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中山間地・人口減少地域/大都市/一般市のそれぞれで、福祉サービスをどう確保していくかも重要論点—厚労省検討会

2025.5.12.(月)

高齢者向けの介護サービスと同様に、障害者福祉・児童福祉サービスについても、▼中山間地・人口減少地域▼大都市▼一般市—のそれぞれの特性を踏まえて、人材を含めた「サービス確保策」を検討していく必要がある—。

5月9日に開催された「『2040年に向けたサービス提供体制等のあり方』検討会」(以下、検討会)で、こういった議論が始まりました。検討会では、すでに高齢者向けサービス確保に関する中間とりまとめを行っており、さらに障害福祉や児童施策などの議論を深め、今夏(2025年夏)に最終とりまとめを行います。

●中間とりまとめこちら

5月9日に開催された「第6回 『2040年に向けたサービス提供体制等のあり方』検討会」

中山間地域等、大都市、一般市のそれぞれで「福祉サービス提供体制確保」策を検討

今年度(2025年度)までに、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達します。その後、2040年頃にかけて、高齢者人口そのものは大きく増えないものの(高止まりしたまま)、▼85歳以上高齢者の比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、医療・介護の複合ニーズを持つ高齢者、認知症高齢者などの比率が高まっていく)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療・介護提供体制」の構築がますます重要になってきます。

また、こうした人口構造の変化は地域によって大きく異なります。中山間地域などでは「高齢者も、若者も減少していく」、大都市では「高齢者も、若者もますます増加していく」、さらに一般市では「高齢者が今後増加するが、そう遠くない将来に減少していく」など区々です。

検討会では、こうした状況下でも介護サービス等を確保可能とする方策を議論。高齢者向けサービス(主に介護サービス)確保に関する中間とりまとめを行っており、例えば次のように地域別の対策が必要との提案がなされました(関連記事はこちら)。

(1)中山間・人口減少地域
▽「人口減→サービス需要減」となる中で、様々なサービスを組み合わせて維持・確保できるように、次のような対策を検討する
▼地域のニーズに応じた柔軟な対応
・配置基準等の弾力化(地域の中核的なサービス提供主体に対して、「地域に残り続け、他の介護事業者との協働化・連携によってサービスを維持・確保していく」などの条件を付したうえで、人員配置基準等の弾力化やインセンティブ付与などの新たな柔軟化の枠組みを検討する)
・包括的な評価の仕組み(現在の訪問サービス等は「回数」を単位として評価するため、利用者の事情でのキャンセルや利用者宅間の移動に係る負担が大きいため、介護保険全体の報酬体系との整合性や自己負担の公平性等にも配慮しながら「包括的な評価の仕組み」を検討する)。
・訪問・通所などサービス間の連携・柔軟化
・市町村事業によるサービス提供などの検討
▼地域の介護機能の維持等のため、地域の介護を支える法人等への支援
▼社会福祉連携推進法人の活用促進

(2)大都市部
▽大都市に集団就職した団塊世代が後期高齢者となるため「介護需要の急増」が生じることから、例えば次ような対応によってサービス基盤を整備する
▼公と民の多様なサービス提供を進める
▼ICTやAI技術などの民間活力を活用したサービス基盤の整備を進める
▼重度の要介護者や独居高齢者等に対応可能な、「ICT技術等を用いた24時間対応可能な効率的かつ包括的なサービス」の検討(定期巡回・随時対応型訪問介護看護でも「平時における夜間の訪問」ニーズは必ずしも高くなく、かえって利用者・サービス提供者双方の負担となっていることから、「ICTやAI技術を活用して24時間の見守りを行い、夜間は『緊急時』にのみ訪問対応する」ような新たなサービス構築を検討する)

(3)一般市等
▽サービス需要が「当面は増加する」ものの、「近い将来、減少する」中で、既存の介護資源等を有効活用しサービスを過不足なく確保する
▽将来の需要減少に備えた準備と柔軟な対応を可能とする



検討会では、さらに「障害者や児童向けのサービス確保」策に議論を広げ、今夏(2025年夏)の最終とりまとめを行います。その際、以下のような「高齢者向けサービス」でも「障害者や児童向けサービス」でも共通の課題となる事項を中心に議論していくことを確認しています。

【地域の状況に応じたサービス提供体制等の在り方】
▽共生型サービス、基準該当障害福祉サービスや多機能型、従たる事業所など「一定の要件の下で柔軟なサービス提供」が可能とされているが、中山間・人口減少地域で引き続き障害者が安心して地域生活を送ることができるように、必要に応じ「人員配置基準の弾力化」など、制度を拡張・見直していくことをどう考えるか

▽分野を超えた総合的な福祉サービスの推進に向けて、「共生型サービスの創設」や「高齢者、障害者、児童等に対して複数の福祉サービスを総合的に提供する上での人員・設備の兼務・共用等が運用上可能な事項についてガイドライン提示」などを行ってきており、「さらなる人員・設備の兼務・共用などの柔軟対応」や「自治体や事業所の取り組みの更なる推進」などをどう考えるか

▽▼中山間地域や離島を中心に子供が少ない地域▼就学前人口減少が今後加速度的に進んでいく地域▼都市部を中心として局地的に待機児童が発生しながら全体としては緩やかに就学前人口が減少していく地域—の各類型について、保育需要の変化に応じた施設・事業モデルやその支援体制をどのように構築するか

【既存施設の有効活用(社会福祉法人の財産処分等)】
▽例えば「介護施設取得の際に国庫補助がなされている」場合には、財産取得からの経過年数が10年までは、補助対象事業の継続を条件として、一部転用に限り、国庫返納が不要になっている(原則は短期間の他事業への転用の場合には、補助金を国庫に返納しなければならない)が、中山間・人口減少地域では、必要に応じて「一部転用に限らない取り扱い」を認めるなど、より柔軟な仕組みとすることをどう考えるか

【人材確保(プラットフォームの充実等)】
▽引き続き、処遇改善や職場環境改善、魅力発信などの人材確保・定着策を、他分野と連携しながら進めていく

▽「障害福祉分野として、より一層取り組むべき施策」について検討する

▽保育人材について、介護分野と同様に地域差や地域固有の課題が存在するため、地域分析を十分に行い、関係者間で情報を共有したうえで、地域の実情に応じた対策を講じていく

▽介護分野と同様に「人材確保に向けたプラットフォーム」を構築・運用していくことが重要である

【生産性向上(DX)・経営支援】
▽介護現場での取り組みを参考としつつ、「障害福祉現場の特性」「子供サービスの特性」を踏まえ、障害福祉・児童福祉現場における生産性向上の目指すべき姿や必要な取り組みを明らかにしていく



5月9日の会合では、構成員・参考人から▼「施設利用の柔軟化」(設備・施設・人材を多様なサービスに充てられる仕組み)が極めて重要になる(松原由美座長代理:早稲田大学人間科学学術院教授)▼看護小規模多機能型居宅介護(看多機)を、医療ニーズを抱える障害者向けサービスの拠点とすることなどを検討すべき(藤原都志子構成員;前徳島県看護協会看護小規模多機能型居宅介護あい管理者)▼障害者サービスの報酬について、現下の物価・人件費急騰に対応できるよう、高頻度に引き上げを行うことも検討すべき(大山知子構成員:社会福祉法人蓬愛会理事長)▼中山間地等では、小規模・多機能型にサービスを転換していく必要があり、自治体がリーダーシップをとって進めていく必要がある(永田雅子参考人:医療法人慈和会大口病院理事長)▼物価・人件費が急騰しており、報酬改定を高頻度で行ってほしい。働きに見合った給与水準を確保しなければ人材の確保・定着ができない(樋口幸雄参考人;社会福祉法人京都ライフサポート協会理事長)—など、多様な意見が出されました。今後、上記論点を中心に議論を深めていきます。

利用者の確保・サービス提供の確保が困難となる中山間地や人口減少地域では、1つの事業所・施設が「高齢者向けの介護サービスも障害者向けのサービスも実施する」といった取り組みが必要となり、例えば「施設・設備・人材の兼務」などをより柔軟に実施できる施策などの検討が進みそうです。

さらにこうした考えを進めていくと、現在「65歳以上の要介護高齢者、40-64歳の特定疾病(がんなど)を持つ要介護者」を対象とする介護保険について、「障害者等にも対象を広げる、「世代・原因を問わず、介護が必要な者を対象とする」仕組みに変革することの必要性・重要性などが浮上してくる可能性も否定できません。例えば2021年度の介護保険制度改革論議でもこうした議論が行われています(関連記事はこちら)。ただし、こうした制度見直しは「介護保険制度の根本を見直す」ものとなり、中長期的かつ総合的な視点を持ち、時間をかけて議論しなければならないことにも留意が必要です(「サービス確保」という視点だけで議論を進めることはできない)。



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