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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

同一医療圏で複数のがん拠点病院を指定する場合、明確な「相乗効果」が必要―がん拠点病院指定検討会

2017.1.17.(火)

 来年度(2017年度)から、地域がん診療連携拠点病院として「東京都立墨東病院」(東京都墨田区)を、拠点病院の空白地域におけるがん医療の向上を目指す地域がん拠点病院として▼小樽市立病院(北海道小樽市)▼北海道中央労災病院(同岩見沢市)▼医療法人社団善仁会小山記念病院(茨城県鹿嶋市)▼南和広域医療企業団南奈良総合医療センター病院(奈良県吉野郡大淀町)▼北部地区医師会病院(沖縄県名護市)―を指定する。

 こういった方針が、12日に開催された「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」で決まりました。

 また、▼千葉県がんセンター(千葉県千葉市)▼国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)▼新潟県厚生農業協同組合連合会佐渡総合病院(新潟県佐渡市)―については指定を保留し、▼仙台厚生病院(宮城県仙台市)▼医療法人社団愛友会上尾中央総合病院(埼玉県上尾市)▼三井記念病院(東京都千代田区)▼地域医療機能振興機構諫早総合病院(長崎県諫早市)―については申請が却下されました。

1月12日に開催された、「第12回 がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」

1月12日に開催された、「第12回 がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」

相乗効果のほかに「免疫細胞療法に関する広告」の是非も検討

 我が国では、「どの地域に住んでいても優れたがん医療を受けられる体制を整備する」(均てん化)という方針の下で、各二次医療圏に「がん診療連携拠点病院」を少なくとも1か所整備することになっています。がん診療連携拠点病院については、より質の高い医療を提供するため2015年1月から指定基準が厳格化され、例えば、▽手術療法を行う常勤医師の配置を求める▽放射線治療を行う医師を、従前の「専任」から「専従」に厳格化する▽放射線診断を行う専任の常勤医師の配置を求める▽病理診断を行う常勤医師の配置を求める▽治療実績として、「院内がん登録500件以上」「悪性腫瘍の手術400件以上」「がん化学療法の患者延べ1000人以上」「放射線治療の患者延べ200人以上」などの要件を満たす▽緩和ケアチームに専従の看護師(がん看護専門看護師、緩和ケア認定看護師など)を配置し、診断時からの外来・病棟での系統的な苦痛のスクリーニングを義務化する―こととなっています。

「がん診療連携拠点病院」には、新たに診療実績(手術や化学療法などの件数)に関する要件が盛り込まれている

「がん診療連携拠点病院」には、新たに診療実績(手術や化学療法などの件数)に関する要件が盛り込まれている

「がん診療連携拠点病院」の新要件、質の高い治療体制を目指す

「がん診療連携拠点病院」の新要件、質の高い治療体制を目指す

「がん診療連携拠点病院」には、患者ががんと診断されたときから緩和ケアを行う体制を整備することが求められる

「がん診療連携拠点病院」には、患者ががんと診断されたときから緩和ケアを行う体制を整備することが求められる

「がん診療連携拠点病院」では、患者からのさまざまな相談に応じられる体制を構築することが必要となる

「がん診療連携拠点病院」では、患者からのさまざまな相談に応じられる体制を構築することが必要となる

 今般、「こうした要件を満たしており、がん診療連携拠点病院にふさわしい」として、▼医療法人社団愛友会上尾中央総合病院▼千葉県がんセンター▼三井記念病院▼東京都立墨東病院▼国立国際医療研究センター病院▼地域医療機能振興機構諫早総合病院―が都県から推薦されました。

 いずれも「すでに同一の医療圏にがん診療連携拠点病院が指定」されており、山口建座長(静岡県立静岡がんセンター総長)らは「複数の拠点病院を指定することによる相乗効果が十分にあるか」という視点で検討。その結果、「東京都立墨東病院」については「実力には申し分がなく、同一医療圏にある『がん研究会有明病院』の負担を減らす」という点から、新規指定を認めることになりました。

 また、「国立国際医療研究センター病院」については、▼診療実績は十分▼エイズ患者をはじめとする感染症患者へのがん医療が重要―という点に鑑みて、多くの構成員は新規指定に賛成しています。しかし、若尾文彦構成員(国立がん研究センターがん対策情報センター長)は「同院はナショナルセンターの役割を与えられており、そこに『がん診療拠点』としての役割も与えることに違和感を覚える」と指摘。山口座長は「国の政策医療にも関連するテーマであり、検討会では要件について充足していることを確認するにとどめ、厚生労働省で指定の可否を判断してほしい」と述べるに止めています。

 一方、「千葉県がんセンター」は、腹腔鏡手術を受けた患者が多数死亡していることや、患者取り違えが発生するなど「医療安全に関するガバナンスが欠けている」との指摘を受け、拠点病院の指定を取り消されています。県の病院局では、昨年10月に監査を行い、医療安全管理体制が改善していることを確認していますが、山口座長は「同様に医療事故が生じた東京女子医科大学病院などの反省を踏まえ、厚労省では特定機能病院の医療安全管理体制見直しを行っており、がん診療連携拠点病院にも同様の見直しが要請された。検討会では、要件の充足を確認するにとどめ、指定の可否については厚労省の関係部局での検討に委ねる」としました。なお、今年6月の新たな「がん対策推進基本計画」閣議決定を待って、医療安全管理を含めたがん診療連携拠点病院の指定要件見直しを検討し、来年(2017)度末に要件を改正、2019年度から運用開始とする方針が厚労省から提示されています。

新たながん対策推進基本計画の閣議決定の後、がん診療連携拠点病院などの指定要件を見直す

新たながん対策推進基本計画の閣議決定の後、がん診療連携拠点病院などの指定要件を見直す

 そのほかの病院については「相乗効果が明確でない」とし、指定は却下されています。さらに上尾中央総合病院については「効果が不確かで、患者に莫大な負担が生じる『免疫細胞療法』を早期のがん患者にも提供しているとホームページで謳われている。拠点病院としてふさわしいのだろうか」という強い指摘が若尾委員から出されました。免疫細胞療法については、▼民間療法の域を出ないもの▼エビデンスが集積されてきているもの―が混在しており、また患者に莫大な負担が生じることなどから一部社会問題にもなっています。山口座長はこのテーマについて別の検討会(がん診療提供体制の在り方等に関する検討会など)で議論するよう、厚労省に要望しています。

がん拠点病院の空白地域では、要件を緩和した「地域がん診療病院」を整備

 がん診療連携拠点病院には、前述のように厳しい指定基準が設けられているため、例えば「そもそも人口が少なく、症例数を確保できない」医療圏では拠点病院が整備できないことになります。厚労省は、こうした「空白医療圏」対策の1つとして、拠点病院の要件をすべては満たさないものの、拠点病院に準じた体制・実績を持つ病院を「地域がん診療病院」として指定しています。

「がん診療連携拠点病院」と「がん診療病院」との人的要件、後者ではやや緩和されている

「がん診療連携拠点病院」と「がん診療病院」との人的要件、後者ではやや緩和されている

 今般、▼小樽市立病院▼北海道中央労災病院▼医療法人社団善仁会小山記念病院▼新潟県厚生農業協同組合連合会佐渡総合病院▼南和広域医療企業団南奈良総合医療センター病院▼北部地区医師会病院―について、地域がん診療病院への推薦が道県から行われました。

 このうち、佐渡総合病院については「グループ診療病院との合同カンファレンスは2月から実施する」「緩和ケアチームの看護師は3月から配置する」という具合に、一部要件が「充足見込み」にとどまっているため、指定は「保留」とされました。今後、厚労省で充足状況を確認でき次第、正式に地域がん診療病院として指定されます。

特定領域で、他の拠点病院を凌駕する病院を特定領域拠点病院に指定

 さらに、がん医療のさらなる高度化を図るために「特定領域がん診療連携拠点病院」も創設されています。これは、特定の領域については、がん診療連携拠点病院をも凌駕する診療実績や技術を持ち、集学的治療(手術、放射線治療、化学療法、支持療法などを患者の状態に合わせて適切に組み合わせた治療)を提供することなどが要件とされています。

拠点病院の空白地域に「地域がん診療病院」を設置するとともに、特定の領域で優れた治療体制・実績を持つ病院を「特定領域がん診療連携拠点病院」として指定する

拠点病院の空白地域に「地域がん診療病院」を設置するとともに、特定の領域で優れた治療体制・実績を持つ病院を「特定領域がん診療連携拠点病院」として指定する

 この点、宮城県からは「仙台厚生病院では、肺がんについて優れた治療実績と技術・知見を有しており、特定領域拠点病院としての指定が妥当」との推薦が行われましたが、山口座長らは「集学的治療の実績が見えてこない」などとし、今回の指定は見送りとの結論が出されました。

 

 なお、「地域がん診療病院」と「特定領域がん診療連携拠点病院」も、「がん診療連携拠点病院」と並んでDPCの機能評価係数Ⅱ(地域医療係数)で評価されます。

 
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