はこちら、2021年調査の記事はこちら、2019年調査の記事はこちら、2018年調査の記事はこちら、2016年の前回大規模調査の記事はこちら、2020年はコロナ感染症により調査中止)。

世帯規模の減少続き、単独・夫婦のみの高齢者世帯の増加も続く

厚労省は毎年、▼保健▼医療▼福祉▼年金▼所得―などの国民生活に関する基礎的事項を調べ、「国民生活基礎調査」として公表しています。3年に1度、大規模な調査が、中間年には簡易的な調査が行われており、昨年(2023年)は簡易的な調査が実施されました。

まず昨年(2023年)6月1日時点における全国の世帯総数を見ると、5445万2000世帯で、前年から14万2000世帯・0.3%増加しました。平均世帯人員は2.23人で、前年から0.02人減少しています。

世帯数・平均世帯人員の推移(2023年国民生活基礎調査1 240705)



65歳以上の高齢者のいる世帯は2695万1000世帯で、前年に比べて52万3000世帯減少しました。全世帯に占める割合は49.5%で、前年に比べて1.1ポイントの減少となりました。



65歳以上の高齢者のいる世帯について、その内訳を見てみると、最も多いのは「夫婦のみの世帯」で32.0%(前年から0.1ポイント減少)、次いで「単独世帯」31.7%(同0.1ポイント減少)、「親と未婚の子のみの世帯」20.2%(同増0.1ポイント増)、「三世代世帯」7.0%(同0.1ポイント減少)という状況です。「単独世帯」の増加が目立っており、医療・介護や生活支援などのサービスを地域で整える「地域包括ケアシステム」の構築を急ぐ必要性をここでも確認することができます。

65歳以上の者のいる世帯の構造(2023年国民生活基礎調査2 240705)



また、65歳以上の者のいる世帯のうち、高齢者世帯(65歳以上の者のみ、これに18歳未満の未婚の者が加わった世帯)は1653万7000世帯で、65歳以上の高齢者のいる世帯の61.4%を占めています。その内訳は、▼男性の単独世帯18.4%(前年から0.1ポイント減少)▼女性の単独世帯33.3%(同0.3ポイント増加)▼夫婦のみの世帯44.1%(同0.6ポイント減少)—などという状況です。女性では、男性に比べて「より高齢の単独世帯」が多くなっています。

高齢者世帯の構造(2023年国民生活基礎調査3 240705)

高齢女性では年齢階級が上がるにつれ「単独世帯」が増加、80歳以上では34.8%に

次に「65歳以上の高齢者が、どのような世帯で生活されているのか」を見てみましょう。

65歳以上の高齢者は3952万7000人で、前年から77万人・1.9%減少。「夫婦のみの世帯で暮らす」人が最も多く40.3%(前年比0.4ポイント減少)、次いで「子と同居」33.8%(同0.1ポイント増加)、「単独世帯」21.6%(同0.1ポイント減少)などと続いています。高齢者の単独世帯が2割超を占めている点が、ここでも注目されます。



さらに年齢階級別に単独世帯で暮らす人の割合を見ると、男性ではすべての階級で10%台前半ですが、女性では▼65-69歳:16.8%(前年比0.8ポイント増加)▼70-74歳:20.4%(同0.1ポイント減少)▼75-79歳:24.9%(同1.5ポイント減少)▼80歳以上:34.8%(同0.2ポイント増加)―という具合に、高齢になるにつれて単独世帯で暮らす人の割合が増加していきます。全般的には、男性よりも女性の方が長命なため、「夫婦のみ世帯」→「男性配偶者が死亡する」→「女性の単独世帯が増加する」という構図が考えられそうですが、さらに詳しい分析が待たれます。

65歳以上の者の家族形態(2023年国民生活基礎調査4 240705)



単独世帯ではもちろん、高齢の夫婦のみの世帯では、世帯員が要介護状態となった場合に「在宅生活を継続するのか」「施設等に入所するのか」を重要課題として検討しなければいけません(医療でも同様の問題が生じる)。訪問・通所サービスを充実して、住み慣れた居宅での生活を可能な限り長くすることはもちろんですが、「介護保険制度をはじめ、居宅生活を継続するためのさまざまな支援」について丁寧に、かつ、分かりやすく説明し、高齢者自身が適切に選択できる環境の整備が今後ますます重要となっていきます。

児童のいる世帯、2022年調査から1000万世帯を割り、さらに減少続く

次に18歳未満の児童のいる世帯数を見ると、昨年(2023年)6月1日には983万5000世帯で、前年に比べて8万2000世帯・0.8%減少しました(2022年調査から1000万世帯を割っている)。

また世帯における児童数の構成を見ると、1人が48.6%(前年から0.7ポイント減少)、2人が39.7%(同1.7ポイント増加)、3人以上が11.7%(同1.0ポイント減少)となりました。

児童のいる世帯の状況(2023年国民生活基礎調査5 240705)

世帯所得は全体では減少、「生活が苦しい」との意識は過去5年間で最も多い

最後に所得の状況を眺めてみましょう。2022年1年間の1世帯当たりの平均所得金額は、「全世帯」では524万2000円(前年に比べて21万5000円・3.9%減少)、「高齢者世帯」では304万9000円(同13万4000円・4.2%減少)、「児童のいる世帯」では812万6000円(同27万6000円・3.5%増加)となりました。子育て世帯への支援策の効果が出ていることが伺えますが、高齢者世帯の所得が減少している点が気になります。

これに伴い、生活が「苦しい」「大変苦しい」と回答した世帯の割合は59.6%で、前年に比べて8.3ポイントも増加しています(過去5年間で最も高い水準)。物価や光熱水費の高騰などが続く中で、状況がどう推移するのか今後も注目する必要があるでしょう。

世帯の生活意識(2023年国民生活基礎調査6 240705)



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