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病院の人材確保・育成費用、厳しい経営環境の中で「医業費用の1.52%」と大きなシェア占める―日病

2019.2.28.(木)

 医療の質向上のためには、「医療人材の確保・研修」に係るコストを投下する必要がある。日本病院会の会員病院を対象に行った調査では、病院の医業費用の「1.52%」を研究費、研修費、福利厚生費、諸会費、寄付金に充てていることが分かった。病院経営が厳しく、限られた財源しかない中で、比較的高額な費用を人材・確保に投下している現状が伺える―。

 2月26日の日本病院会・定例記者会見において、万代恭嗣副会長(JCHO東京山手メディカルセンター名誉院長)と医業税制委員会の安藤文英委員長(西福岡病院理事長)から、こういった状況が報告されました(日病のサイトはこちら)(関連記事はこちらこちら)。

2月26日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会・医業税制委員会の安藤文英委員長(西福岡病院理事長)

2月26日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会・医業税制委員会の安藤文英委員長(西福岡病院理事長)

 

費用の1.52%を人材確保・育成に投下することは、病院に大きな負荷

 医療の質向上は、すべての医療機関にとって永遠の命題と言え、その一環として「優秀な医療人材の確保」が極めて重要となります。このためには相応のコストが必要ですが、病院経営が厳しさを増す中では、このコスト捻出にも大きな苦労を伴います。

 こうした背景を受けて日病では、会員病院を対象に「医療人材確保と育成に係る費用」に関する調査を実施。321施設から有効回答が得られました(有効回答率は12.9%)。

回答病院の内訳を見ると、我が国の病院全体とは大きく異なる構成(▼全体では公的等の割合が18.9%だが、今回調査では62.0%と公的等の割合が大きい▼全体では200床以上病院の割合が小さい(31.5%)が、今回調査では74.1%と大きい―など)となったため、結果分析に当たっては「日本の病院の状況に近い姿」への補正が行われています。

補正を行ったうえで、321病院の「100床当たり医業収入」合計を見ると7296億7491万円。対して「100床当たり医業費用」合計は、7555億8188万円で、収支差額はマイナス259億円余り(マイナス3.43%)の赤字となっています。先頃発表された日病・全日本病院協会・日本医療法人協会合同の「2018年度 病院経営定期調査」では、病院の医業損益はマイナス6.46%となっており、安藤委員長は「近しい数字である」とし、今般の調査結果の信頼性を強調しています(関連記事はこちら)。

さらに日病では、「医療人材確保と育成に係る費用」として▼研究費▼研修費▼福利厚生費▼諸会費(学会費用など)▼寄付金―に着目。これら費用の合計は114億5116万円で、あり「100床当たり医業費用」の1.52%を占めています。

医業税制委員会では、この「1.52%」という数字について「ほとんどの病院の収支差額がマイナス(赤字)である中、全費用の1.52%をこの領域に充当するのは経営上、大変な負荷である」とし、病院が多大な努力をしている現状を強調するとともに、人材確保・育成に向けたさらなる支援の必要性(助成など)を訴えています。なお、現在の各種助成(地域医療介護総合確保基金や人材開発支援助成金など)については、交付を受けている病院が少なく、ハードル(交付要件)の高さが妥当かどうかも検証していく必要がありそうです。

認定看護師の資格取得研修中も、7割超の病院が給与・賞与を全額支給

次に、人材確保・育成に関する費用の中身を少し見てみると、▼95.3%の病院が雑誌、書籍等の購読料を負担している▼90.3%の病院が各種学会年会費を負担している▼98.1%の病院が各種学会等参加費を負担している▼97.5%の病院が各種学会等旅費を負担している▼64.2%の病院が研究経費を負担している▼94.1%の病院が内部研修会・勉強会の費用を負担している▼95.0%の病院が外部研修会・勉強会の費用を負担している―ことが分かりました。また8割程度の病院が住宅費等の補助を行う一方で、従業員の慰安や懇親会等の費用については、補助を行っている病院は4割程度にとどまっており、内容に応じた傾斜を付けていることも分かります。

 
さらに、外部研修・技術習得への支援状況について「認定看護師」「専門看護師」を例にとって見てみましょう。

まず認定看護師については、321医療機関中、272医療機関・84.7%に総数2951人が配置されています。認定されるためには、一定期間(6か月以上)、日本看護協会の所定プログラムを受講する必要などがあります。つまり病院を離れることとなりますが、▼75.7%の病院では、その期間中「研修扱い」(33.0%)または「出張扱い」(42.7%)とする▼期間中の給与・賞与について、71.0%の病院では「全額支給」する▼受講費用(入学金、受講料、旅費など)について、60.1%の病院が「公費として全額・一部負担」をし、9.3%の病院が「奨学金として助成」をし、4.7%の病院が「補助金として助成」をする―など、さまざまな形でバックアップをしています。なお、認定資格取得のために「退職」を求める病院はありませんでした。医業税制委員会では、優秀な看護師確保とともに診療報酬の獲得に向けて多くの病院が努力していると見ています。

また専門看護師については、321医療機関中、117医療機関・36.4%に総数288人が配置されています。やはり資格取得のための研修受講などに対し病院のバックアップが一定程度ありますが、認定看護師に比べて履修期間が長い(2年)ため、▼期間中「研修扱い」(11.8%)または「出張扱い」(15.0%)とする病院は28.3%にとどまる▼期間中の給与・賞与を「全額支給」する病院は27.7%で、給与等の支払いを「なし」とする病院も12.1%ある―状況です。ただし、受講費用(入学金、受講料、旅費など)については、回答のあった病院(152%)のうち3分の2で何らかの支援(公費として病院負担:78病院、奨学金で助成:14病院、補助金で助成:3病院)が行われています。

なお、「特定行為研修を修了した看護師」については、まだ若い制度(2015年10月からスタート)であるため、配置は56病院・17.4%にとどまり、費用助成などを行っている病院も少数派にとどまっています。

 
また、人材確保・育成全般に関する病院の考え方を見ると、▼45.8%が「人材の過不足で病院経営が阻害されている」と感じている▼31.8%が「自院のみでの人材育成に限界があると感じている▼人材育成ツールとしては、「院内研修」「育成プログラム実施」「院外セミナー」などが多く用いられている▼42.1%がグループ病院、39.3%が外部病院、20.2%が教育専門機関に人材育成への連携を求めている▼離職防止策としては「医師事務作業補助者や看護補助者の配置」(88.5%)、「子育て・介護中の職員への配慮」(87.9%)、「メンタルヘルス対策、ハラスメント対策等」(72.6%)、「ワークライフバランスの確保に向けた風土づくり」(72.0%)、「多職種による役割分担等」(68.8%)などが多い―ことなどが明らかになりました。

なお、医業税制委員会では、公立病院等には補助金が投入されている状況を横目で見ながら、「人材の育成・確保において設立母体の違いによる差があってはならない。人材育成・確保に関するコストの補填は、診療報酬本体の中に組み込んでいくべき」旨も提言しています。今回の調査からは、「公立病院等と私的病院等との間で、人材育成・確保に投下する費用には明確な差はない」ようです。補助金等の投入に鑑みれば、「民間病院において人材の育成・確保により大きなコストを投下しなければならない(大きなコストを投下しなければ医療従事者が確保できない)」と見ることもでき、それが今般の提言につながっているものと推察されます。

 
 

 

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