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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

2018年、日本人口は44万超の減少、「老衰」が死因第3位に浮上―厚労省

2019.6.10.(月)

 2018年、出生数と死亡数の差である「自然増減数」はマイナス44万4085人で、人口減少ペースはさらに加速している。死因をみると第1位のがん、第2位の心疾患に変わりはないが、脳血管疾患を抑えて、第3位に「老衰」が浮上している―。

 このような状況が、6月7日に厚生労働省が公表した2018年の「人口動態統計月報年計(概数)の概況)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(前年の記事はこちら)。
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2017年から18年にかけて日本国民は44万人超の減少、減少スピードアップ

 人口動態統計は、少子化対策など厚生労働行政の施策立案のための基礎資料を得ることを目的に、▼出生▼死亡▼婚姻▼離婚▼死産—の5つの事象を把握するものです。少子化の進行は、「社会保障財源の支え手」はもちろん、「医療・介護サービスの担い手」が足らなくなることを意味します。さらに社会保障制度にとどまらず、我が国の存立をも脅かします(関連記事はこちら)。

 2018年の状況を見ると、出生数は91万8397人で、前年に比べて2万7668人の減少。出生率(人口1000対)は7.4で、前年から0.2ポイント低下しています。
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 一方、死亡数は136万2482人で、前年に比べて2万2085人の増加。死亡率(人口1000対)は11.0で、前年から0.2ポイント上昇しています。
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 出生数と死亡数の差である「自然増減数」を見ると、マイナス44万4085人で、前年に比べて4万9753人の減少ペース加速となっています。自然増減率(人口1000対)はマイナス3.6で、前年から0.4ポイント低下しています。自然減数・自然減率ともに12年連続の減少かつ低下となっており、我が国の「人口減少」にはますます拍車がかかっていることが分かります。

 さらに、「1人の女性が一生の間に生む子供の数」に相当する合計特殊出生率を見ると、2018年は1.42で、前年から0.01ポイントの低下となりました。2015年に上昇しましたが、「一時的な現象」にとどまったことが再確認できます。

 都道府県別に合計特殊出生率を見ると、最も高いのは沖縄県で1.89(前年に比べて0.05ポイント低下)、次いで島根県の1.74(同0.02ポイント上昇)宮崎県の1.72(同0.01ポイント低下)、鹿児島県の1.70(同0.01ポイント上昇)などで高くなっています。逆に低いのは東京都の1.20(同0.01ポイント低下)、北海道の1.27(同0.02ポイント低下)、京都府の1.29(同0.02ポイント低下)などで、依然として「西高東低」の傾向が続いています。

 
 国家が存立するためには▼領土▼国民▼統治機構―の3要素が不可欠ですが、人口減少は、「国民」の要素が失われつつあること、つまり日本国が消滅に向かっていることを意味します。社会保障制度はもちろんのこと、我が国の存立基盤が極めて脆くなってきていると言えます。

3.6人に1人ががんで死亡、「老衰」が死因第3位に

 次に死因別の死亡数を見ると、第1位は悪性新生物(腫瘍)で37万3547人(人口10万対の死亡率は300.7で、前年に比べて1.3ポイント増加)、第2位は心疾患(高血圧性を除く)で20万8210人(同167.6で、同じく3.8ポイント増加)、第3位は老衰で10万9606人(同88.2で、同じく6.5ポイント増加)、第4位は脳血管疾患で10万8165人(同87.1で、同じく1.0ポイント増加)第5位は肺炎で9万4654人(同76.2で、同じく1.5ポイント低下)となっています。

 第1位の悪性新生物は、2018年の全死亡者に占める割合が27.4%(前年度に比べて0.4ポイント低下)で、日本人の3.6人に1人が「がんで死亡している」計算です。

 2016年までは「肺炎」が第3位でしたが、2017年には「脳血管疾患」が第3位、「老衰」が第4位となり、2018年には「老衰」と「脳血管疾患」の順位が逆転しました。ここからは、医療・医学等の水準が高まったことが強く伺えます。
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 今後、高齢化がますます進行し、また医療・医学等の水準が上がることに鑑みれば、「老衰」が、我が国の3大死因の1つになっていくと考えられそうです。そこでは、「自宅」や「介護施設」での看取りが極めて重要なテーマとなります。介護施設や在宅医療・介護の従事者が「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を十分に認識し、さらに我々国民自身が「自分の人生の最終段階において、どのような医療・介護を受けたいか、逆に受けたくないか」を家族や親しい友人らと話し合っておく環境・風土の醸成などを進めていくことが求められるでしょう(いわゆるACPの推進、関連記事はこちら)。

 
 なお主な死因の構成割合は、年齢・性によって相当異なります。

例えば、男女ともに5-9歳では「悪性新生物」「不慮の事故」、10-14歳では「悪性新生物」「自殺」が多く、男性は15-34歳では「自殺」「不慮の事故」、45歳以降では「悪性新生物」「心疾患」が、女性は15-24歳では「自殺」「不慮の事故」、25-54歳では「悪性新生物」「自殺」が多くなっています。

年齢が上がるにつれ「悪性新生物」の占める割合が高くなりますが、男性では65-69歳、女性では55-59歳でピークを迎えます(前年と同じ傾向)。つまり、70歳以上の高齢者では「がんによって死亡する割合」が低くなっていくため、「高齢者の特性を踏まえたがん対策」の重要性が伺えます。例えば、「副作用の強い抗がん剤の使用をどう考えるか」、「根治を目指すのではなく、QOLの維持・改善を主目的とした治療プログラムを組むべきではないか」といった議論を継続していく必要があります。
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 さらに、主な部位別に悪性新生物の死亡率を見ると、男性では「肺」が圧倒的に高く(1993年以降第1位)、2018年の死亡数は5万2400人、死亡率は86.7(前年から0.6ポイント低下)となりました。第2位の「胃」がん(2万8841人、47.7(前値度から2.7ポイント低下)、第3位の「大腸」がん(2万7098人、44.8(同0.2ポイント低下))と比べると、肺がんによる死亡の多さが分かります。女性では、男性ほどの偏りはなく、第1位は「大腸」がん(2万3558人、36.9(同0.4ポイント上昇))、第2位は「肺」がん(2万1922人、34.4(同1.4ポイント上昇))、第3位は「膵臓」がん(1万7450人、27.4(同1.1ポイント上昇))となりました。
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 なお男性では「膵」がんの死亡率が増加する一方、「肺」「大腸」がんなどの死亡率は減少。これに対し女性では「大腸」「肺」「乳」「子宮」「膵臓」がんでの死亡率が上昇傾向にあり、男女差を詳しく分析していく必要があるでしょう。

 

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