地域医療構想の実現に向け国が技術的・財政的支援を行う【モデル推進区域】、北海道砂川市など含む「中空知」区域を追加決定—厚労省
2024.10.18.(金)
地域医療構想の実現に向けた取り組みを加速化するために、各都道府県に【推進区域】を定めるとともに、うち一部を国が技術的・財政的支援を行う【モデル推進区域】として定める—。
この【推進区域・モデル推進区域】は国が押し付けるものでなく、国・都道府県・医療現場で調整して設定するため、北海道では設定に時間がかかっていたが、今般、砂川市や滝川市、芦別市などを含む「中空知」構想区域とすることを決定した—。
厚生労働省は10月10日に通知「『地域医療構想における推進区域及びモデル推進区域の設定等について』の一部改正について」を発出し、こうした点を明確化しました(厚労省サイトはこちら(改正点のみ)とこちら(改正点を踏まえた通知全体))(関連記事はこちら)。
推進区域では、地域医療構想実現の取り組みを加速化する「対応方針」を策定・実施
「新たな地域医療構想」論議が熱を帯びていますが(関連記事はこちら)、各地域では「現在の地域医療構想の実現」をまずいそがなければなりません。
2025年度に団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達することから、今後、急速に医療ニーズが増加・複雑化していきます(しかも状況は地域ごとに千差万別である)。この増加・複雑化する医療ニーズに的確に対応できるような医療提供体制の構築が強く求められ、その一環として【地域医療構想】の実現が目指されています(関連記事はこちら)。
しかし、2025年を目前に控えた現時点でも、「病床の必要量(必要病床数)と2025年の病床数見込みとの乖離があり、それに関する分析が進んでいない地域もある」「医療提供体制の課題解決に向けた工程表作成が進んでいない地域もあり」など、地域によって地域医療構想の実現に向けた取り組みには大きなバラつきがあること、さらに「すべての構想区域で、医療提供体制に何らかの問題(救急医療提供体制や医師確保など)を抱えている」ことも分かっています(関連記事はこちら)。
そこで厚労省は、地域医療構想実現に向けた動きを加速化するために、次のような取り組みを行う方針を固めました(関連記事はこちらとこちらとこちら)
(1)各都道府県に概ね1-2か所ずつ「推進区域」を指定
→当該区域において「推進区域対応方針」を作成し、地域医療構想実現に向けた取り組みを加速化する
(2)(1)の「推進区域」のうち10-20か所程度を「モデル推進区域」として指定
→厚労省が技術的・財政的支援を含めた伴走支援を行い、地域医療構想実現に向けた取り組みを強化する
あわせて厚労省は、「地域の医療提供体制の見える化」「都道府県がなすべき事項に関するチェックリストの作成」などの支援も行います(関連記事はこちらとこちら)。
この方針に沿って厚労省は、本年(2024年)7月31日に通知「地域医療構想における推進区域及びモデル推進区域の設定等について」を発出し、各都道府県や医療現場に準備を要請しています(関連記事はこちら)。
ところで、上記通知では「北海道の推進区域・モデル推進区域」について「調整中」とされていました。
推進区域は、国が「取り組みが遅い区域を炙り出す」わけではなく、下記のような考え方に沿って都道府県や地域、病院の「支援してほしい」との意向も踏まえて設定します。
●【推進区域】設定の考え方
→厚労省と都道府県とで調整し、次の事項等を総合的に勘案する
▽データ特性(地域医療構想は病床・患者単位で「病床の必要量」を推計するが、病床機能報告では病棟単位で推計している点など)だけでは説明できない合計病床数の必要量との差異が特に生じている
▽データ特性だけでは説明できない機能別病床数の必要量との差異が特に生じている
▽昨年(2023年)9月末調査において再検証対象医療機関における対応状況として「検証中または検証未開始」の医療機関がある(関連記事はこちら)
▽その他医療提供体制上の課題があって重点的な支援の必要性があると考えられる
●【モデル推進区域】の設定
→厚労省と都道府県とで調整し、上記推進区域のうち「医療提供体制上の課題や重点的な支援の必要性、地域 療構想の実現に向けた取組状況」などを総合的に勘案する
このため北海道では、医療現場の意向聴取などに時間がかかり、「推進区域等は調整中」とされていたのです。
今般、国(厚労省)・北海道・医療現場の意見が整い、北海道における推進区域が「中空知」構想区域とすること、さらに同区域をモデル推進区域として設定することが決定され、その旨を改正通知で明確にしたものです。
【中空知】構想区域
・芦別市
・赤平市
・滝川市
・砂川市
・歌志内市
・奈井江町
・上砂川町
・浦臼町
・新十津川町
・雨竜町
全国の推進区域は下表のとおりとなります。
設定された【推進区域】に関しては、具体的に次のような取り組みを行うことが求められます。
●都道府県の取り組み
▽本年度(2024年度)中に、推進区域の地域医療構想調整会議で協議を行い、当該区域における将来のあるべき医療提供体制、医療提供体制上の課題、当該課題の解決に向けた方向性・具体的な取り組み内容を含む【区域対応方針】を策定し、それに基づく取り組みを推進する
▽2つ以上推進区域が設定された都道府県で、複数の構想区域にまたがる課題の解決等に取り組む場合には、「まとめて【区域対応方針】を作成する」ことも可能
→ただし、この場合でも区域ごとに状況が異なると考えられるため、「構想区域ごとの現状、課題、取り組み」などが明らかとなるよう、記載を工夫する
●医療機関の取り組み
▽都道府県が本年度(2024年度)中に策定する【区域対応方針】に基づいて自院の対応方針を検証し、必要に応じて見直しを行う
▽検証に当たっては、都道府県と医療機関とが連携し、「これまでに策定した医療機関の対応方針における病床機能の見直し等の内容」と「新たな【区域対応方針】に定める取り組み等」とで整合性が確保されているかを確認したうえで、「医療機関の対応方針の見直し」の要否を含め、推進区域の地域医療構想調整会議で合意・確認する
●厚労省の取り組み
▽推進区域における【区域対応方針】の策定状況、【区域対応方針】に基づく取り組みの進捗状況を随時調査し、地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ等に報告する
なお、技術的・財政的支援の行われる【モデル推進区域】にも上述の「中空知」区域が設定され、全国で15か所となりました。
●【モデル推進区域】の設定
→厚労省と都道府県とで調整し、上記推進区域のうち「医療提供体制上の課題や重点的な支援の必要性、地域 療構想の実現に向けた取組状況」などを総合的に勘案し、【モデル推進区域】として次の区域が設定されています。
▽(新)北海道:「中空知」区域
▽秋田県:「能代・山本」区域、「大館・鹿角」区域
▽山形県:「庄内」区域
▽栃木県:「宇都宮」区域
▽群馬県:「伊勢崎」区域、「藤岡」区域
▽石川県:「能登北部」区域
▽山梨県:「峡南」区域
▽三重県:「松阪」区域
▽滋賀県:「湖北」区域
▽京都府:「丹後」区域
▽山口県:「宇部・小野田」区域
▽高知県:「中央」区域
▽長崎県:「長崎」区域
【モデル推進区域】に対しては、具体的に次のような伴走支援(技術的支援、財政的支援)が行われます。ただし、各区域で抱えている課題等は異なることから、実際の具体的な支援内容は、厚労省・都道府県で調整し「地域の実情に応じたもの」が検討されます。
●技術的支援(例)
・都道府県コンシェルジュ(ワンストップ窓口)の設置
・区域対応方針の作成支援
・地域の医療事情に関するデータ提供・分析
・定量的基準の導入に関する支援(関連記事はこちら)
・構想区域内の課題の把握
・分析結果を踏まえた取り組みの検討に関する支援
・構想区域からの依頼に基づき議論の場・講演会、住民説明会などへの国職員の出席
・関係者の協議の場の設定
・地域の枠組みを超えた構想区域や都道府県間の意見交換会の設定
・関係者との議論を行う際の資料作成支援
●財政的支援(重点支援区域への支援と同様、地域医療介護総合確保基 金(医療分)による次の支援を行う
・地域医療介護総合確保基金(医療分)に係る令和6年度配分方針等について、地域医療構想の評価項目・方法に「モデル推進区域が属する都道府県は配分額を加算」を追加する
・個別医療機関の再編統合を実施する場合における統合支援給付金支給事業を上乗せする
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GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。
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