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GemMed塾 看護モニタリング

千葉県がんセンター、4月から都道府県拠点病院に復帰―がん拠点病院指定検討会

2018.3.12.(月)

 来年度(2018年度)から、都道府県がん診療連携拠点病院として「千葉県がんセンター」(千葉県千葉市)を、拠点病院の空白地域におけるがん医療の向上を目指す地域がん拠点病院として「北秋田市民病院」(秋田県北秋田市)と「高知県立あき総合病院」(高知県安芸市)を指定する―。

 こういった方針が、3月9日に開催された「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」で決まりました。

 一方、「地域医療機能振興機構諫早総合病院」(長崎県諫早市)―については申請が却下されました(3年連続の却下)。

3月9日に開催された、「第13回 がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」

3月9日に開催された、「第13回 がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」

がん医療の均てん化に向け、計画的にがん診療の拠点病院を整備

 我が国では、「どの地域に住んでいても、優れたがん医療を受けられる体制を整える」(均てん化)という方針の下で、がん医療を提供する病院を計画的に整備しています。
(1)都道府県がん診療連携拠点病院:都道府県内でがん医療の中心的役割を果たすよう厚生労働大臣が指定した病院、原則として各都道府県に1カ所
(2)地域がん診療連携拠点病院:地域内で中心的役割を果たすよう厚生労働大臣が指定した病院、各二次医療圏に少なくとも1か所
(3)地域がん診療病院:拠点病院のない地域(空白地域)において、隣接する地域のがん診療連携拠点病院のグループとして指定され、拠点病院と連携しつつ、専門的ながん医療の提供、相談支援や情報提供などの役割を担う
(4)特定領域がん診療連携拠点病院:特定のがん種について、都道府県内で最も多くの診療実績があり、都道府県内で拠点的役割を果たす病院

 今回は、(1)の都道府県がん診療連携拠点病院として1件、(2)の地域がん診療連携拠点病院として1件、(3)の地域がん診療病院として2件の推薦が都道府県から行われました。

千葉県がんセンター、特定機能病院並みの医療安全体制を整えている

千葉県がんセンターは、従前より都道府県がん診療連携拠点病院として、千葉県内のがん医療の水準向上等に向けて尽力してきました。しかし、▼腹腔鏡手術を受けた患者の多数死亡事例▼患者取り違え―の発生など、「医療安全に関するガバナンスが欠けている」との指摘を受け、拠点病院の指定が取り消されました(関連記事はこちら)。

その後、同センターや県病院局で医療安全体制を向上させ、現在、特定機能病院と同等の医療安全体制を確保。さらに、医療安全に関する意識が全職員に浸透し、「病院の風土」にまで醸成されてきていることが、実際に同センターに出向いて調査を行った山口建座長(静岡県立静岡がんセンター総長)から報告されました。

また、構成員と県との質疑応答の中で、▼遺族サイドにも医療安全体制の構築について説明を行っている(松本陽子構成員:愛媛がんサポートオレンジの会理事長との質疑から)▼患者からの相談を受け付ける窓口を設置し、院内にポスターを掲示して周知を図っている(同)▼インシデントレポートへの医師の関与が十分ではないが、徐々に関与の度合いが向上してきている(小松元悟構成員・日本病院会副会長との質疑から)▼がん診療連携拠点病院では「特定機能病院よりも緩い医療安全体制」が要件となる見込みだが、要件更新後も、特定機能病院並みの厳しい医療安全体制を確保する(若尾文彦構成員・国立がん研究センターがん対策情報センター長との質疑から)▼手術を録画し、必要に応じて外部有識者からアドバイスを受けるなど、医療安全に関する風土が醸成されてきている(山口座長との質疑から)—などの状況も明らかになりました。

千葉県がんセンターでは、医療事故を大きな教訓として、特定機能病院なみの医療安全体制を整えている(その1)

千葉県がんセンターでは、医療事故を大きな教訓として、特定機能病院なみの医療安全体制を整えている(その1)

千葉県がんセンターでは、医療事故を大きな教訓として、特定機能病院なみの医療安全体制を整えている(その2)

千葉県がんセンターでは、医療事故を大きな教訓として、特定機能病院なみの医療安全体制を整えている(その2)

 
こうしたことから、検討会では「千葉県がんセンターを、都道府県がん診療連携拠点病院として指定する」との意見を固めています。

諫早総合病院、長崎医療センターとの相乗効果がみえず、要件も一部クリアできず

 (2)の地域がん診療連携拠点病院については、より質の高い医療提供を確保するため2015年1月から指定基準が厳格化されました。例えば、▼手術療法を行う常勤医師の配置を求める▼放射線治療を行う医師を、従前の「専任」から「専従」に厳格化する▼放射線診断を行う専任の常勤医師の配置を求める▼病理診断を行う常勤医師の配置を求める―といった「体制」整備の充実を求めるほか、▼院内がん登録500件以上▼悪性腫瘍の手術400件以上▼がん化学療法の患者延べ1000人以上▼放射線治療の患者延べ200人以上—などの診療実績も求められることになりました。さらに、早期(がんと診断されたとき)から充実した緩和ケアを受けられるよう、「緩和ケアチームに専従の看護師(がん看護専門看護師、緩和ケア認定看護師など)を配置し、診断時からの外来・病棟での系統的な苦痛のスクリーニングを義務化する」こととなっています。

 今般、長崎県から「地域医療機能振興機構諫早総合病院」(長崎県諫早市)を地域がん診療連携拠点病院として推薦が行われました。

 しかし、放射線治療患者数が、2016年10月末までの1年間では213名であったものが、2017年10月末までの1年間で177名にとどまっています。地域がん診療連携拠点病院では、放射線治療について「年間200名以上を概ね満たす」という基準値が設定されています((概ねは9割とされ、つまり年間180名以上の放射線治療を行っていなければならない)。このため2017年については基準値をクリアできていないことが分かりました。

諫早総合病院では、放射線治療について基準値をクリアできなかった

諫早総合病院では、放射線治療について基準値をクリアできなかった

 
 ところで同院は、「県中央保健医療圏」という2次医療圏に所在していますが、この医療圏県にはすでに「長崎医療センター」が地域がん診療連携拠点病院として指定されています。検討会では「同一の2次医療圏に複数の地域がん診療連携拠点病院を指定する場合には、相乗効果が十分にあることが必要」との見解を固めていますが、今般、長崎県からは構成員を頷かせるだけの「相乗効果」が説明されず、▼指定要件を満たしていない▼既指定の拠点病院との相乗効果が明確でない―ことから、指定は却下されています。同院は3年連続で指定が却下されています(関連記事はこちら)。

北秋田市民病院、あき総合病院を「地域がん診療病院」に、空白地域が2つ減少

 がん診療連携拠点病院には、前述のように厳しい指定基準が設けられているため、例えば「人口が少なく、症例数を確保できない」医療圏では拠点病院が整備できません。厚労省は、こうした「空白医療圏」対策の1つとして、拠点病院の要件をすべては満たさないものの、拠点病院に準じた体制・実績を持つ病院を「地域がん診療病院」として指定しています。

 今般、▼北秋田市民病院(秋田県北秋田市)▼高知県立あき総合病院(高知県安芸市)—の2病院について、地域がん診療病院への推薦が県から行われました。

 前者の北秋田市民病院では、既指定の秋田厚生医療センターと設立母体が同一であり、十分な連携をとるとともに、基準値を超える人員体制を敷いている(例えば緩和ケアに係る認定看護師の配置など)こと、などが評価され、地域がん診療病院への指定が認められました。

北秋田市民病院は、秋田厚生医療センターと連携して、地域に優れたがん医療を提供していく

北秋田市民病院は、秋田厚生医療センターと連携して、地域に優れたがん医療を提供していく

 
 また後者のあき総合病院は、高知大学付属病院と連携し、「非常勤医師の派遣」「診療データの共有」(例えば、あき総合病院の患者が、高知大付属病院に紹介された場合、検査データや治療歴などが共有される)などがすでに進められています。さらに緩和ケア体制の整備も進められていることなどが評価され、地域がん診療病院への指定が認められました。
あき総合病院は、高知大医学部附属病院と連携して、地域に優れたがん医療を提供していく

あき総合病院は、高知大医学部附属病院と連携して、地域に優れたがん医療を提供していく

 
 2病院の指定によって、空白医療圏は67に減少しています。

 なお、「地域がん診療病院」と「特定領域がん診療連携拠点病院」も、「がん診療連携拠点病院」と並んでDPCの機能評価係数Ⅱ(地域医療係数)で評価されます。

 
 これら3病院の指定は4月1日(2018年4月1日)から発効しますが、有効期間は事実上「1年間」です。なぜなら、来年(2019年)4月1日から、新たな「がん診療連携拠点病院の指定要件」が一斉に適用される予定であるからです(関連記事はこちら)。

 
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