平成30年7月豪雨の被災者、10月まで一部負担なしで医療機関等の受診認める―厚労省
2018.7.19.(木)
西日本を中心に猛威を振るった平成30年7月豪雨の被災者においては、今年(2018年)10月まで一部負担金なしに医療機関等を受診することを可能とする―。
厚生労働省は7月12日以降、こうした内容の事務連絡「平成30年7月豪雨による被災者に係る一部負担金等の取扱いについて」を行い、順次、対象保険者の拡大等を行っています(厚労省のサイトはこちら)(関連記事はこちらとこちら)。
住居が全半壊、主たる生計維持者が死亡するなどした被災者が、一部負担金猶予の対象
我が国の公的医療保険制度では、医療保険の利用者(つまり患者)が医療費の一部を負担する仕組みとなっており(窓口負担や一部負担などと呼ばれる)、現在、年齢や所得に応じて一部負担の割合は1-3割に設定されています。これは、応益負担(受益者が費用の一部を負担する)、コスト意識(医療には多額の費用がかかっている)の喚起などを目的としたもので、通常、一部負担を減免することは認められません。不適切な減免によって受診者が増えれば、医療費の高騰を招き、それは国民全体の負担増に跳ね返ってしまうからです。
しかし、大災害が起きた場合には、被災者に配慮し、保険者(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)が一部負担を減免することが認められています(健康保険法第75条の2など)。
厚労省は、今般の平成30年7月豪雨による被害の甚大さに鑑み、保険者に「被災者の一部負担金の猶予」を要請。保険者側もこれを快く受け入れ、今年(2018年)10月まで一部負担金が猶予されることになったものです。
猶予の対象者は、次のいずれかに該当する被災者で、医療機関等の窓口でその旨(次のいずれに該当しているか)を申告すれば一部負担金が猶予されます。ただし、患者の多くはこうした猶予措置の存在を知らないため、医療機関等では「患者向けリーフレット」を院内掲示・窓口に備え置くなどして周知を図ることも重要です。
▽住家の全半壊、全半焼、床上浸水、またはこれに準ずる被災を負った
▽主たる生計維持者が死亡し、または重篤な傷病を負った
▽主たる生計維持者の行方が不明である
▽主たる生計維持者が事業を廃止し、または休止した
▽主たる生計維持者が失職し、現在収入がない
一部負担を減免している保険者(都道府県、健保組合、協会けんぽなど)の一覧は厚生労働省のホームページで確認できます。なお対象保険者は順次、拡大されています。
なお、猶予された一部負担金については保険者が負担します(つまり加入者全体で負担)。このため、無料だからといって不適切に医療機関に過度にかかることは許されません。医療機関等は、審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会)に10割の請求を行うことになります。
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