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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

NDB・介護DBの連結、セキュリティ確保や高速化なども重要課題―厚労省・医療介護データ有識者会議

2018.9.28.(金)

 NDB・介護DBの第三者提供推進、さらに両データの連結に向け、情報漏えい対策などセキュリティ確保をさらに進める必要がある。また両データの連結に当たっては▼氏名(仮名)▼性別▼生年月日—の3情報を「鍵」とする方向だが、今後の「個人単位の被保険者番号」の推移も踏まえてさらに検討を進めてはどうか―。

 9月27日に開催された「医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」(以下、有識者会議)では、こういった議論が行われました。年内の報告書取りまとめに向けて、着実に議論が進められています(関連記事はこちら)。

9月27日に開催された、「第7回 医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」

9月27日に開催された、「第7回 医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」

 

NDB・介護DBの連結、利活用推進など目指し、2019年に法改正の予定

「ある個人が、過去にどのような疾病に罹患し、それに対しどのような医療提供が行われ、どのような効果があったのか。さらに介護が必要な状態となってから、どういったサービスを提供し、どのような効果が得られたのか」といったデータを一元的に集約・解析し、医療・介護等の質向上を目指す「全国保健医療情報ネットワーク」が2020年度から本格稼働する予定です。

その一環として、有識者会議では、まずNDB(National Data Base:特定健診・医療レセプト情報を格納)と介護DB(介護保険総合データベース:要介護認定情報と介護レセプト情報を格納)について、「更なる利活用を推進する」「両データベースの連結を行う」ための検討を行っています。今年(2018年)7月には中間的な議論の整理を行い、▼NDB・介護DBの利活用を促進するために、根拠法(高齢者医療確保法、介護保険法)を改正し、利用目的に「第三者提供」なども含める▼両データベースについて、匿名性を維持するなどセキュリティを確保した上で、データの連結解析を可能とする―などの方針を固めました(関連記事はこちら)。

さらに有識者会議では、来年(2019年)の国会へ高齢者医療確保法(NDBの根拠法)・介護保険法(介護DBの根拠法)の改正案を提出すべく、年内に最終とりまとめを行う予定を立て、(1)研究者等に対するデータ提供(第三者提供)(2)データベースの整備・保守管理(3)オープンデータ等の取扱い―の主に3つの項目について、残された課題や対応方針をより深く検討しています。

9月27日の有識者会議では、(2)の「データベースの整備・保守管理」と(3)の「オープンデータ等」をテーマに議論を行いました。まず(3)の「オープンデータ等」に関する議論を見てみましょう。

オンサイトリサーチセンターに研究者が赴き、NDBデータを利用

研究者が、NDB・介護DBからデータ提供を受けるためには、「公益目的の研究である」「情報漏えい等に対する対策(セキュリティ対策)が確保されている」などの厳格な要件をクリアしていなければいけません。NDB・介護DBへデータを格納する際には匿名化が施されており、そのデータは個人情報には該当しませんが、機微性が高いことに変わりはなく、十分な安全管理が求められるためです。

 しかし、個々の研究者が厳格なセキュリティ対策を十分に図るには、費用面などのハードルがあります。そこで現在、▼厚労省▼東京大学▼京都大学―の3か所に「オンサイトリサーチセンター」が設置されています。データの利活用が認められた研究者等が、コストをかけてセキュリティを確保する代わりに、「センターに赴き、そこでNDBのデータにアクセスして集計等を行う」という仕組みです。
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非常に有用な取り組みですが、研究目的を果たすためにはセンターに何度も足を運ばなければならず、遠方の研究者にとっては「高いハードル」があります。このため厚労省保険局医療介護連携政策課の宮崎敦文課長は、▼センター内で簡便に利用できるデータの充実▼センターの拡充―などを、今後の論点として掲げました。もっとも、新たなセンター設置等となれば、相応の費用もかかるため、代替方策も含めて総合的に検討していくことが必要でしょう。

この点、山本隆一座長代理(医療情報システム開発センター理事長)は、「セキュリティ対策をし、実際にデータ提供(現在はDVDで提供)する形」と「オンサイトリサーチセンターでデータ利用する形」の中間として、米国で導入されているような「データ利活用のためだけのバーチャルな研究室をPC上に設置し、そこでデータの利活用を認める」形なども検討してはどうかと提案しています。

もっとも、こうしたデータの利活用方法では、「データ漏えい」のリスクも高まる可能性があります。関連して、実際のデータ提供をDVDではなく、例えば「クラウドシステム」で提供してはどうか、という意見もありますが、そこでも「データ漏えい」のリスクをこれまで以上に考慮する必要があります。山本座長代理は、「▼システム▼ネットワーク▼ヒト―のそれぞれについて堅牢なセキュリティ対策を構築する必要があるが、セキュリティ上の最大の課題は『ヒト』である」(例えば「クラウド上に個人情報を載せない」「データを自分で持ち歩かない」などの規則に違反するなど)と指摘しており、将来的には、こうした面での対策も検討課題に挙がってくる可能性があります。

サンプリングデータセットの利便性をどう向上させるか

研究者の中には、NDBの構造を熟知している人もいれば、まだそれほど詳しくない人もいます。後者からは、ファーストステップとして「データの特性等を把握」し、次のステップとして「具体的な研究に向けたデータ提供申請」を行いたいという要望もありますが、その際、ファーストステップのためだけに堅牢なセキュリティ対策を求めることは酷です(費用も嵩む)。

そこで厚生労働省は、ファーストステップの「データ特性等を把握」するためのデータとして、比較的緩やかなセキュリティ対策でも提供可能な【サンプリングデータセット】を準備しています。「1月分」「4月分」「7月分」「10月分」の単月データについて、個人の特定性をより低下させたデータ集というイメージです。
医療介護データ有識者会議1 180927
 
今後のデータ利活用拡大に向けて、宮崎医療介護連携政策課長は「サンプリングデータセットの利便性向上」を論点の1つとして掲げています。研究者が、まず「サンプリングデータセット」でNDBの構造を知り、「●●研究のためには、どのようなデータ抽出条件を提示すればよいのか(より円滑なデータ提供等)」を把握することで、「データの利活用推進→優れた研究成果の蓄積」へと進むと期待されます。

オープンデータ、利用者の要望を踏まえてブラッシュアップしていく方針は変えず

またNDB・介護DBからは、「公益目的の研究」以外にはデータ提供が認められませんが、「診療報酬の算定傾向を見たい」「特定健診データの動向を把握したい」という広いニーズもあります。こうしたニーズに応えるために、厚労省は、例えば「7対1一般病棟入院基本料の算定回数」など、定式化された集計データを【NDBオープンデータ】として公表しています(関連記事はこちらこちら)。

これまでに3回、オープンデータが公表されていますが、特徴的なのは「利用者(研究者に限らない)のニーズ」を踏まえて、次のようにデータの範囲等が拡大され、内容もブラッシュアップされてきている点です。

▽第1回(2016年10月):医科点数表項目、歯科傷病、特定健診集計結果、薬剤データ(厚労省のサイトはこちら

▽第2回(2017年9月):医科点数表項目、歯科傷病、特定健診集計結果、薬剤データ、加算項目、歯科点数表項目、特定健診の標準的質問票、薬剤処方数の上位(厚労省のサイトはこちら

▽第3回(2018年8月):医科点数表項目、歯科傷病、特定健診集計結果、薬剤データ、加算項目、歯科点数表項目、特定健診の標準的質問票、薬剤処方数の上位、特定保険医療材料、歯科項目の追加、特定健診検査の追加(厚労省のサイトはこちら

 他方、介護DBにおいては、オープンデータこそ準備されていませんが、厚労省は「介護給付費実態調査」の詳細統計を公表しており、▼受給者数▼算定件数▼算定単位数▼費用額―などの詳細データを把握することができます。今後、介護DBの第三者提供が始まる中で、研究者等から「●●のデータを公表できないか」という要望が出てくることも考えられ、その暁にはオープンデータの整備が検討されることになるでしょう。

 ここで、NDB・介護DBの連結が進んだ場合「連結したオープンデータ」は公表されるのか、という疑問が生じます。この点について宮崎医療介護連携政策課長と厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は、「運用を進め、オープンデータへの要望状況などを見ながら整備に向けた検討をしていく」方針を示しました。介護DBと同じく、「連結データ」についても運用が始まってすらいません。そうした中では、研究者等からも「どのようなデータが必要か」といった声を上げにくく、どのようなオープンデータを整備すれば利用者のニーズにマッチするか、明らかでないためです。

 前述したとおり、NDBオープンデータには「要望を踏まえてブラッシュアップされていく」という特徴があります。山本隆一座長代理(医療情報システム開発センター理事長)も、この特徴を踏まえ、介護DBとの連結においても「ニーズを踏まえた拡充・ブラッシュアップ」の方針を維持すべきと強調しています。

▼氏名(仮名)▼性別▼生年月日—の3情報を鍵にNDB・介護DBのデータ連結

 次に(2)の「データベースの整備・保守管理」に関連する事項を見てみましょう。

NDB・介護DBに格納されているデータは「匿名化」が施され、個人の特定ができませんが、「匿名化されたデータ同士を、個人単位で連結する」ことは可能なのです。このために両データベースの連結に向けた検討が進められています。

その個人単位でのデータ連結の「鍵」として、有識者会議では▼氏名(仮名)▼性別▼生年月日—の3情報を用いる方向が模索されています。

一方、厚労省では別途、「個人単位の被保険者番号」の導入も検討しています。個人単位の被保険者番号は2021年度から導入される予定で、「2020年度からのNDB・介護DBの連結」には間に合いませんが、将来的には「個人単位の被保険者番号」を用いた連結も可能となるような環境が整備されることでしょう。このため宮崎医療介護連携政策課長は「具体的な運用の段階までに、さらに厚労省で、専門家の意見も踏まえながら詳細な検討を行う」方針を示しています。この点、山本座長代理は「個人が特定されないような安全性の確保」を十分に図るよう強く要請しています。
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医療介護データ有識者会議4 180927

 
なお、NDBからのデータ提供にかかる期間を見てみると、抽出条件などによっては「数か月」かかるケースもあるようです。データ提供にこれほどの時間がかかっては、利活用が滞ってしまうことでしょう。このため、NDB等のシステムについて「高速な検索・抽出」等が可能になるような更改が近く予定されています。この点、IT技術の専門家からは「データベース構造の根本的な見直し」を求める声もあり、システム更改にかかる▼費用▼時間―、さらに将来的な拡張性なども踏まえた、総合的な検討が行われることになります。

  
 
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