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消費税問題の抜本解決、コロナ感染症等で危機的な病院経営を支援するための税制上の手当てを―日病・相澤会長

2021.8.16.(月)

いわゆる控除対象外消費税負担について、診療報酬での対応で不公平が解消されない場合には、税制上の「抜本的な解決」を行うことを検討してほしい―。

新型コロナウイルス感染症、毎年のように生じする自然災害により病院経営は大きな打撃を受けている。こうした経営上の危機を乗り越えるための支援を税制上で手当てしてほしい―。

日本病院会の相澤孝夫会長は8月11日に、こうした内容を盛り込んだ2022年度の「税制改正に関する要望」を、田村憲久厚生労働大臣に宛てて行いました(日病のサイトはこちら)。

消費税問題の解消に向け、公平性・中立性・簡便性の観点から検討を

日病の要望する税制改正項目は、▼国税:6項目▼地方税:1項目▼地域医療の拠点としての役割と税制に関する要望:1項目―の合計8項目です。

国税については、(1)控除対象外消費税負担を解消するための抜本的な対応(2)医療法人の出資評価における類似業種比準方式を採用する場合の取り扱い(「医療福祉」と「その他の産業」のいずれか低い方とする)(3)医療機関の設備投資に係る税制の整備拡充(4)公的運営が担保された医療法人に対する寄附税制の整備(5)医療費控除制度の拡充(6)「持ち分あり医療法人」に対する事業承継税制の整備―を要望。このうち(1)と(6)を重点要望項目としています。

まず(1)は、従前から日病はもちろん、病院団体が一貫して要望しているものです。

医療機関等が物品を購入した際にも、当然「消費税」を負担します。ただし、保険医療については「消費税は非課税」となっているため、医療機関等が納入業者から物品等を購入する際に支払った消費税は、患者や保険者に転嫁できず、中間消費者である医療機関等が最終負担をしています(いわゆる「控除対象外消費税」)。この負担を補填するために診療報酬での手当てが行われていますが、診療報酬の算定状況は病院により千差万別のため、どうしても補填の過不足(ある病院では負担を上回る補填がなされ、ある病院では負担が十分に補填されない)が生じます。

2019年10月の消費税対応改定では、この過不足をできるだけ小さくするために「精緻な対応」が図られていますが、日病では「診療報酬では不公平(過不足)が解消できないと認められる場合には、課税化転換を含めた税制の抜本的な改正による問題解決」を検討することを要望(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

なお、抜本解決の方法としては、▼診療報酬で個々の病院の控除対象外消費税負担を完全に上乗せする方法▼課税化転換する方法(例えば、ゼロ%の消費税率を課税し、後に消費税負担を還付する方法)―などがありますが、日病では「実質的な差はなく、公平性・中立性・簡便性の観点から検討すべき」と指摘するにとどめています。



また(3)では、▼コロナ感染症に対応するための設備投資について、金額基準を設けず、整備時点で「感染症対応」効果が達成されるため、即時「損金」参入を認める▼病院用建物、医療機器、医療情報システム等に関する法定耐用年数を短縮する▼設備投資に係る控除対象外消費税糖について、即時「損金」参入を認める(現在は60か月の分割)▼病床転換改修費用の即時「損金」参入を認める▼耐震基準を充足するための改修費用について、即時「損金」参入を認める―などの手当てを要望しました。



一方、(6)では、中小企業に認められている「非上場株式等に係る納税猶予・免除」制度(現経営者から後継者への事業承継時には税負担が軽減される)について、持ち分あり医療法人にも適用することを求めています。



また、地方税に関しては、(i)診療報酬に係る事業税非課税措置」を存続させる(ii)病院運営に直接・間接に必要な固定資産について、▼固定資産税▼都市計画税▼不動産取得税▼登録免許税―を非課税(または軽減)とする―ことを求めました(重点要望)。



さらに、「地域医療の拠点としての役割と税制に関する要望」としては、病院が▼指定感染症や検疫感染症▼地震・台風などの自然災害―によって甚大な影響を受けた場合の「税制上の手当て」を早急に制定することを求めています。

例えば、今般のコロナ感染症では、病院経営が大きな打撃を受けました。

また、毎年のように我が国を襲う台風や大雨、さらには地震などの自然災害で、病院経営が大きな打撃を受けるケースも少なくありません。

病院は、地域における医療提供体制の拠点であるとともに、自然災害時には「避難場所」にもなるなど、重要な社会インフラと言うことができ、この維持・存続が国民の生活を守るうえで非常に重要となります。

日病では、こうした点に鑑みて、次のような税制上の対応を行うことを重点要望項目の1つに据えています(上記国税の2項目、地方税の2項目とあわせ、5項目の重点要望となる)。

▽感染症対応の補助金・助成金などを「益金」には参入しない(法人税)
▽自然災害復旧のための補助金・助成金などを「益金」には参入しない(法人税)
▽激甚指定された自然災害を原因とする保険金を「益金」には参入しない(法人税)
▽指定感染症、検疫感染症、激甚災害の発生による損害を補填するために、病院が受け入れる寄付金を「益金」に参入しないとともに、寄付者には税制上の控除を認める(法人税)
▽欠損金の繰り戻し還付制度の適用要件を緩和して、すべての病院が適用可能とするとともに、遡って法人税の還付請求ができる期間を拡大する(法人税)
▽欠損金の翌年度以降への繰り越し控除期間の制限を撤廃し、欠損金の適用期限切れが生じないように無期限とする(法人税)



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