我が国では「世帯の小規模化」「世帯員の高齢化」「高齢者の単独世帯の増加」が続く、高齢者支援の在り方検討が急務—社人研
2024.11.15.(金)
今後、我が国では「世帯の小規模化」「世帯員の高齢化」が進み、「高齢者の単独世帯」が急速に増加する—。
国立社会保障・人口問題研究所が11月12日に公表した「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)(令和6(2024)年推計)—令和2(2020)-32(2050)年—」から、こういった状況が改めて明らかになりました(社人研のサイトはこちら(概要))(全国推計に関する記事はこちら)。
高齢者の介護は、現在でも「家族介護」に依存する部分が小さくありませんが、今後は「家族介護に頼れなくなる」状況がさらに進みます。こうした状況も踏まえた高齢者支援の在り方を考えていく必要があります。
「世帯の小規模化」「世帯員の高齢化」「高齢者の単独世帯の増加」が続く
社人研では、5年に一度「日本の世帯数の将来推計」を行っています。今回、2020年(令和2年)の国勢調査結果をもとに、2020-50年の30年間について将来推計を実施しました(全国推計に関する記事はこちら)。
まず、都道府県別に世帯数がどう動くのかを見ると、▼世帯総数が減少する都道府県は次第に増加し、2045-50年にはすべての都道府県で世帯数は減少する▼2050年の都道府県の世帯総数は40道府県で2020年より少なくなるが、7都県(東京、沖縄、千葉、埼玉、愛知、神奈川、滋賀)では2020年より多くなる—ことが分かりました。
また、「平均世帯員」(1世帯の人数の平均)を見ると、次のように「漸減していく」ことが確認されました。
▽2040年には半数以上の都道府県で、平均世帯人員が2人を下回る
▽平均世帯人員はすべての都道府県で減少が続く
▽平均世帯人員が2人を下回るのは、▼2020年には東京のみ▼2040年には26都道府県に増加▼2050年には34都道府県に増加—となる
▽2050年に最も平均世帯人員が小さいのは東京と北海道の1.78人、もっとも大きいのは山形の2.15人
さらに「単独世帯」(1人暮らし世帯)の状況を見ると、次のような状況です。
▽単独世帯の「数」は、2030年まではすべての都道府県で増加が続くが、2030年以降は減少する都道府県が現れる
▽2045-50年にはすべての都道府県で単独世帯の「数」が減少するが、2050年の単独世帯数は、32都府県では2020年より多くなる
▽単独世帯の「割合」はすべての都道府県で上昇し、2050年には「40%を超える県」が大都市地域を中心に27都道府県に増える。もっとも割合が高いのは東京の54.1%
さらに、次のように「世帯の高齢化」「高齢の単独世帯の増加」が急激に進む状況も示されました。
▽「世帯主が65歳以上の世帯」が占める割合は、2050年には21県で50%を超え、秋田では60%を超える
▽「65歳以上の単独世帯」の割合は、2050年に32道府県で20%を超える
▽65歳以上の人のうち「単独世帯である割合」(独居率)も、すべての都道府県で上昇し、2050年には山形以外で20%を超え、5都府県では30%を超える
▽2050年には、「75歳以上の単独世帯の数」がすべての都道府県で2020年より増加し、4県(沖縄、滋賀、埼玉、茨城)では2倍以上となる
▽75歳以上の人のうち「単独世帯である割合」(独居率)もすべての都道府県で上昇し、2050年には山形以外で20%を超え、8都府県では30%を超える
このように「世帯員の減少」「単独世帯の増加」が続き、さらに「高齢単独世帯の割合が増加する」ことを踏まえると、介護保険サービスをはじめとする「高齢者支援」の拡充が全国各地で必須となることが確実です。
ところで、現在でも「個々の家族介護者の負担が増加し、要介護3以上の家族介護者では『終日介護している』割合が最も高い」状況にありますが、今後、こうした「家族介護」に依存できなくなるケースが急増していくことが確実となります。
一方、介護費が増加し介護保険財政が厳しさを増している中では、「介護保険サービスの拡充」を行うことには大きな困難も伴います。今後、こうした事態にどう対応していくのかを、喫緊の課題として先送りせずに議論し、速やかに結論を得て実行していくことが極めて重要となります。
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