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入院患者のポリファーマシー対策、減薬の成果だけでなく、減薬に向けた取り組みも評価してはどうか―中医協総会(1)

2019.9.18.(水)

 ポリファーマシー対策の一環として、入院中に「処方薬の種類を減らした(減薬)」という成果だけではなく、例えば「入院時に処方薬のスクリーニングを行う」取り組み(プロセス)などを評価することも検討していってはどうか―。

 9月18日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった議論が行われました(関連記事はこちらこちら)。

9月18日に開催された、「第423回 中央社会保険医療協議会 総会」

 

「減薬の成果が現れる手前」の、「体制や取り組み」の評価を検討

 2020年度の次期診療報酬改定に向けて中医協総会では個別具体的なテーマに関する第2ラウンド論議が始まっています(関連記事はこちらこちら)。9月18日には、▼リハビリテーション▼医薬品の効率的かつ有効・安全な使⽤―の2テーマを議題としました。本稿では後者の「医薬品の効率的かつ有効・安全な使⽤」に焦点を合わせ、前者の「リハビリテーション」については別稿でお伝えいたします。

「医薬品の効率的かつ有効・安全な使⽤」に関して、厚生労働省保険局医療課の森光敬子課長は(1)重複投薬の適正化(2)入院時のポリファーマシー対策(退院時の連携)(3)バイオ後続品の推進―の3つの論点を提示しました。このほかにも「長期処方をどう考えるか」などの論点が考えられますが、それは別途、議論される見込みです。

まず(2)の入院における「ポリファーマシー対策」を見てみましょう。ポリファーマシーとは、単なる「多剤投与」を意味するものではなく、「多剤投与の中でも害を伴うもの」と定義されます。高齢になれば、どうしても複数の傷病を抱え、各傷病治療のために「多剤投与」が行われがちです。その一方で、高齢になると▼細胞内水分の減少▼血清アルブミンの低下▼肝血流や肝細胞機能の低下▼腎血流の低下―といった生理機能の低下が生じるものの、薬物吸収能には大きな変化がないため、「医薬品が効き過ぎる」、つまりポリファーマシーが生じやすくなります。このため、「ポリファーマシー」対策が重要となってくるのです。

高齢者におけるポリファーマシーを防止するために、厚労省は「高齢者医薬品適正使用検討会」の議論を踏まえ、昨年(2018年)5月に「高齢者の医薬品適正使用の指針【総論編】」(主に急性期入院医療を対象としている)を、今年(2019年)6月に「同指針【各論編(療養環境別)】(外来・在宅医療、回復期・慢性期入院医療、介護保険施設を対象)をまとめした。そこでは、医師・薬剤師・看護師等が協働して、▼高齢者の状態▼治療の必要性▼薬剤処方内容―などを総合的に勘案し、「現在の医薬品処方が適正かどうか」を常に評価し、併せて、必要に応じて減薬や薬剤投与の中止などの見直しを行うことを具体的に提言しています(関連記事はこちらこちら)。

また、2016年度の診療報酬改定では、入院外患者に対する減薬を評価する【薬剤総合評価調整管理料】、入院患者に対する減薬を評価する【薬剤総合評価調整加算】の創設などを行い、上記指針の内容を一部先取りした「減薬に取り組む医療機関の評価」を行っています。【薬剤総合評価調整管理料】(入院外)、【薬剤総合評価調整加算】(入院)の届け出医療機関は増加傾向にあり、多くの医療機関がポリファーマシー対策に積極的に取り組んでいる状況が伺えます。

 
ただし、例えば【薬剤総合評価調整加算】(入院)については、対象患者は「入院前に6種類以上の内服薬(頓用薬および服用開始から4週間以内の薬剤を除く)が処方されている」患者に限定され、算定要件として「処方内容を総合的に評価したうえで調整し、当該患者の退院時に処方される内服薬を2種類以上減少させる」ことが求められます。つまり、「入院前に5種類以下の内服薬が処方されている」患者に対して薬剤の必要性等を評価したとしても同加算は算定できず、また「総合評価を行い、薬剤の種類を変更した」にとどまったような場合にも同加算は算定できないのです。

この点について診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)は、「薬剤が6種類未満でも有害事象が生じることがあり総合評価の必要性はある」「薬剤の種類数を変更せずとも、例えば『降圧剤について腎機能への悪影響が少ないものに変更する』『消化管潰瘍用薬について認知機能への悪影響が少ないものに変更する』などの取り組みを行っており、これらも診療報酬で評価すべきではないか」との考えを提示。

森光医療課長も、例えば東京大学病院や国立長寿医療研究センターにおける「⼊院時に患者のポリファーマシーをスクリーニングし、処⽅薬剤の調整を検討する」との取り組みが効果を上げている点などを踏まえて、「減薬の結果だけでなく、総合評価し調整する取り組み自体について評価することを検討してはどうか」との論点を示しました。

具体的な制度設計はこれからの議論を待たなければならず、森光医療課長は「例えば、ポリファーマシー対策に向けた体制を敷く医療機関に入院するすべての患者を評価対象とすること(体制加算のイメージ)も考えられれば、一定の患者像を示し、そうした患者へのポリファーマシー対策に向けた取り組みを評価することも考えられる」「体制(例えばポリファーマシー対策チームの設置など)を評価することも考えられれば、具体的な取り組みを行ったことを評価することも考えられる」と述べるにとどめています。「減薬の成果」と「ポリファーマシー対策に向けた取り組み」との重複評価(併算定)が可能となるのかなども今後の議論を待つ必要があります。

こうした考え方に反対意見は出ていませんが、支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)や平川則男委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)は「ポリファーマシー対策に関する取り組みとその成果に関する、より詳細なデータを示してほしい」と注文。また今村委員は「入院医療機関でなされた減薬の成果等を、外来医療機関等が引き継ぎ、一定期間経過に入院医療機関に報告等した場合にも、診療報酬上の評価を検討すべき」(つまり双方向の評価)と提案しています。

 
 
 なお入院患者が退院した後、在宅医療(訪問診療)を受けるケースでは、「入院医療機関から保険薬局への薬剤指導管理に関する情報提供」が【診療情報提供料(I)】で評価されていますが、外来通院となった場合にはこうした評価がなされていません(【退院時薬剤情報管理指導料】は患者に情報提供を行うことを評価しているが、保険薬局への情報提供は評価していない)。この点をどう考えるかも今後の検討課題の1つとなります。

 
 この論点については、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)らが「保険薬局への情報提供は極めて重要で、診療報酬でも評価すべき」旨の見解を述べたのに対し、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「【退院時薬剤情報管理指導料】の算定要件で『患者から保険薬局への情報提供』を規定すれば事足りる」と述べ、別途の評価には否定的な考えを示しています。

入院外患者の重複投薬適正化、医療機関・薬局・保険者の役割を再整理してはどうか

 上述した「入院患者」については、入院医療機関のみが医療提供・薬剤処方(持参薬も一定程度管理する)を行い、その効果(減薬等による病状の悪化・改善の有無など)を常に確認できるため、効果的に薬剤処方をコントロールできます。

しかし、入院外の患者、特に高齢者では、多くの医療機関・薬局にかかっており、また医療スタッフが常駐しているわけではない(減薬等で病状悪化した場合に、即剤に処方内容を元に戻すことなどが難しい)ことから、その分、薬剤処方のコントロールが難しくなります。1人の患者に対し、A医療機関とB医療機関で同成分の薬剤が処方され、異なる薬局にかかっている場合などには、事後のレセプト点検まで「重複投薬があることに気付かない」ケースもあります。このため(1)の「入院外における重複投薬の適正化」を、入院とは異なる視点で検討する必要があるのです(関連記事はこちら)。

 
この点については、例えば2014年度の診療報酬改定で新設された、主治医機能を評価する【地域包括診療料】【地域包括診療加算】において、「患者がかかっている医療機関をすべて把握する」「患者が服用している薬剤をすべて把握する」ことが算定要件に盛り込まれ、「入院外においては、主治医がポリファーマシー対策の要となる」との考えが示されていると言えます。

 
もっとも、現場の医療機関・医師にとって「患者がかかっている医療機関をすべて把握する」「患者が服用している薬剤をすべて把握する」ことは相当な負担になっていることが日本医師会の調査で明らかになっています。患者によっては、内科・眼科・整形外科など相当数の医療機関に係り、またそれぞれで異なる薬局を使っている(自宅のそばに薬局があればよいが、そうした患者ばかりではない)方もおられ、そうした場合の医療機関・薬剤把握には相当な労力が必要となってきます。

こうした状況を踏まえて森光医療課長は、「重複投薬の解消に向けた取り組みをさらに進めるため、服用薬剤の把握や処方薬の総合的な評価・調整を円滑に⾏うための対応や連携について評価することを検討してはどうか」との論点を提示しました。

こちらも具体的な制度設計については、これからの議論を待つ必要があります(改めてこのテーマを議論する際に、具体案が森光医療課長から示される見込み)。医療機関・薬局・保険者等のそれぞれが、▼重複投薬の適正化に向けてどのような役割が期待されるのか▼それぞれの役割を診療報酬でどう評価すべきか(既存の診療報酬で評価されているのか、新たな評価を行うべきか)―などを改めて整理していく考えを森光医療課長は示しています。

この点について幸野委員は「薬局・薬剤師については、既存の【薬剤服用歴管理指導料】等において十分に評価されている。しかし、期待された取り組みを十分に果たしているとは考えにくい。薬剤の把握や処方医への疑義照会は薬局・薬剤師の本来業務であり、新たな評価を考える前に既存点数で期待される役割を十分に果たしてほしい」と厳しいコメントをしています。

 
また平川委員や吉森委員は「薬剤情報の把握をよりシステマティックに行う必要があるのではないか」との考えを示しています。

現在、薬剤情報の把握には「お薬手帳」が活用されており、患者の8割超は「薬局」において毎回、お薬手帳を提示しています。しかし、医療機関にかかった際にお薬手帳を毎回提示する患者は3割に届きません。これでは医療機関や薬局に「薬剤情報を把握せよ」と求めても、非常に困難なことが分かります。

 
そこで平川委員は「審査支払機関等と連携した薬剤情報把握システム」の構築を、また吉森委員は「オンラインによる服薬情報管理システム」(2021年稼動予定)などの活用を検討すべきと求めています。

確かに、審査支払機関においてレセプトをチェックすれば「重複投薬の有無」が確認できます。しかし、処方からレセプト請求までにはタイムラグ(最長1か月)が生じ、また「重複投薬が判明したとして、どちらの処方を削除するかは処方医が協議して判断する」ことが必要となります(両方が削除し、必要な医薬品が処方されないことは避けなければならない)。「システマティックな薬剤情報把握」はもちろん重要な検討テーマですが、それが完成したとしてもなお「医療機関・薬局・保険者における重複投薬の適正化に向けた取り組み」の以前として重要な点に変わりはなさそうです。

 関連して、お薬手帳のあり方について「薬剤情報しか掲載されない、他の情報を盛り込む必要があるのではないか」との指摘も出ましたが、厚生労働省保険局医療課の田宮憲一薬剤管理官は「例えば入院医療機関から提供される膨大な量の退院時サマリなどをお薬手帳に記載することが現実的かどうか考えなければならない」とコメント。情報の種類によって「連携ツール」を変えることが現実的でしょう。

 
 
 なお(3)のバイオ後続品(言わばバイオ医薬品の後発品)については、「バイオ後続品をそもそも知らない」「医療機関から勧められれば使用したいが、医療機関からの勧めがない」という患者が多く、森光医療課長は▼バイオ後続品を知らない患者にバイオ後続品を推奨する際の情報提供▼新たにバイオ後続品を導入する、または使用中のバイオ医薬品をバイオ後続品に切り替える場合の患者への説明や症状の観察―などの評価を検討してはどうかとの論点を提示しました。

 この点、診療側の松本委員、支払側の吉森委員ともに「まずバイオ後続品の情報について医療機関側に十分に提供するような環境整備を進める必要がある」との考えを示しており、現時点での診療報酬評価には消極的です。

 
 
 

 

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