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「細胞の健康状態や筋質」を評価する「PhA」によって、軽度認知障害(MCI)の鑑別を簡易に行える可能性—長寿医療研究センター

2025.6.10.(火)

「細胞の健康状態や筋質」を評価する「PhA」によって、軽度認知障害(MCI)の鑑別を簡易に行える可能性がある。これにより、MCIの早期発見(鑑別)→適切なケア(認知症予防)につなげることができる—。

国立長寿医療研究センターがこのほど、こういった研究結果を示しました(センターのサイトはこちら)。

PhAには、サルコペニアとともにMCIを鑑別する指標となる可能性あり

簡便にMCI(軽度認知障害)・サルコペニアを鑑別できる可能性

認知症患者数は、高齢化の進行に伴って増加していきます。2018年には500万人を超え、65歳以上高齢者の「7人に1人が認知症」となり、2025年には675万人、2040年には802万人になると推計されています。

このため、2019年には認知症施策推進大綱が、2023年には認知症基本法が制定(2024年1月施行)され、認知症患者の意向を十分に踏まえた総合的な対策(認知症との共生、認知症予防など)を進めることとされています。

認知症高齢者数の推移(介護保険部会3 220516)



認知症はもちろん、その一歩手前とも言える「軽度認知障害」(MCI)については、「早期の発見→鑑別→早期の適切なケア」が極めて重要です。とりわけMCIは、放置すると認知症に進行することが多いですが、適切な予防によって健常な状態に戻る可能性もあります(日本神経学会では、MCIから回復する人の割合は1年で16-41%、逆に認知症に進行する人の割合は同じく5-15%と推計、学会サイト(認知症疾患診療ガイドライン2017)はこちら)。

このため、認知症やMCIの早期発見に向けて「脳画像検査や脳脊髄液・血液バイオマーカー」、「問診・観察を中心とした神経心理学的検査」の研究・開発などが進んでおり、「手指の巧緻運動(指タッピング運動)の状況から、高い精度で健常高齢者とMCI者を区別する」手法の開発にも注目が集まっています(関連記事はこちら)。



そうした中で長寿医療研究センターの研究グループは、中高年のサルコペニア・軽度認知障害(MCI)の早期判別に「Phase Angle」(PhA:フェーズアングル、位相各)による「筋質評価」が有用であることを明らかにしました。

PhA(生体インピーダンス法(BIA法)による身体組成分析で得られる生体指標の1つ)は、細胞膜で発生する電気抵抗を角度で表現することにより「細胞の健康状態や筋質」を反映するもので、これまでに「高値の場合はサルコペニアのリスクが低く、低値になるとそのリスクが上昇する」という具合に、新たなサルコペニア指標として注目されています。さらに今般の研究で、このPhAが「軽度認知障害の指標」にもなる可能性が見出されました。

研究では、京都府の武田病院健診センターを受診した40歳以上の中高年者263名(男性163名、女性100名)について、5種類の骨格筋評価指標(以下、(1)―(3))と認知機能(MoCA-J)との関連解析を実施しました。
(1)筋量指標:四肢骨格筋量指数(SMI=四肢筋量(ASM)÷身長の2乗、ASM/BMI)
(2)筋力指標:握力、握力/上肢骨格筋量
(3)筋質指標:PhA

その結果、「女性では、年齢にかかわらず、『PhAが高い(筋質が良い)』ほど『MCIの可能性が低い』」ことが示されました。ここからPhAが「MCIを早い段階で見つけたり、将来の発症を予測したりするための指標」となる可能性が伺えます。

女性では、サルコペニア関連指標PhAと、MCIとの相手に正の相関がある



さらに、「PhA」と次の6つの「認知機能下位項目」との関係を分析。
(a)記憶
(b)言語
(c)遂行機能
(d)注意
(e)視空間認知
(f)見当識

そこからは次のような結果が得られました。

▽女性では、記憶、言語、遂行機能、注意の4項目で、PhAと正の相関が認められる

▽男性では、記憶について、PhAと正の相関が認められる

ここから、男女ともに「筋質評価・PhA」が、「記憶」(とりわけ認知機能低下の初期に「記憶機能が低下」する)と関連することが示され、研究グループでは「PhAによる筋質の低下」から「認知機能低下の初期症状を捉えることができる」可能性があると見ています。

男女とも、サルコペニア関連指標PhAと、記憶低下との間に相関がある



本研究から「筋質評価・PhA」が、超高齢社会である我が国で増加している「サルコペニア」・「認知症」との関連性があることが明らかとなり、今後、「サルコペニア・認知症の予防戦略、早期診断法の開発」などにつながると期待されます。



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