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介護人材の確保定着を2021年度介護報酬改定でも推進、ただし人材定着は介護事業所の経営を厳しくする―社保審・介護給付費分科会

2020.10.5.(月)

介護人材の確保・定着、介護保険制度の持続可能性確保を来年度(2021年度)の介護報酬改定でも進めていく必要があり、処遇改善に関する加算、サービス提供体制強化加算、人員配置基準などを見直すとともに、複雑化している各種加算についても整理を行うべきではいか―。

ただし介護人材が職場に定着して、勤続期間が長くなれば、給与水準も当然にあがっていく。その場合、現在の介護報酬では介護事業所・施設の経営が逆に厳しくなってしまうが、こうした点をどのように考えるべきか―。

9月30日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、こういった議論が行われました。

介護職員処遇改善加算のVIとV、2018年度改定方針に沿って「廃止」すべきか

来年度(2021年度)の介護報酬改定に向けた議論が、介護給付費分科会で精力的に進められています。8月までの、いわゆる「第1ラウンド」では次のような検討が行われました。

▽横断的事項(▼地域包括ケアシステムの推進▼⾃⽴⽀援・重度化防⽌の推進▼介護⼈材の確保・介護現場の⾰新▼制度の安定性・持続可能性の確保―、後に「感染症対策・災害対策」が組み込まれる、関連記事はこちらこちらこちら

▽地域密着型サービス(▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護▼夜間対応型訪問介護小規模多機能型居宅介護▼看護小規模多機能型居宅介護▼認知症対応型共同生活介護▼特定施設入居者生活介護―)

▽通所系・短期入所系サービス(▼通所介護▼認知症対応型通所介護▼療養通所介護▼通所リハビリテーション短期入所生活介護▼短期入所療養介護▼福祉用具・住宅改修介護―)

▽訪問系サービス(▼訪問看護訪問介護▼訪問入浴介護▼訪問リハビリテーション▼居宅療養管理指導▼居宅介護支援(ケアマネジメント)―)

▽施設サービス(▼介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)介護老人保健施設(老健)介護医療院・介護療養型医療施設—)



9月からは、これらの議論を踏まえてより具体的な「第2ラウンド」論議を開始(関連記事はこちらこちら)。9月30日には、▼介護人材の確保・介護現場の革新▼制度の安定性・持続可能性の確保―をテーマに議論を深めました。

介護人材確保・現場革新(事務負担の軽減・効率化)は、少子高齢化が進行する中では、まさに喫緊の課題となっています。より多くの人材を確保し、介護業務に定着してもらうために厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は、今後、さまざまな論点を議論してはどうかとの考えを示しています。

まず人材確保・定着で思い浮かぶのが「処遇改善」です。眞鍋老人保健課長は▼介護職員の処遇改善をどのように考えていくべきか(現在の【介護職員処遇改善加算】【特定処遇改善加算】の要件や報酬水準をどう考えるか)▼2018年度介護報酬改定で廃止を決定した【介護職員処遇改善加算】のVIとVについてどのように考えるか―という論点を提示。

前者では、昨年(2019年)10月に創設された【特定処遇改善加算】の算定率が6割程度(2020年3月時点で59.4%)である、サービス種類別にバラつきがある(特別養護老人ホームでは84.9%だが、介護療養では29.1%にとどまる)ことなどが紹介されています。

特定処遇改善の算定率はサービスの種類によって大きくバラついている(介護給付費分科会2 200930)



この点、「要件の厳格化(職場環境要件を現在の1つ以上から2つ以上へ)を行うべき」(河本滋史委員:健康保険組合連合会理事)などの意見が出る一方で、要件や手続きの簡素化を求める声が多数出ています。今後、具体的な要件設定論議を行っていくことになります。

後者の処遇改善加算IV・Vについては、処遇改善に向けた取り組みが不十分な事業所でも算定可能であり(とくに加算Vは職場環境要件を1つも満たさずとも算定可能)、上位の加算取得を推進するためにも「廃止する」ことが2018年度の前回改定で決まっています。このため、多くの委員は廃止に賛同していますが、「廃止は処遇の『改悪』につながりかねない」(伊藤彰久委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)との指摘も出ています。

特定処遇改善加算の要件ともなるサービス提供体制強化加算、どのように見直すべきか

また、介護福祉士の配置割合が高い介護サービス事業所などを対象とする【サービス提供体制強化加算】についても論点にあがっています。「介護福祉士の配置割合などが高ければ、提供されるサービスの質も高いと推測される」点に着目した加算ですが、▼介護福祉士割合や勤続年数が上昇している▼ロボットやICTの活用による生産性向上に向けた取り組みが進んでいる▼介護の質の評価に関する取り組みが進んでいる▼報酬体系の簡素化が求められている―などの状況を踏まえて、必要な見直しなどを検討していくことになります。

サービス提供体制強化加算の算定要件の考え方(介護給付費分科会3 200930)

極めて算定率の低い加算が存在する(介護給付費分科会4 200930)



ただし、ここで留意すべきは、【サービス提供体制強化加算】の最上位区分は、【特定処遇改善加算】の要件となっている点です。つまり、要件の厳格化などは、【サービス提供体制強化加算】の算定を難しくし、結果として【特定処遇改善加算】の算定も難しくなってしまう(介護スタッフの給与維持が難しくなる)可能性もあるのです。このため小泉立志委員(全国老人福祉施設協議会理事)らは、「上位の区分を新たに設け、【特定処遇改善加算】に影響が出ない形としてはどうか」と提案しています。河本委員は上位区分設定には賛同していますが、その場合「下位区分の報酬を引き下げるなどのメリハリをつける(財政中立も担保する)べき」と注文しています。

このように介護報酬では、「ある加算の取得が、別の加算の取得要件になっている」ケースがあり、複雑な検討が必要となる点に留意が必要です。

限られた介護人材の有効活用のため、人員配置基準などをどう考えるべきか

また、人材確保が難しい中では、サービスの質を確保したうえで「人員配置基準の緩和」を検討していくことが求められます。眞鍋老人保健課長は、▼診療報酬では育児中などに「常勤の要件」を緩和する仕組みがあるが、介護報酬には設けられていない点をどう考えるか▼いわゆるローカルルール(例えば「兼務」の可否について自治体間で取り扱いが極めて多様である)をどのように考えていくか―という論点を掲げていますが、安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「事業所・施設の集約化、大規模化を進めていくべき」との考えを強調しています。小規模事業所が乱立したままでは、個々のスタッフの負担が過重となるためですが、過疎地等ではどうしても事業所規模が小さくならざるを得ない(大規模化を要件とすれば事業所が成り立たなくなってしまいかねない)点にも留意が必要でしょう。

2016年度診療報酬改定で、育児期間中に常勤要件を緩和する仕組みが設けられた(介護給付費分科会1 200930)



このほか、次のような論点も浮上していますが、東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)らからは、介護報酬以外にも「ロボットやICT導入の初期経費を補助するために、地域医療介護総合確保基金を活用しやすくすべき」との要請も出ています。介護報酬改定とは別に、2021年度予算編成等に向けて検討すべきテーマと言えるでしょう。

▽【夜勤職員配置加算】(特別養護老人ホームなどの加算)の活用推進に向け、ICT機器の併用などの効果検証を踏まえながら、他サービスへの評価拡大なども含めてどう考えるか

夜勤職員に係る加算の要件(介護給付費分科会5 200930)



▽テクノロジーの活用によりサービスの質の向上や職員の職場定着に取り組む介護事業所に対する報酬上の評価をどう考えるか

▽文書負担の軽減(保存年限なども含めて)をどう進めていくべきか

介護スタッフが定着し給与水準が上がれば、介護事業所・施設の経営が厳しくなっていく

ところで、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「介護スタッフの離職率が低下し、勤続年数が長くなれば、給与水準も上がっていく。サービスの質も上がるが、その場合、逆に介護事業所・施設の経営が困難になっていくというジレンマに陥ることを、そろそろ正面から考える必要がある」との重要な問題提起が行われています。

処遇改善に向けた財源的な手当てがあれば、給与増を一定程度賄うことができますが、「勤続年数の延伸→基本給の増」を賄うことまでを想定したものではありません。また、処遇改善加算は利用者の負担増、保険料の上昇にもつながります。こうした点を総合的に検討していくことも必要となってくるでしょう。



また、堀田聰子委員(慶応義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授)は、地域包括ケアシステム・地域共生社会を構築していく中で、保険給付に関しては「どこまでを公的介護保険の給付対象とするのか」、サービス提供に関しては「どこまでを専門職種が担い、どこからを有償ボランティアや元気高齢者などが担うのか」という線引き論議をきちんとしておくことの重要性を強調しています。

単純に「介護従事者の処遇を引き上げればよいか」「人員をどう確保するか」という議論には収まらない、より大きな議論が近い将来、必要になってくることでしょう。

介護報酬の加算等は制度創設時に比べて大幅増、算定率の低いものは廃止を検討すべきか

また少子高齢化が進み、増加する要介護高齢者を、減少する現役世代で支えなければならず、介護保険制度の財政基盤は極めて脆弱になっていきます。このために「制度の安定性・持続可能性の確保」が2021年度改定でも重要論点となるのですが、関連して眞鍋老人保健課長は「報酬体系の複雑化」が進んでいる状況を紹介しました。

2000年度の介護保険制度スタート時点と、約20年を経過した現在(通常改定のみで6回の報酬改定を経験)とを比べると、加算とサービスコードは大幅に増加していることが確認できます。

2000年度の制度創設に比べて加算・サービスコードは膨大な量に増えて、複雑化している(介護給付費分科会6 200930)



こうした加算の中には「ほとんど利用されていない」ものもあり、報酬の簡素化も目指して「整理」を進めていく必要があるのではないか、という論点に繋がってきます。介護給付費分科会でも多くの委員から「算定率が8割、9割と高いものは基本報酬への組み入れを行い、算定率が著しく低いものは廃止を含めた見直しを行う必要がある」との意見が出ています。もっとも武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は「算定率が著しく低い加算であっても、介護サービスの質向上を目指す必要な加算である」とし、廃止に向けた検討よりも「算定率向上に向けた検討」を進めるべきと訴えています。

また江澤和彦委員(日本医師会常任理事)も、「単発の加算」と「継続的な加算」とがあり、類型を分けた慎重な検討を行うべきと求めています。

極めて算定率の低い加算が存在する(介護給付費分科会7 200930)



「要件が厳しすぎる」のか、「利用者の意向を踏まえたもの」なのか(加算は利用者負担増につながる)、「現場のニーズに合っていない」のか、などを詳しく分析していくことが重要です。

ぽんすけ2020 MW_GHC_logo

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