2024年の合計特殊出生率は1.15に低下、出生数は統計史上初めて70万人を切った—厚労省
2025.6.5.(木)
2024年の合計特殊出生率は1.15に低下し、東京都では2年連続「1.0を切る」危機的な状況にある―。
また2024年の出生数は、統計史上初めて70万人を切った—。
死因をみると第1位のがん、第2位の心疾患、第3位の老衰という順位に変わりはないが、「老衰」による死亡率が前年比べて15.3ポイントも増加している―。
また「がん」による死亡を詳しくみると、男性では「肺がん」死亡が、女性では「大腸がん」死亡がトップである状況に変わりはないが、「膵臓がん」の増加が目立つ―。
このような状況が、6月4日に厚生労働省が公表した2024年の「人口動態統計月報年計(概数)の概況)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。

人口動態の状況(2024年人口動態統計1 250604)
2023年の合計特殊出生率は1.15に低下、出生数は初めて70万人を切る
我が国では、少子高齢化が急速に進行しています。少子化の進行は、「社会保障財源の支え手」はもちろん、「医療・介護サービスの担い手」が足らなくなることを意味します。さらに社会保障制度にとどまらず、我が国の存立そのものをも脅かします(国家の3要素である「領土」「国民」「統治機構」の1つが失われ、日本国そのものが消滅しかねない)。
このため、人口動態統計として▼出生▼死亡▼婚姻▼離婚▼死産—の5つの事象を把握し、対策を検討していくことが我が国にとって非常に重要となるのです。
2024年の状況を見ると、出生数は68万6061人で、前年(72万7288人)に比べて4万1227人減少しました。初めて70万人を切っています。出生率(人口1000対)は5.7で、前年(6.0)から0.3ポイント低下しています。

出生数・合計特殊出生率の状況(2024年人口動態統計2 250604)
一方、死亡数は160万5298人で、前年(157万6016人)に比べて2万9282人増加しました。死亡率(人口1000対)は13.3で、前年(13.0)から0.3ポイント上昇しています。

死亡数・死亡率の状況(2024年人口動態統計3 250604)
出生数と死亡数の差である「自然増減数」を見ると、マイナス91万9237人で、前年(マイナス84万8728人)に比べて7万509人と減少ペースはさらに加速しています。自然増減率(人口1000対)はマイナス7.6で、前年(マイナス7.0)から0.6ポイント低下。自然増減数・自然増減率ともに18年連続で減少かつ低下しています。我が国の「人口減少」にさらに拍車がかかっていることが分かります。
さらに、「1人の女性が一生の間に生む子供の数」に相当する合計特殊出生率を見ると、2023年は1.15で、前年(1.20)から0.05ポイント低下しました。合計特殊出生率は2015年に上昇したものの、その後、再び低下が続いています。
都道府県別の合計特殊出生率を見ると、最も高いのは沖縄県で1.54(前年に比べて0.06ポイント低下)、次いで▼福井県の1.46(同増減なし)▼宮崎県の1.43(同0.06ポイント低下)▼鳥取県の1.43(同0.01ポイント低下)▼島根県の1.43(同0.03ポイント低下)―などで高くなっています。
逆に最も低いのは東京都の0.96(同0.03ポイント低下)で、次いで▼宮城県の1.00(同0.07ポイント低下)▼北海道の1.01(同0.05ポイント低下)▼秋田県の1.04(同0.06ポイント低下)▼京都府の1.05(同0.06ポイント低下)—などで低くなっています。都道府県別に色分けすると、依然として「明確な西高東低の傾向がある」ことが再確認できます。
また、東京都では2年連続で「1.0を切る」状況で、政府はさらに危機感を募らせています。

都道府県別の合計特殊出生率(2024年人口動態統計4 250604)
前述のとおり、国家が存立するためには▼領土▼国民▼統治機構―の3要素が不可欠です。人口減少は、「国民」の要素が失われつつあること、つまり日本国が消滅に向かっていることを意味します。社会保障制度はもちろんのこと、我が国の存立基盤が極めて脆くなってきていると言えます。
がんが死因第1位を走るが、「老衰」による死亡の急増続く
次に死因別の死亡数を見ると、上位5つは次のような状況です。
▼第1位:悪性新生物(腫瘍)の38万4099人(人口10万対の死亡率は319.3で、前年に比べて3.7ポイント上昇)
▼第2位:心疾患(高血圧性を除く)の22万6277人(同188.1で、同じく2.5ポイント低下)
▼第3位:老衰の20万6882人(同172.0で、同じく15.3ポイント増加)
▼第4位:脳血管疾患の10万2808人(同85.5で、同じく0.7ポイント低下)
▼第5位:肺炎の8万171人(同66.6で、同じく4.1ポイント上昇)
第1位の悪性新生物は、2024年の全死亡者に占める割合が23.9%(前年度に比べて0.4ポイント低下)となり、1981年以降、死因第1位を独走しています。
また2016年までは「肺炎」が第3位でしたが、2017年には「脳血管疾患」が第3位、「老衰」が第4位となり、さらに2018年には「老衰」と「脳血管疾患」の順位が逆転しました。その後も「老衰」による死亡が急増していることから、医療・医学等の水準が高まり「天寿を全うする」方の増加が伺えます。「いかに、我が国の医療提供体制が優れているのか」が確認できるデータと言えます。

主な死因の構成割合(2024年人口動態統計5 250604)

主な死因別に見た死亡率の推移(2024年人口動態統計6 250604)
なお「老衰」の人口10万対死亡率の増加は、医療・介護分野において「看取り」がさらに重要なテーマとなることを意味します。厚労省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を作成。そこでは「自分の人生の最終段階において、どのような医療・介護を受けたいのか、逆に受けたくないのかを我々国民1人1人が考え、家族や親しい友人ら、さらに医療・介護関係者と繰り返し、繰り返し話し合っておく」(可能であればそれを文書にしておく)環境・風土の醸成などを進めていくことの重要性が謳われています(いわゆるACPの推進、関連記事はこちら)。2024年度診療報酬改定では、入院料の通則においてACP対応が義務付けられており、この動きはさらに拡大していくと考えられます。
ところで主な死因の構成割合は、年齢・性によって相当異なります。
例えば、死因第1を占める「悪性新生物」は、男女ともに5-9歳では大きなシェアを占めますが、その後に低下。しかし30歳を過ぎると増加に転じ(女性では30歳を過ぎた頃から急増)、男性では65-74歳頃、女性では55-59歳頃にピークとなり、再び低下モードにはいります(前年と同様の傾向)。
高齢になるにつれ「がんによって死亡する割合」が低くなっていくため、「高齢者の特性を踏まえたがん対策」の重要性が伺えます。例えば、「副作用の強い抗がん剤の使用をどう考えるのか」、「根治を目指すのではなくQOLの維持・改善を主目的とした治療プログラムを組むべきではないのか」といった指摘もあり、今後、議論を更に進める必要があります。

性・年齢階級別に見た主な死因の構成割合(2024年人口動態統計7 250604)
がんによる死亡、男女とも「膵臓がん」の増加が目立つ
さらに、主な部位別に悪性新生物の死亡率を見ると、男性では「肺」が圧倒的に高く(1993年以降第1位)、2023年の死亡数(人口10万対)は5万2330人(前年から580人減)、死亡率(人口10万対)は89.5(前年から0.3低下)となりました。
男性では、「大腸」がん(死亡率は49.3で、前年から1.9ポイント増)、「胃」がん(同42.3で、前年から0.7ポイント減)、「膵」がん(同34.9で、前年から1.2ポイント増)などと続きます。
一方、女性では、男性ほどの偏りはなく、第1位は「大腸」がん(死亡率は41.4で、前年から1.0ポイント増)、第2位は「肺」がん(同37.6で、前年から0.9ポイント増)、第3位は「膵臓」がん(同33.7で、前年から1.1ポイント増)となりました。

がんの部位別の死亡数・死亡率(2024年人口動態統計8 250604)
なお部位別のがん死亡率の推移を男女別にみると、次のように傾向そのものに変わりはありませんが、その動き方には若干の性差があります。
▼胃がん:男性↓(減少傾向)、女性→(横這いから若干の減少傾向)
▼肝臓がん:男性→(横這いから微増傾向)、女性↓(減少傾向)
▼膵臓がん:男性↑(増加傾向)、女性↑(増加傾向)
▼肺がん:男性→(横ばいから若干の減少傾向)、女性↑(増加傾向)
▼大腸がん:男性↑(増加傾向)、女性↑(増加傾向)

がんの部位別死亡率の推移(2024年人口動態統計9 250604)
今後、社会的要因なども含めて男女差を詳しく分析していく必要があるでしょう。
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