医療機関等の医薬品購入、消費税転嫁拒否・消費税改定前の大量購入など慎んでほしい―厚労省
2019.8.22.(木)
今年(2019年)10月の医薬品・特定保険医療材料の消費税対応改定において、医療機関等は「医薬品等の価格交渉において消費税転嫁を拒否する」ことや、「価格引き上げ前に大量購入する」ことなどを慎む必要がある―。
厚生労働省は8月19日に通知「医療用医薬品等に係る消費税率引上げへの対応等について」を発出し、こうした点への注意を呼びかけました。
医薬品等の安定供給に支障があってはならない
今年(2019年)10月には消費税率が8%から10%に引き上げられます。これに伴い、医療用医薬品の薬価や特定保険医療材料の価格(保険償還価格)について、「市場実勢価格を踏まえた価格見直しを行い(概ね引き下げ)、その上で消費税率引き上げ分を上乗せする」形での改定が行われます(関連記事はこちら)。
この点、さまざまなトラブルが生じる可能性が危惧されています。例えば、長期収載品などでは「改定後に薬価が低くなる」ものが多いですが、医療機関グループや薬局チェーンなどが卸売販売業者に対し「過大な値引き」を求めることがあります。一方、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象品目などでは、「改定後の薬価が高くなる」ため、改定前に大量購入がなされ、一時的に安定供給に支障が出る可能性もあります。
こうした点を考慮し、厚労省は医療機関等に対し、次のような点に留意するよう呼び掛けています。
(1)医療機関等は、改定後の薬価・材料価格に「消費税率の引上げ分も含め、医療機関等が購入時に負担する消費税が反映されている」ことを踏まえて納入価の交渉を行うこと。また、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」により、「買い叩き」など買手側(ここでは医療機関等)が売手側(ここでは卸売販売業者等)に対して「消費税の転嫁を拒否する行為」は規制の対象となる点に留意する。
(2)医薬品等について、例えば、一部の医療機関等が今般改定の適用目前に限度を超えた在庫の積み増しや圧縮を行えば、結果的に医薬品等の供給不足等をきたすおそれもあるので、適切に対応すること
(3)医薬品について、▼早期妥結・単品単価契約の推進▼過大な値引き交渉の是正―など、「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」記載の各留意事項の遵守を徹底すること。流通当事者間で交渉が行き詰まり、改善の見込みがない場合は、厚労省窓口(医政局経済課)に相談すること
なお、厚労省は8月19日に同名の通知(内容は異なる)を医薬品関係団体、医療機器関係団体に宛てて発出しており、そこでは▼メーカーは、卸と交渉し「税抜きの仕切価」等を適切に設定し、当該仕切価等に、消費税率の引上げ分も含め、消費税を適切に転嫁する▼卸売販売業者等は、医療機関との納入価の交渉に際し「表示カルテルに基づく交渉(税抜価格の提示による交渉)」を行うよう徹底する―ことなどを求めています。
【関連記事】
2019年10月からのDPC機能評価係数II、各群トップは現在と変わらず長崎大病院・済生会熊本病院・公立豊岡病院―厚労省
2019年度の消費税対応改定、診療報酬点数やDPC機能評価係数II、薬価、材料価格など告示―厚労省
2019年度消費税対応改定について答申、ただし新点数・薬価等の告示時期は未定―中医協総会(1)
2019年度消費税対応改定の内容固まる、迅速かつ継続的な「補填状況の検証」が必要―中医協総会(2)
2019年10月より、急性期一般1は1650点、特定機能7対1は1718点、初診料は288点、外来診療料は74点に―中医協総会(1)
消費税対応改定、精緻化・検証の徹底と併せ、患者・国民への広報も重要―中医協・公聴会
2019年10月予定の消費税対応改定、根本厚労相が中医協総会に諮問
消費税対応改定、急性期一般は4.8 %、特定機能病院は8.8%の引き上げ―消費税分科会
消費税対応改定の方針固まる、病院種別間の補填バラつき等は解消する見込み―消費税分科会
消費税対応改定、「入院料への財源配分」を大きくし、病院の補填不足等を是正―消費税分科会
2014年度消費増税への補填不足、入院料等の算定回数や入院料収益の差などが影響―消費税分科会
医療に係る消費税、2014年度の補填不足を救済し、過不足を調整する仕組み創設を―日病協
医療に係る消費税、「個別医療機関の補填の過不足」を調整する税制上の仕組みを―2019年度厚労省税制改正要望
控除対象外消費税問題、「診療報酬で補填の上、個別に過不足を申告する」仕組みを提言―三師会・四病協
2014年度消費税対応改定の補填率調査に誤り、特定機能病院は6割補填にとどまる―消費税分科会
異なるベンダー間の電子カルテデータ連結システムなどの導入経費を補助―厚労省・財務省
消費税率引き上げに伴う薬価・材料価格見直しの方針固まる―中医協
医薬品・医療材料の公的価格と市場価格との乖離、薬剤7.2%、材料4.2%―中医協
薬価・材料価格の消費税対応、中医協は「2019年10月価格改定」方向を固める―中医協・薬価専門部会、材料専門部会
消費増税対応の薬価等改定、2019年10月実施の可能性高まる―中医協・薬価専門部会、材料専門部会
2019年10月の消費税率引き上げ、薬価等の見直しは同時に行うべきか―中医協総会
消費増税に伴う薬価・材料価格の特別改定、実施時期を年内かけて模索―中医協総会(2)