光ディスクでのレセプト請求医療機関、2024年9月以降は「原則、オンライン請求へ移行」を—社保審・医療保険部会
2023.3.28.(火)
現在、3割弱の医療機関がレセプト請求を「光ディスクの郵送」で行っているが、効率的審査支払事務の実現などを目指し、新規適用を来年(2024年)4月から終了し、同年9月(2024年9月)には原則として「オンライン請求へ移行する」こととする—。
紙レセ請求を行っている医療機関についても、可能な限り「オンライン請求へ移行する」ことを目指す—。
3月23日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、こうした方針(ロードマップ)が了承されました。厚生労働省は、この方針に沿って「オンライン請求に向けたPR」などを強化するとともに、来年度(2023年度)に関係省令(療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令)の改正を行う予定です。
処方箋は交付日を含めて4日間有効、旅行などの事情があれば延長も可能
レセプト請求には、大きく▼オンライン請求▼光ディスク等にデータを格納し、郵送で行う請求▼紙レセの郵送で行う請求—の3種類が認められています。本年(2023年)1月処理分では、▼オンライン請求が施設ベースで70%・レセプトベースで86%▼光ディスク請求が同じく27%・14%▼紙レセプト請求が同じく2.5%・0.4%—という状況です。現在でも光ディスク・紙による請求が相当数あることを確認できます。
しかし、光ディスク・紙レセによる請求は「非効率」であることから、政府は「可能な限りオンライン請求に統一していく」方針を打ち出しており、昨年(2022年)6月の規制改革実施計画では「オンライン請求を行っていない医療機関の実態を調査し、『オンライン請求の割合を100%に近づけていく』ためのロードマップを2022年度末まで作成する」よう厚労省に指示しました。
厚労省は本年(2023年)2月に、オンライン請求を行っていない医療機関を対象とした調査を実施。そこからは、全体の3割を占める【光ディスク請求医療機関】では、約半数が「2023年度中にオンライン請求を開始する」と考えており、「1年以内に移行可能」とする医療機関が多いことなどが明らかになりました。
この調査結果から、「現在、光ディスク請求を行っている医療機関」では、相当数が1年以内にオンライン請求へ移行可能と考えられます。そこで厚労省保険局医療介護連携政策課の水谷忠由課長は▼光ディスク請求の新規適用を2024年4月から終了する▼既存の光ディスク請求医療機関は2024年9月末までに原則オンライン請求に移行する—方針を打ち出し、了承されました。「オンライン資格確認等システム導入義務化に係る経過措置の多くが2024年9月末で切れる」こと(関連記事はこちら)や、「返戻されたレセプトの再請求の紙レセ請求が2024年9月末で完全廃止される」」こと(関連記事はこちら)などとも足並みが揃えられています。
もっとも、光ディスク請求医療機関の中には「レセコンを導入しておらず、外部業者に委託して光ディスク請求を行っている」ところもあります。こうした医療機関については「移行計画の提出を求め、1年単位の経過的な取り扱い」で光ディスク請求の継続が認められることになります。
他方、全体の約2.5%である【紙レセ請求医療機関】では、来年度(2023年度)中にオンライン請求開始予定は3%程度にとどまっており、9割近くが「オンライン請求の予定なし」と答えていることも分かりました。
紙レセ請求は、現在、▼レセコンを使用していない医療機関▼医師等が高齢である医療機関—など等に限り、例外的に認められている「経過的な取り扱い」ですが、効率的な審査支払事務を実現するためには、「可能な限りオンライン請求に移行してもらう」ことが望まれます。
そこで水谷医療介護連携政策課長は、▼「経過的な取り扱い」であることを明確化し、レセコン未使用の場合の新規適用を2024年4月から終了する(高齢医師等については既に新規適用を終了している)▼2024年4月以降も紙レセ請求を続ける機関には、改めて「当初の要件」(レセの手書き、電子請求義務化時点で概ね75歳以上など)を満たしている旨の届け出を求める(医療機関・薬局自身でも「紙レセで請求をおこなっている理由」を把握できておらず、実際にはオンライン請求移行可能なケースもあるため)—考えを示しました。自院の状況を点検してもらい「可能な限りオンライン請求に移行してもらう」という考えと言えるでしょう。
厚労省は「来年度(2023年度)中に関係省令(療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令)を改正し、上記の点に関する制度整備を行う」予定です。
もっとも、単に「移行せよ」と呼び掛けるだけでは、オンライン請求への移行は進みません。厚労省はオンライン請求移行に向けて「何がハードルとなっているのか」も調べており、光ディスク請求医療機関では▼情報セキュリティ上の不安がある▼オンライン請求の仕方が わからない▼コストがどの程度かかるのか分からない—などが、紙レセ請求医療機関では▼高齢である▼レセプトの件数が少ない—などが上位を占めていることも分かりました。
逆に考えれば、「情報セキュリティ対策」「導入方法」「初期費用・ランニングコスト」などの情報が十分、かつ丁寧に提供されれば、オンライン請求に向けたハードルを下げることが可能となります。
そこで水谷医療介護連携政策課長は「本年末(2023年末)にかけて、オンライン請求に係る周知広報を集中的に行う」考えを強調しました。オンライン請求とはどのようなものなのか、どのような設備を導入すればよいのか、それにはいくらかかるのか、どう操作すればよいのか、などに関して、分かりやすい資材(パンフレットや動画などが想定される)を提供することになるでしょう。
ところで、オンライン資格確認等システムの導入促進を狙う【医療情報・システム基盤整備体制充実加算】では、「オンライン請求要件」を緩和し、「オンライン請求を本年中(2023年末12月31日まで)に開始する旨を届け出た保険医療機関・保険薬局は、本年(2023年)4月1日から同年12月31日までの間に限り、オンライン請求要件を満たすものと見做す」との臨時特例的が設けられました(関連記事はこちら)。
しかし、光ディスク・紙レセ請求医療機関の6割が「この臨時特例を知らない」ことも判明しました。特例を知らなければ「オンライン請求の2023年開始に向けて積極的に取り組もう」という意欲もわいてこないかもしれません。
水谷医療介護連携政策課長は、集中的な情報提供において「この臨時特例」についても盛り込んでいく考えも示しています。
こうした方針については、「経過措置を当初から設けるなど、踏み込みが甘いのではないか」(佐野雅宏委員:健康保険組合連合会副会長)、「歯科では小規模・高齢な医療機関が多く、 『電子化の流れについていけない』ところも少なくない。置き去りにしないよう、丁寧に進めてほしい」(林正純委員:日本歯科医師会常務理事弘)などの要望が出ましたが、異論・反論はなく、了承されています。
また、3月23日の医療保険部会では「NDBに▼生活保護受給者の健診情報▼事業主健診情報(40歳未満)—を収載し、国・自治体や研究者などに情報提供を行っていく」方針が了承されました。今後、NDBのシステム改修を行い、2027年度からの情報収載・提供を目指します。
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