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障害児等の気管カニューレ、事故抜去後の応急的な看護師の再挿入は適法―厚労省

2018.3.23.(金)

 重症心身障害児(者)の気管カニューレが事故抜去した際、直ちに医師の治療・指示を受けることができず、生命の維持のために「看護師・准看護師が緊急的に気管カニューレを再挿入する」場合には、「臨時の手当て」として違法ではない。もっとも、再挿入した旨を、可及的速やかに医師に報告しなければならない―。

 厚生労働省は3月16日に、通知「気管カニューレの事故抜去等の緊急時における気管カニューレの再挿入について」を発出し、こうした点を明確にしました。

「特定行為研修」制度を誤解釈し、児の生命が危機にさらされる事態も発生

 閉塞性呼吸障害や誤嚥、気道感染症が頻発する重症心身障害児(者)などでは、呼吸確保のために気管切開が行われることがあります。切開手術後には、管(気管カニューレ)を切開部から挿入し、▼気道の確保▼出血や分泌物の吸引—などを行います。

この気管カニューレの交換は「医療行為」であり、専門研修(特定行為研修)を受けた看護師が医師の包括的な指示の下で実施できる「特定行為」に含まれています(特定行為に関する厚労省のサイトはこちら)(関連記事はこちらこちらこちら)。

ところで、この「特定行為研修」制度を誤って拡大解釈し、一部の医療施設において、重症心身障害児(者)の気管カニューレが事故抜去した際、近くに看護師がいるにもかかわらず、「私は特定行為研修を受けていないので対応(再挿入)できない」と誤判断してしまい、当該児が生命の危機に瀕する事例が生じていると言います。

 小児科学会等では、「特定行為研修(特定行為に係る看護師の研修制度)を誤って拡大解釈し、『緊急時であっても医師の指示がない行為はできない』という誤解がある。重症心身障害児(者)の気管カニューレ事故抜去は容易に起こりうる。そうした緊急時に周囲の看護師が適切な対応をとれないような指示を出すべきではない」と指摘するとともに、厚労省に対して解釈の明確化を求めていました(関連記事はこちら)。

 
 今般、厚労省はこれに対し「福祉、教育、保育等のあらゆる場面において子供の気管カニューレが事故抜去し、生命が危険な状態等のため、緊急に気管カニューレを再挿入する場合であって、直ちに医師の治療・指示を受けることが困難な場合において、看護師・准看護師が臨時応急の手当てとして気管カニューレを再挿入する行為は、保健師助産師看護師法第37条但し書きの規定により、違法とはならない」ことを明確にしました。

 保健師助産師看護師法第37条では、保健師、助産師、看護師、准看護師は、主治医師・歯科医師の指示があった場合を除いて、▼診療機械の使用▼医薬品の授与▼医薬品についての指示—その他「医師・歯科医師でなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為」をしてはならないと、規定(看護師等による医行為の禁止)。ただし同条では、▼臨時応急の手当▼助産師業務の当然に付随する行為(臍の緒切断、浣腸など)—については、「この限りではない」、つまり「看護師等が実施してよい」ことも明らかにしています。

上記のような生命維持のために必要な気管カニューレ再挿入は、法第37条但し書きの「臨時応急の手当て」に含まれ、違法とならないことが明確にされたものです。

もっとも、気管カニューレ再挿入は医行為であり、衛生上危害を生ずる恐れがあるため、「実施した場合には、可及的速やかに医師に報告する」ことが必要な旨も明確にされました。

 
医療現場はもちろん、重症心身障害児(者)を処遇する施設等の関係者(看護師・准看護師に限らず)は、今般の「解釈の明確化」を十分に踏まえる必要があります。

 
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