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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

NDB・介護DBを連結し利活用を拡大する方針を了承、2019年の法改正目指す―社保審・医療保険部会(2)

2018.7.20.(金)

 NDB(National Data Base:医療レセプトと特定健診に関するデータベース)と介護DB(介護保険総合データベース:介護レセプトと要介護認定に関するデータベース)の利活用を拡大し、さらに両データベースの連結を進めるために、根拠法となる高齢者医療確保法や介護保険法の改正を行うとともに、セキュリティ確保を含めた技術的な課題などの検討をさらに進める―。

 7月19日に開催された社会保障審議会・医療保険部会では、こういった方針についても了承されました。

7月19日に開催された、「第113回 社会保障審議会 医療保険部会」

7月19日に開催された、「第113回 社会保障審議会 医療保険部会」

 

NDB・介護DBの根拠規定見直し、公益目的研究へのデータ提供を推進

 メディ・ウォッチでもお伝えしているとおり、「患者がどのような疾病に罹患し、どういった医療提供を行ったか」といったデータを一元的に集約し、医療・介護等の質向上を目指す「全国保健医療情報ネットワーク」の2020年度本格稼働に向けて議論が進められています。その一環として、厚生労働省の「医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」(以下、有識者会議)では、まずNDBと介護DBの連結を含めた利活用の拡大に向けた議論を行っています。

有識者会議では7月12日に次のような方針を中間的にとりまとめ、今般、その内容が医療保険部会に報告されました(関連記事はこちらこちらこちら)。
▽データ収集・利用目的に関する法律の規定を整備する(現在、研究者等へのデータ提供は運用の中で行われているが、法律に明記するとともに、NDB、介護DBで利用目的等の規定が異なっているため、整理を行う)
▽研究者等へのデータ提供(第三者提供)の枠組みを制度化する(▼公益目的に限定▼個別審査の実施(研究目的やセキュリティ確保など)▼成果の公表▼不適切事案への対応―など)
▽実施体制(国とそれ以外の主体との役割分担など)、費用負担(利用者負担など)、技術的課題(匿名加工情報同士の連結やセキュリティ確保など)等について今後、さらに検討していく

 委員からは特段の反対意見などは出ておらず、今後、この方針に沿って有識者会議で詳細を詰めていくことになります。

もっとも菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)から、「例えば若手研究者ではデータの取扱い体制を十分に確保できず、データ利用が叶わないこともある。そこで公的なデータセンターなどを設置し、そこに研究者が出向いてデータ利活用を可能とするような支援策なども検討してほしい」との要望が出されています。

有識者会議でも、利用者支援策の重要性が指摘され、例えば「利用者の声を踏まえたサンプリングデータセット(個人属性などを排除し、予め国で範囲を絞ったデータ集)の充実」「分析に関する簡易マニュアルや事例集の整備」「データベースの基礎知識(どのようなデータがどのように格納されているのか)や解析時の留意点などに関する研修」などの支援策が具体的に提案されています。菅原委員の要望には、費用面などでハードルが高そうですが、有識者会議で検討の俎上に上がると考えられます。

医療保険部会の了承を受け(さらに近く開かれる社会保障審議会・介護保険部会の了承も待つ)、有識者会議は、今後、技術的課題や費用負担なども含めた詰めの議論を急ピッチで行います。今秋(2018年秋)には結論をまとめることとなり、医療保険部会・介護保険部会での改めての了承を踏まえて、来年(2019年)の通常国会に「高齢者医療確保法」「介護保険法」の改正案が上程される見込みです。

後期高齢者の窓口負担引き上げや、支払基金改革について舌戦始まる

 7月19日の医療保険部会では、先般、閣議決定された▼骨太方針2018(経済財政運営と改革の基本方針2018)▼未来投資戦略2018▼規制改革実施計画―のうち、医療保険制度に関係の深い項目が報告されました。

 例えば、▼2019-21年度(基盤強化期間)においても社会保障関係予算の増加を「高齢化による増加分」に抑える(高齢化を踏まえて毎年度設定)▼健康寿命を延伸し、平均寿命との差の縮小を目指す▼生産年齢人口の厳守を踏まえ、サービスの質と効率性を高める▼「支払基金業務効率化・高度化計画・工程表」の改革項目を着実に進める▼自助・共助・公序の範囲についても見直しを検討する▼高齢者医療・介護保険について、能力に応じた負担を求める▼薬剤自己負担の引き上げについて、対象範囲を含め幅広い視点で検討する▼かかりつけ機能の在り方を踏まえながら、外来受診時等の定額負担導入を検討する▼勤労世代の減少を踏まえ、医療費の負担の在り方を総合的に検討する▼健康・医療・介護情報解析基盤の整備を進める▼オンライン医療の普及促進を行う―ことなどが目立ちます(関連記事はこちら)。

今後、医療保険部会や介護保険部会、さらに中央社会保険医療協議会などで、これらの方針に沿って、具体的な改革案の議論が行われていきます。社会保障予算に関する伸び率上限の設定如何によっては、各方面に厳しい改革が行われると予想されます(たとえば窓口負担の引き上げなどの国民負担増など)。

7月19日の医療保険部会では、今後の具体論に先立った見解表面が多数の委員から行われました。例えば、医療保険者の代表である佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)や安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)らは「75歳以上の後期高齢者の窓口負担引き上げ(現在の1割から2割への引き上げ)が先送りされたように見え、残念である。高齢者医療制度への支援で現役世代の医療保険は厳しく、今年(2018年)中に結論を得て、早期に実施に移すべきである」と強く要望。しかし、患者の立場で参画する兼子久委員(全国老人クラブ連合会理事)は、「高齢者の生活実態を踏まえると負担増には違和感を覚える」と反論。この点、池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は、「現役vs高齢者といった対立の構図にするのではなく、『我々はどこまで負担できるのか』といった国民的議論を行う必要がある」と指摘しました。

また社会保険診療報酬支払基金について、▼支部の集約化(現在は47都道府県のそれぞれに支部がある)▼審査の一元化(地方独自ルールの存在が指摘される)▼国民健康保険団体連合との、最も効率的な在り方—などについて確実な改革を進めるよう規制改革会議からの強い要請があります。この点、横尾俊彦委員(全国後期高齢者医療広域連合協議会会長、佐賀県多久市長)は、「最重要ポイントである。支払基金(被用者保険のレセプトを審査し支払いを行う)と国民健康保険団体連合会(国保のレセプトを審査し支払いを行う)という同じ機能を持つ組織の存在は社会的なコスト増につながる。統合なども視野に入れ、聖域を設けず議論すべき」と要望。一方、松原謙二委員(日本医師会副会長)は、「国保の加入者は退職者が多く、診療内容等にバラつきが大きい。無理に支払基金と統合する必要はない」と牽制しています。

このテーマについては、一昨年(2016年)の秋から冬にかけて厚労省の「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」で激しい議論が行われ、その意見を踏まえて「支払基金業務効率化・高度化計画・工程表」が固められました(関連記事はこちらこちら)。しかし規制改革会議からは、「より実効性のある改革を行うべき」と厳しい指摘もなされており(関連記事はこちらこちら)、今後、どう議論が進められるのか注目が集まります。
 
 
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