Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
診療報酬改定セミナー2024 能登半島地震 災害でも医療は止めない!けいじゅヘルスケアシステム

2040年に向けた社会保障改革、19年夏には厚労省が健康寿命延伸や医療・福祉サービス改革プラン策定―社保審

2019.2.8.(金)

 少子高齢化が深刻化する2040年に向けて、持続可能な社会保障制度の構築が求められる。厚労省では社会保障制度改革に向けて今夏(2019年夏)にも健康寿命延伸プランや医療・福祉サービス改革プランを策定するが、「市町村の優れた取り組みの活用」「社会保障教育」なども検討していく必要がある。また、経済的に困窮する単身高齢者が増加することも考えていくべきである―。

 2月1日に開催された社会保障審議会で、こうした議論が行われました。

2月1日に開催された、「第28回 社会保障審議会」

2月1日に開催された、「第28回 社会保障審議会」

 

2025年から2040年にかけて、社会保障支える現役世代が急速に減少

 社会保障審議会は、我が国の社会保障制度を総合的な視点で議論する場です。医療保険や介護保険、年金制度、少子化対策などの個別社会保障制度に関する議論は下部組織である部会等で詳細に検討され、親組織である社会保障審議会では、これら制度全体のあるべき姿などを、より高所大所から検討します。

 2月1日の会合では、2040年に向けた社会保障改革に向けた議論を行いました。2025年度には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となることから、今後、医療・介護ニーズが急速に増加していきます。その後、2040年にかけて、高齢化のスピードは鈍化するものの、社会保障の支え手となる現役世代人口が急速に減少していくことが分かっています。減少する若人(現役世代)で、増加する高齢者を支えなければならず、社会保障制度の基盤は極めて脆くなっていきます。

 また、費用面だけでなく、医療・介護サービスを提供する人材(マンパワー)確保も困難となるため、質の高いサービスを、いかに効率的に提供していくかも重要論点の1つとなります。厚生労働省の推計では、2040年度に医療・福祉等人材は現状ベースで1065万人必要となります。一方で、労働力需要・労働力供給を勘案した「医療・福祉」の就業者数は2040年度に974万人にとどまる見込みで、ICTやロボットの活用、いわゆる「元気高齢者」の活用などによって生産性を向上していくことが求められています。
社会保障審議会1 190201
 
 こうした状況を踏まえ、厚労省は(1)多様な就労・社会参加(2)健康寿命の延伸(3)医療・福祉サービス改革(4)給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保―の4本を柱とする社会保障制度改革に向けた検討を、根本匠厚生労働大臣を本部長とする「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」で進めています。

 このうち(2)の「健康寿命の延伸」に関しては、▼次世代を含めたすべての人の健やかな生活習慣形成等▼疾病予防・重症化予防▼介護予防・フレイル対策、認知症予防―を重点分野とした「健康寿命延伸プラン」が今夏(2019年夏)に策定されます。あわせて、今通常国会には、高齢者の保健事業と介護予防事業を、国・都道府県のサポートの下で、市町村が一体的に実施することを可能とする健康保険法等改正案が提出されます(関連記事はこちら)。
社会保障審議会2 190201
 
 また(3)の「医療・福祉サービス改革」では、▼ロボット、AI、ICT等の実用化推進、データヘルス改革▼組織マネジメント改革(例えば、医療機関の経営管理等を担う人材育成、現場の効率化を促す報酬制度(実績評価の導入))▼タスクシフティングを担う人材、シニア人材の活用推進▼経営の大規模化・協働化(例えば、医療法人・社会福祉法人それぞれの経営統合、運営共同化、医療法人と社会福祉法人の連携方策の検討)―などを進めるための「医療・福祉サービス改革プラン」を今夏(2019年夏)に策定することになります。
社会保障審議会3 190201
 
また、前述した健保法等改正案では、NDB(National Data Base:医療レセプトと特定健康診査のデータを格納)と介護DB(介護保険総合データベース:介護レセプトと要介護認定情報を格納)の連結を含めた、利活用促進策も盛り込まれます(関連記事はこちら)。

 
こうした社会保障改革の検討に向けては、住民に最も身近な行政である市町村の役割が大きくなってきます。荒木泰臣委員(全国町村会長、熊本県嘉島町長)は「自治体では、少子化に直面して、出産子育て支援や健康づくり、高齢者の活躍の場の設置など、実情に応じた努力をすでに進めている。こうした現場の取り組みを活かす視点も重視してほしい」と要望しています。市町村の地理的状況やマンパワー、住民構成などは区々であり、それぞれで工夫がなされています。厚労省では、先進事例・好事例を周知することなども含めて、都道府県と一体的に市町村を強力にサポートしていく考えです。

 また医療・介護においては、働き方改革も手伝って、より効率的・効果的なサービス提供が求められすが、患者や住民の「サービスの利用の仕方」の見直しも極めて重要です。例えば、救急車をタクシー代わりに利用したり、「待ち時間が短い」といった理由で夜間外来を受診したりすれば、医療従事者等の負担は一向に減りません。この点について今村聡委員(日本医師会副会長)は「国民1人1人が社会保障を自分事として考える必要がある。そのためには基本的知識が不可欠であり、義務教育過程において、社会保障に関する実践教育を実施してほしい」と強く要望しています。

一方、厚労省の将来見通しに対し、駒村康平委員(慶應義塾大学経済学部教授)や宮本みち子委員(放送大学名誉教授・千葉大学名誉教授)らは、「いわゆる団塊ジュニア世代(1971-74年生まれ)が高齢者に入る際には、団塊の世代(1947-49年生まれ)が後期高齢者に入る際とは、質の異なる問題が生じる。団塊ジュニアでは経済的に困窮しており、単身であるという方も少なくなく、社会保障費は推計を大きく上回ることも考えられる。また、人材確保については、就業者人口そのものが減少することから、より魅力的な業務となるような、さらなる賃金水準アップなども検討しなければないのではないか」といった旨をコメント。継続的な推計見直しと、迅速な対応が必要と強調しています。

 さらに、人材確保に関して楠岡英雄委員(国立病院機構理事長)は、「処遇改善だけでは人材は集まらない。医療介護業務の働き甲斐などを、どう理解してもらうかが重要である」と指摘しました。

 
 なお、社会保障審議会委員は任期(2年)満了に伴って変更されており、新会長に遠藤久夫氏(国立社会保障・人口問題研究所所長、医療保険部会や介護保険部会の部会長も務める)、会長代理に増田寛也氏(東京大学公共政策大学院客員教授、年金事業管理部会の部会長も務める)が就任しています。

【更新履歴】遠藤会長のお名前を誤って記載しておりました。大変失礼いたしました。お詫びして訂正いたします。記事は訂正済です。

 
 
 
診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

 

【関連記事】

オンライン資格確認や支払基金支部廃止などを盛り込んだ健保法等改正案―医療保険部会
被保険者証に個人単位番号を付記し、2021年からオンラインでの医療保険資格確認を実施―医療保険部会
国民健康保険、より高所得者な人に負担増を求めるべきか―医療保険部会
超高額薬剤等の保険収載、薬価制度だけでなく税制等も含め幅広い対応を―社保審・医療保険部会
NDB・介護DBを連結し利活用を拡大する方針を了承、2019年の法改正目指す―社保審・医療保険部会(2)
健康寿命延伸に向け、「高齢者の保健事業」と「介護予防」を一体的に実施・推進―社保審・医療保険部会(1)
2020年度中に、医療保険のオンライン資格確認を本格運用開始―社保審・医療保険部会
地域別診療報酬には慎重論、後期高齢者の自己負担2割への引き上げも検討—医療保険部会

骨太方針2018を閣議決定、公的・公立病院の再編統合、病床のダウンサイジング進めよ
2019-21年度、社会保障費は「高齢化による増加」のみ認める、公立病院等の再編進めよ―経済財政諮問会議
団塊の世代が後期高齢者となりはじめる2022年度までに社会保障改革を実行せよ―経済財政諮問会議
健康寿命延伸・ICT活用、2040年度に必要な医療・介護人材は935万人に圧縮可能―経済財政諮問会議
今後3年で社会保障改革が必要、元気高齢者活用やAIケアプラン等に取り組め―経済財政諮問会議

「健康寿命の増加>平均寿命の増加」目指し、健康・医療・介護データの利活用等を推進―未来投資会議

75歳以上の後期高齢者の医療費自己負担、段階的に2割に引き上げよ―財政審
軽微な傷病での医療機関受診では、特別の定額負担を徴収してはどうか―財政審

骨太方針2018、「後期高齢者の自己負担2割への引き上げ」は後退―健保連

病床過剰地域で「ダウンサイジング」が進むよう、効果的な方策を検討せよ―経済財政諮問会議
少額外来での受診時定額負担、民間医療機関への機能転換命令権など改めて提唱―財政審

NDB・介護DBの連結方針固まる、「公益目的研究」に限定の上、将来は民間にもデータ提供―厚労省・医療介護データ有識者会議
NDB・介護DBの連結運用に向け、審査の効率化、利用者支援充実などの方向固まる―厚労省・医療介護データ有識者会議
NDB・介護DBの連結、セキュリティ確保や高速化なども重要課題―厚労省・医療介護データ有識者会議
NDB・介護DBからデータ提供、セキュリティ確保した上でより効率的に―厚労省・医療介護データ有識者会議
NDB・介護DBの利活用を促進、両者の連結解析も可能とする枠組みを―厚労省・医療介護データ有識者会議
NDB・介護DB連結、利活用促進のためデータベース改善やサポート充実等を検討—厚労省・医療介護データ有識者会議

市町村が▼後期高齢者の保健事業▼介護の地域支援事業▼国保の保健事業—を一体的に実施―保健事業・介護予防一体的実施有識者会議
高齢者の保健事業と介護予防の一体化、「無関心層」へのアプローチが重要課題―保健事業・介護予防一体的実施有識者会議
高齢者の保健事業と介護予防の一体化に向け、法制度・実務面の議論スタート―保健事業・介護予防一体的実施有識者会議

2019年度予算案を閣議決定、医師働き方改革・地域医療構想・電子カルテ標準化などの経費を計上
異なるベンダー間の電子カルテデータ連結システムなどの導入経費を補助―厚労省・財務省

オンライン服薬指導の解禁、支払基金改革、患者申出療養の活性化を断行せよ―規制改革推進会議
審査支払機関改革やデータヘルス改革の実現に向け、データヘルス改革推進本部の体制強化―塩崎厚労相
レセプト請求前に医療機関でエラーをチェックするシステム、2020年度から導入—厚労省
混合介護のルール明確化、支払基金のレセプト審査一元化・支部の集約化を進めよ—規制改革会議
支払基金の支部を全都道府県に置く必要性は乏しい、集約化・統合化の検討進めよ—規制改革会議
審査支払改革で報告書まとまるが、支払基金の組織体制で禍根残る―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
支払基金の都道府県支部、ICT進展する中で存在に疑問の声も―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
レセプト審査、ルールを統一して中央本部や地域ブロック単位に集約化していくべきか―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
支払基金の組織・体制、ICTやネット環境が発達した現代における合理性を問うべき―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
診療報酬の審査基準を公開、医療機関自らレセプト請求前にコンピュータチェックを―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
都道府県の支払基金と国保連、審査基準を統一し共同審査を実施すべき―質の高い医療実現に向けた有識者検討会で構成員が提案
レセプト審査基準の地域差など、具体的事例を基にした議論が必要―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
支払基金の改革案に批判続出、「審査支払い能力に問題」の声も―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
診療報酬審査ルールの全国統一、審査支払機関の在り方などをゼロベースで検討開始―厚労省が検討会設置
診療報酬の審査を抜本見直し、医師主導の全国統一ルールや、民間活用なども視野に―規制改革会議WG
ゲムシタビン塩酸塩の適応外使用を保険上容認-「転移ある精巣がん」などに、支払基金
医療費適正化対策は不十分、レセプト点検の充実や適正な指導・監査を実施せよ―会計検査院
レセプト病名は不適切、禁忌の薬剤投与に留意―近畿厚生局が個別指導事例を公表
16年度診療報酬改定に向け「湿布薬の保険給付上限」などを検討―健康・医療WG
団塊ジュニアが65歳となる35年を見据え、「医療の価値」を高める―厚労省、保健医療2035