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消費税対応改定、精緻化・検証の徹底と併せ、患者・国民への広報も重要―中医協・公聴会

2019.1.30.(水)

 2019年10月に予定される消費税率引き上げに伴う診療報酬プラス改定において、医療機関種類別の補填にバラつきが出ないよう、精緻な財源配分・配点を行うとともに、その後の補填状況の推移を検証し、必要があれば迅速な対応を行うべきである。また、個別施設等の補填のバラつきを是正する工夫についても、今後、議論すべき。さらに、患者・国民の多くは、窓口負担(診療報酬の一部)の中に消費税対応分が含まれていることを理解しておらず、積極的な広報・PRが必要である―。

 1月30日に開催された中央社会保険医療協議会の公聴会(総会)では、こういった意見が相次ぎました。

1月30日に開催された、「第406回 中央社会保険医療協議会 総会(公聴会)」

1月30日に開催された、「第406回 中央社会保険医療協議会 総会(公聴会)」

 

将来的な「個別医療機関の補填バラつきへの対応」の検討を求める声も

 2019年10月には消費税率が8%から10%に引き上げられる予定です。これに伴い、医療機関等における物品等購入時に支払う消費税(控除対象外消費税)負担が増加するため、特別の診療報酬プラス改定(以下、消費税対応改定)が行われます。

 また、2014年4月の消費税率引き上げ時(5%→8%)に行われた消費税対応改定について、精緻な検証の結果、医療機関種類別に見ると大きな補填のバラつきがあることが分かったことから、▼今回の2019年度消費税対応改定では、2014年度消費税対応改定をいったんリセットし、「5%→10%」への対応とする▼医療機関種類別の補填バラつきを可能な限り解消するための工夫を行う―といった方針が中医協や、下部組織である「診療報酬調査専門組織・医療機関等における消費税負担に関する分科会」(消費税分科会)で固まっています(関連記事はこちらこちら)。

1月30日の公聴会(東京都港区で開催)は、こうした2019年度消費税対応改定に関して、一般市民の意見を聞き、改定内容に反映させるために開催されました。意見は10名から発表され、▼健康保険組合▼労働組合▼経済団体▼国民健康保険―の関係者に患者代表を加えた支払側5名、▼クリニック(地域医師会)▼病院▼歯科医院▼薬局▼訪問看護ステーション―の診療側5名、という構成です。

意見は多岐にわたりましたが、共通する内容として、(1)少なくとも医療機関種類別に補填の過不足が生じないような、精緻な財源配分・配点が必要(2)改定後の速やかな検証と、仮に不具合が生じた場合の迅速な対応が必要(3)個別医療機関等の補填過不足への対応の検討をすべき(4)消費税対応改定に関する広報が必要―の4点があげられます。

まず(1)の精緻な財源配分・配点と(2)の検証は、2014年度消費税対応改定(5%→8%)において、当初は「マクロでは過不足なく(100%近い)補填されている」と分析されましたが、その後の検証で、大きな過不足が生じていたことを踏まえたものです(関連記事はこちらこちら)。

メディ・ウォッチでも、これまでにお伝えしているとおり、例えば▼課税経費率(医療機関の支出のうち、消費税率引き上げにより負担が増加する部分の割合)等について直近のデータを用いる▼入院料等のシェアが小さい高度急性期・急性期病院では補填不足が大きかったことから、病院種類別に「収益に占める入院料等の割合」を精緻に見ていく▼2014年度消費税対応改定では、病院の補填不足が大きかったため、病院において「より手厚い補填」が行われるように財源を配分する―といった対応が図ら、厚生労働省の試算では「100%近い補填」が実現できる見込みです(関連記事はこちらこちら)。この点について特段の異論は出ていません。

改定後の早期検証について、クリニック開設者の立場で意見を述べた蓮沼剛氏(東京都医師会理事)は、「診療所では、個別に自院の補填状況を確認することは難しい。検証を早期に行うとともに、そのプロセスを明確にしてほしい」と注文しています。

 
ただし、どのように精緻な分析・配点などを行ったとしても、診療報酬の算定状況は個々の医療機関で異なる(特定機能病院間でも当然、異なる)ため、「診療報酬プラス改定による消費税対応」では、個別医療機関の間で補填のバラつき(過不足)が生じます。この点について、多くの委員から(3)のように「今後も検討を継続してほしい」との要望が出されています。

とくに病院代表の立場で意見を述べた原義人氏(青梅市立総合病院病院長(青梅市病院事業管理者)は、「今後も消費税率は上昇していく。そうした中で高度急性期・急性期を担う病院では高額医療機器などの設備投資が増加し、控除対象外消費税負担も大きくなっていく。2019年度には医療ICT化促進基金の新設や地域医療介護総合確保基金の拡大などが行われるが、それらが個別病院に与える効果は不明確である。診療報酬プラス改定での消費税対応は限界に来ており、精緻化を進めるとともに、その他の方策を検討すべきである」と強く要望しました。

 
さらに(4)の広報については、多くの意見発表者がその必要性を強調しました。診療報酬については消費税非課税となっているものの、診療報酬プラス改定によって「患者が消費税の一部を負担する」形となっています。患者や国民の多くはこの仕組みを知らず、「医療の中身は変わらないのに、なぜ今月(今回であれば10月)から窓口負担が高くなったのか」という疑問を感じ、これが放置されれば制度への信頼が失われてしまいかねない」旨を、経済界代表の傳田純氏(東京商工会連合会専務理事)や国保代表の松下恵二氏(多摩市保健福祉部保険年金課長)、患者代表の大部令絵(日本女子大学人間社会学部社会福祉学科助教)らは指摘します。

また健保組合代表の立場で意見を述べた長尾健男氏(新日鐵住金健康保険組合常務理事)は、「個別点数ではなく、基本診療料を中心に点数の引き上げを行うことになるが、外来では初診料や再診料の点数が大きく引き上げられ、患者負担に跳ね返る。この背景、つまり消費税対応改定について、丁寧に分かりやすく説明する必要がある」と訴えました。

中医協の田辺国昭会長(東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、こうした意見を重くみて、中医協および厚生労働省で広報・PRに努めていく考えを示しています。

なお、この点について、労組代表の山中しのぶ氏(電機連合中央執行委員)や大部氏は、「明細書」活用(改定前後の明細書比較で、患者自身が消費税対応改定による点数引き上げを把握できる)の重要性等を訴えています。

 
 
このほか、今後の診療報酬改定に向けて、▼訪問看護ステーションの機能強化・規模拡大を可能とする、さらなる訪問看護療養費の引き上げ(竹内里絵子氏:東京都看護協会千駄木訪問看護ステーション管理者(代表))▼かかりつけ薬剤師・薬局の推進(大部氏)▼妊婦加算の早急な見直し(長尾氏)▼在宅歯科診療におけるポータブル機器整備などに鑑みた手当(稲葉孝夫氏:日本歯科医師会社会保険委員会委員長)―といった意見が出されています。

 
 
 
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