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2024年度の臓器移植状況、希望者は心臓809名、肺627名などにのぼるが、提供者は131名にとどまる—厚労省

2025.6.4.(水)

今年(2025年)3月31日時点で臓器移植を待っている人は、心臓809名、肺627名、肝臓470名、腎臓1万4721名、膵臓23名などとなっている一方、2024年度における脳死者からの臓器提供は131名にとどまっている―。

福岡資麿厚生労働大臣が6月3日に、こういった「臓器移植の実施状況等に関する報告」を参議院厚生労働委員会に行いました(厚労省のサイトはこちらこちら)。

臓器移植の水準は「コロナ禍前」水準に回復していますが、今後の状況を詳しく見ていく必要があります。

脳死者からの臓器提供件数は、コロナ感染症流行前よりも多い水準に

1997年に臓器移植法が制定された際、国会(参議院)は「厚生労働大臣は、参議院厚生労働委員会で臓器移植等の実施状況を報告する」旨の附帯決議を行いました(附帯決議とは国会が政府に与えた、いわば「宿題」で、政府には決議の内容を実行するよう「努力する」ことが求められます)。

これに基づき、厚労相は毎年、臓器移植の実施状況を国会に報告しています。

まず今年(2025年)3月31時点の臓器移植「希望」登録者数を見ると、日本全国で次のような状況となっています。
▼心臓:809名(前年(2024年)3月末に比べて46名減少)
▼肺:627名(同24名増加)
▼心肺同時[心臓と肺を同時に移植]:4名(同増減なし)
▼肝臓:470名(同101名増加)
▼腎臓:1万4721名(同371名増加)
▼肝腎同時[肝臓と腎臓を同時に移植]:44名(同13名増加)
▼膵臓:23名(同増減なし)
▼膵腎同時[膵臓と腎臓を同時に移植]:118名(同20名減少)
▼小腸:8名(同増減なし)
▼肝小腸同時[肝臓と小腸を同時に移植]:0名(同1名減少)
▼眼球(角膜):2117名(同102名増加)

「臓器移植を待つ方」が増加している部位と、減少している部位とがあります。



これに対し、臓器「提供」の状況を見てみると、2024年度には131名の脳死者から臓器提供が行われました。前年度から15名増加しています。新型コロナウイルス感染症下では臓器移植提供が大きく減少しましたが、コロナ感染症が落ち着き、「臓器移植の状況がコロナ禍前の水準を超える」状況になってきていますが。今後の動向を見守る必要があります。

▽心臓:提供は116名(前年度に比べて12名増加)、移植実施は116件(前年度に比べて12名増加)[すべてが脳死者からの提供・移植実施]

▽肺:提供は106名(同14名増加)、移植実施は135件(同27件増加)[同じくすべてが脳死者からの提供・移植実施](1つの肺を複数の肺葉に分けて複数人に移植することが可能なケースがあるため、提供者数よりも移植実施件数が多くなることがある)

▽肝臓:提供は119名(同14名増加)、移植実施は123件(同16件増加)[同じくすべてが脳死者からの提供・移植実施](1つの肝臓を切り分けて複数人に移植できるケースもあるため、提供者数よりも移植実施件数が多くなることがある)

▽腎臓:提供は124名(同5名増加)、移植実施は239件(同12件増加)[うち脳死者からの提供は115名(同11名増加)、脳死者からの移植実施は222件(同20件増加)](死者からの提供であれば、1人から2つの腎臓を摘出し、2名の患者に提供できるケースもあるため、提供者数よりも移植実施件数が多くなることがある)

▽膵臓:提供は47名(同15名増加)、移植実施は47件(同15件増加)[うち脳死者からの提供は46名(同14件増加)・脳死者からの移植実施は46件(同14件増加)]

▽小腸:提供は2名(同増減なし)、移植実施は2件(同増減なし)[すべてが脳死者からの提供・移植実施]

移植実施数等(2025年臓器移植実施状況報告 250603)



また、臓器移植法施行(1997年10月16日)から今年(2054年)3末までに実施された臓器別の提供件数・移植実施件数(累計数)は次のようになりました。

▽心臓:提供は957名、移植実施は856件[すべてが脳死者からの提供・移植実施]

▽肺:提供は837名、移植実施は1031件[すべてが脳死者からの提供・移植実施]

▽肝臓:提供は1002名、移植実施は1063件[すべてが脳死者からの提供・移植実施]

▽腎臓:提供は2587名、移植実施は4861件[うち脳死者からの提供が1066名、脳死者からの移植実施が2083件)

▽膵臓:提供は584名、移植実施は580件[うち脳死者からの提供が579名、脳死者からの移植実施が576件]

▽小腸:提供は34名、移植実施は34件[すべてが脳死者からの提供・移植実施]



なお、眼球(角膜)については、2024年度に620名から提供がなされ(前年度に比べて9名増加)、移植実施は854件(同増減なし)となりました。臓器移植法施行からの累計で見ると、提供者は2万3472名で、移植実施は3万7748件となっています。

2010年から始まった「15歳未満の小児」からの臓器提供、累計で94名に

ところで、改正臓器移植法が2010年に全面施行され、▼「家族による書面での承諾」に基づく臓器提供▼「15歳未満の小児」からの臓器提供―などが可能となりました。改正法施行(2010年7月17日)から今年(2025年)3月末までに臓器提供が行われた脳死者は1095名(前年(2024年)3月末から139名増加)で、このうち、本人の書面による意思表示がなく「家族の書面での承諾」に基づく臓器提供は871名(同116名増加)となっています。

また、今年(2025年)3月末時点で、18歳未満の人からの脳死下での臓器提供は119名(前年(2024年)3月末から10名増加)で、このうち15歳未満の小児からの臓器提供は94名(同15名増加)となっています。

移植した臓器の生着率や患者の生存率、中長期的に見ていく必要あり

さらに、1997年の臓器移植法施行後からの▼移植後の生存率▼臓器の生着率(体内で機能している)―に目を移してみましょう。昨年(2024年)末までに移植が実施され、今年(2025年)3月末までに生存している人・臓器が生着している人の状況です。

まず生存率(1年)を臓器別に見ると、次のようになっています。
▼心臓:96.5%(前年度調査に比べて0.1ポイント上昇)
▼肺:90.6%(同0.6ポイント低下)
▼肝臓:89.0%(同0.4ポイント低下)
▼腎臓:96.7%(同0.1ポイント上昇)
▼膵臓:95.8%(同0.3ポイント上昇)
▼小腸:94.0%(同0.4ポイント上昇)



また生着率(移植した臓器が機能している割合、1年後)を臓器別に見ると、次のような状況です。
▼心臓:96.5%(前年度から0.1ポイント上昇)
▼肺:90.5%(同0.6ポイント低下)
▼肝臓:88.4%(同0.3ポイント低下)
▼腎臓:90.5%(同0.2ポイント上昇)
▼膵臓:85.6%(同0.8ポイント上昇)
▼小腸:90.0%(同0.3ポイント低下)

生存率・生着率などは中長期的に眺めていくことが必要です。



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