外来機能報告制度、「重装備の無床クリニック」データが抜け落ちてはいけない―日病・相澤会長
2021.7.20.(火)
来年(2022年)4月から外来機能報告制度がスタートし、報告データや医療機関の意向を踏まえて「紹介中心型の医療機関」(医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関)を地域で明確にしていく―。
その際、一部にある「非常に重装備の無床クリニック」のデータが抜け落ちてはいけない―。
日本病院会の相澤孝夫会長は、7月20日の定例記者会見においてこうした考えを述べました。外来機能報告制度については、厚生労働省の「外来機能報告等に関するワーキンググループ」(「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織、以下、外来機能報告等WG)で詳細な検討が始まっていますが、どういった方向に議論が進むのか注目していく必要があります。
「重装備の無床クリニック」データが抜け落ちては、外来医療の全体像を把握できない
入院医療については、すでに「病床機能報告制度と地域医療構想(2025年度における機能別の必要病床数)に基づく機能分化・連携の強化」が進められています。
外来医療においても機能分化を進め、「『かかりつけ医』をまず受診し、そこから『高機能の病院外来』を紹介してもらう」という患者の流れを強化することで、▼病院勤務医の負担軽減▼外来医療の質向上―などを目指す方向が確認されており、今般、改正医療法の中で「外来機能報告」制度が新設されました。具体的には次のように「紹介状なし患者の定額負担」と組み合わせた仕組みとなります。(関連記事はこちら)。
(A)「一般病床・療養病床を持つ医療機関」(病院・有床診療所)に外来診療に係るデータを都道府県に報告することを義務付ける【外来機能報告制度】
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(B)提出された外来診療データをもとに、各地域で紹介型病院となる「『医療資源を重点的に活用する外来』を地域で基幹的に担う医療機関」を明確化する
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(C)重点外来基幹病院へは、かかりつけ医等からの紹介受診を原則とする(紹介状を持たずに受診した場合には特別負担徴収を義務化)
しかし、日病幹部の間では「外来機能報告制度の対象が病院と有床診療所のみで良いのか」という疑問が出ています。例えば、一般の無床診療所でも、da vinci(ダ・ヴィンチ)システムを用いたロボット支援下手術を実施するなどの、重装備クリニックが一部あります。日病では「病院と有床診療所のみの報告では、重装備の無床クリニックのデータが抜け落ちてしまい、外来医療の真の姿を把握できないのではないか」「外来医療については、『病院だから』『クリニックだから』といった括りで考えることはできない。すべての外来医療を対象に考えていくべきではないか」との考えで一致していることが相澤会長から報告されました。
さらに相澤会長は「個人的な考えである」と前置きをしたうえで、「診療報酬の算定状況(NDB)から、個々の医療機関(病院・クリニックを含めて)において、外来でどういった診療行為がなされているのかは把握できている。そのデータを見て、『ここの医療機関からは報告を求めるべきである』『こちらの医療機関からの報告は不要である』と決めていくべきではないか。さもなければ、重装備のクリニックデータが漏れてしまう。外来機能報告等WGでもしっかり、こうした点を議論してほしい」と強調しています。
なお、無床の無床クリニックについては「外来機能報告を行うことができる」とされています(つまり任意でデータを提出できる)。
あわせて、上記の(A)(B)(C)の仕組みでは、外来機能報告に基づいて、「病院単位」で紹介中心型の医療機関(医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関)を地域で明確にしていくこととなっています。
この点について日病幹部の間では「同じ病院の中でも、診療科によって機能は異なる。それを『病院』という単位で一括して考えていくことには疑問を感じる」という声も出ています。こうした考えは、外来機能報告制度のベースを検討した「医療計画の見直し等に関する検討会」でも示されており)、外来機能報告等WGでも「患者・住民への分かりやすさ」という点も勘案して検討していくこととなっています。
「かかりつけ医」の認識・イメージは、日病幹部の間でもバラエティに富んでいる
また、外来医療の機能分化・連携の強化を考える際には、「紹介中心型の医療機関」と対をなす「かかりつけ医」の存在を忘れることはできません。患者は、「かかりつけ医」をまず受診し、そこから高機能の「紹介中心型の医療機関」を紹介してもらうことになるためです。
しかし、「かかりつけ医」の定義について明確なものは存在せず、相澤会長は「日病幹部の間でも、かかりつけ医の認識・イメージについてはバラエティに富んでいることが改めて確認された」ことを報告しています。
「かかりつけ医」については、例えば「在宅医療提供や24時間対応を求める患者」もいれば、「大病院の主治医」と考える人もいます。外来機能報告等WGでは、外来機能報告の詳細を年内(2021年内)に固めた後、「かかりつけ医」機能も含めた検討を進めていきます。その際に、どういった議論が行われるのか、こちらも注目していく必要があります。
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