介護保険の通所サービスを一体化し、認知症や中重度者の加算を検討してはどうか―介護給付費分科会で鈴木委員が提案
2016.3.30.(水)
介護保険の通所リハビリ(デイケア)と通所介護(デイサービス)をきちんと区別している利用者はわずかであり、通所サービスを一体化した上で、認知症対応の加算や中重度者の加算などを検討すべきではないか―。
30日に開かれた社会保障審議会の介護給付費分科会では、2015年度介護報酬改定の効果検証結果が報告され、これを受けて鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)はこのような提言を行いました。
今後の介護保険制度改革や、2018年度の介護報酬・診療報酬同時改定においてどのような議論が行われるのか注目したいところです。
メディ・ウォッチで既に一部をお伝えしたとおり、2015年度に行われた介護報酬改定の効果検証調査が行われ、その結果が30日の介護給付費分科会に報告されました。
調査は、報酬改定の効果や影響の出やすさなどに着目し、数回に分けて実施されます。2015年度には効果が出やすい7項目について調査が行われました(関連記事はこちらとこちら)。
そのうち通所リハビリ(デイケア)と通所介護(デイサービス)については、次のような違いがあることが分かりました(関連記事はこちら)。
▽通所介護は短時間のレスパイト利用が一定程度ある
▽通所リハビリでは、リハビリの必要性が高い利用者が多い
▽通所リハビリでは、リハビリ専門職の関与が強い
▽通所リハビリでは90.4%の事業所で医師と連携しているが、通所介護では医師と連携している事業所は17.2%に止まる
▽通所リハビリの方がリハビリの効果が高い
▽利用者のアセスメント(評価)において、ADL評価指標を用いている利用者の割合は、通所リハビリでは76.7%に上るが、通所介護では9.0%に止まる
こうした状況から、通所リハビリと通所介護には一定の役割分担がなされていると見ることができそうですが、両者の役割が必ずしも明確でない部分があるとの指摘も少なくありません。
鈴木委員はこの点について、「介護保険の通所リハビリ(デイケア)と通所介護(デイサービス)をきちんと区別している利用者はわずかであり、通所サービスを一体化した上で、認知症対応の加算や中重度者の加算などを検討すべきではないか」と提案しています。
また武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、リハビリの利用期間と効果に着目。
効果検証調査結果によると、通所リハビリでは、日常生活自立度が向上した利用者の割合が▽3-6か月未満の利用者では33.7%▽6-12か月未満の利用者では29.5%▽1年以上の利用者では26.0%―と減少したことが判明。逆に自立度が低下した利用者の割合は、▽3-6か月未満の利用者では1.7%▽6-12か月未満の利用者では4.0%▽1年以上の利用者では15.3%―と増加していることも分かりました。
この結果について武久委員は、「1年の経過(老化)で自立度が低下したのだろうか。長期間のリハビリでマンネリ化し、効率が低下している可能性もある」と指摘。さらに、「医療(診療報酬)では、要介護高齢者への外来の維持期リハビリを介護保険へ移行する方向性が示されているが、介護保険の通所リハビリと医療保険の外来リハビリの効果を比較検証し、もし医療保険の外来リハの方が効果が高いということが分かれば、移行方針を考え直す必要もあるのではないか」と述べています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
これについて東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は「通所サービスにはレスパイト(家族の身体的・精神的負担軽減)の要素もあり、『自立度の維持』にも着目する必要がる。1年以上の通所リハビリ利用者では半数超で自立度が維持されており、効果はあると考えられる」と述べています。
しかし武久委員は、「介護保険では自立を目指している。5年や10年の長期スパンではなく、半年や1年といった短期間で自立度が下がるのはリハビリの内容に問題がある可能性もある。介護保険のリハビリであってもきちんと提供しなければいけない」と強く反論しています。
介護保険の通所リハビリを巡っては、このように「通所介護との役割分担」や「医療保険の外来リハビリからの移行」というさまざまな課題があり、今後、どのような議論が行われるのか、またどのようなデータが示されるのか注目していく必要があります。
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