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2019年度の社会保障給付費は前年度比2.1%増の123兆9241億円、医療・介護給付の増加目立つ―2019年度社会保障費用統計

2021.9.15.(水)

2019年度の社会保障給付費は過去最高の123兆9421億円で、前年度に比べて2兆5254億円・2.1%の増加となった。高齢化の進展や医療技術の高度化を背景に、「医療」「介護」給付の増加が目立つ―。

国立社会保障・人口問題研究所が先頃公表した2019年度の「社会保障費用統計」から、こういった状況が明らかになりました(社人研のサイトはこちら)(前年度(2018年度)の記事はこちら、前々年度(2017年度)の記事はこちら、その前年度(2016年度)の記事はこちら)。

また施設整備費などを含めた「社会支出」は、2019年度に127兆8996億円で、対GDP比は22.85%となりましたが、英国に近い水準ですが、欧州大陸諸国の高水準に近づいてきています。

年金給付は減少しているが、医療給付・介護給付は増加傾向

社会保障費用統計は、年金や医療保険、介護保険、雇用保険、生活保護など社会保障制度に関する1年間の支出(社会保障費)を、▼OECD(経済協力開発機構)基準による「社会支出」▼ILO(国際労働機関)基準による「社会保障給付費」—の2通りで集計したものです。前者の「社会支出」(OECD基準)では、後者の「社会保障給付費」(ILO基準)に比べ、施設整備費など直接個人にわたらない藻など、より広範囲は支出を集計範囲に含めています。

まず、我が国で戦後間もなくから集計されている後者の「社会保障給付費」(ILO基準)を見てみましょう。

2019年度の社会保障給付費は123兆9241億円で、前年度に比べて2兆5254億円・2.1%の増加となりました。GDP(国内総生産)に対する社会保障給付費の割合は22.14%で、前年度に比べて0.34ポイント高まっています。2012年度から15年度までは低下を続け、2016年度には増加、2017年度に再び低下しましたが、2018年度・19年度と増加しています。

国民1人当たりの社会保障給付費は98万2200円で、前年度に比べて2万2100円・2.3%の増加となりました。また、1世帯当たりで見ると234万9500円で、前年度に比べて8500円・0.4%増加しています。

社会保障給付費を「部門」別に見てみると、年金給付が最も多く55兆4520億円(前年度比0.4%増)、次いで医療給付40兆7226億円(同2.5%増)、介護対策給付10兆7361億円(同3.3%増)などとなっています。社会保障給付費全体に占める割合(シェア)は、▼年金:44.7%(前年度に比べて0.8ポイント減)▼医療:32.9%(同0.2ポイント増)▼介護8.7%(同0.1ポイント増)—という状況です。医療の高度化(例えば2019年度には、白血病等の治療に用いる超高額薬剤「キムリア点滴静注」の保険適用などが行われた)、高齢化の進展を背景とした要介護者の増加、などが背景にあると考えられます。

部門別の社会保障給付費(2019年社会保障費用統計1 210831)



また社会保障給付費を「機能」別に見てみると、高齢者給付が最も多く57兆8347億円(前年度比1.0%増)で、給付費全体の46.7%(同0.4ポイント減)を占めています。次いで保健医療の39兆815億円(同2.6%増)が大きく、給付費の31.5%(同0.2ポイント増)を占めました。前年度に比べて「家族」給付(同8.3%増)、「生活保護その他」給付(同3.6%増)、「障害」給付(同3.1%増)の伸び率が大きくなっています。

高齢化の進展は「年金」や「介護」に係る費用の増加に直結します。ただし年金制度については、▼給付費の伸びを「支え手」(現役世代)の減少などに応じて調整するマクロ経済スライドの導入▼支給開始年齢の延伸―など、一定程度、高齢化による給付費増を吸収する仕組みが導入され、伸びも鈍化していることが確認できます。

一方、介護保険制度では、こうした仕組みが導入されておらず、高齢者の増加に伴って給付費がそのまま増加していく格好となっています。

また、医療では、「医療の高度化」(例えば高額な新薬など)が給付費増に大きく関係しますが、「高齢化」の影響も決して小さくはありません。

来年度(2022年度)からは、人口の大きなボリュームを占める、いわゆる団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。また、2025年度から2040年度にかけては、高齢者の数そのものは大きく増えないものの、支え手となる現役世代人口が急速に減少していきます。

さらに、前述した医療の高度化はますます加速していく(例えば脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などの超高額薬剤の保険適用が相次ぎ、さらにキムリアに類似した、やはり超高額な血液がん治療薬も次々に登場してきている)ことは確実です。

部門別社会保障給付費の推移(2019年社会保障費用統計2 210831)



社会保障費の財源は我々国民が負担しており(税金や保険料)、社会保障費の増加は「我々国民の負担が増加する」ことを意味します。「給付の在り方」に関する議論をそろそろ本格化させる必要があるでしょう(関連記事はこちら)。



なお、社会保障財源を見てみると132兆3746億円で、前年度に比べて0.2%・2297億円の微減となっています。財源のシェアを見ると、▼社会保険料:55.9%(前年度比1.2ポイント増)▼公費:39.2%(同1.2ポイント増)▼その他収入:4.9%(同2.4ポイント減)—となりました。「その他収入」の減少は、資産収入(公的年金制度の資産運用収入、株式投資など)が減少したことが主な原因で(前年度比64.0%減)、「安定財源とは言えない」ことを再確認できます。

項目別の社会保障財源(2019年社会保障費用統計3 210831)

施設整備費なども加味した社会支出の対GDP比、英国に近いが、欧州大陸の高水準に近づく

次に、OECD基準に基づく「社会支出」を見てみましょう。先進諸国で使用されている指標で、国際比較を行う場合にはこちらが有用です。

冒頭で述べたとおり、社会支出は社会保障給付費よりも広い範囲の支出をカバーしており、国民個々人への直接給付ではない「施設整備費」なども含まれます。2019年度には、前年度に比べて2兆3982億円・1.9%増加の127兆8996億円となりました。

国民1人当たりで見ると101万3700円(前年度に比べて2万1200円・2.1%増)、1世帯当たりで見ると242万4900円(同4800円・0.2%増)となっています。

社会支出を政策分野別に見ると、▼高齢:48兆1114億円(前年度比0.3%増)・全体に占めるシェア37.9%(同0.5ポイント減)▼保健:53兆527億円(同2.6%増)・シェア41.5%(同0.1ポイント増)▼家族:9兆6730億円(同6.8%増)・シェア7.6%(同0.4ポイント増)―などという状況です。「高齢」支出と「保健」支出の数値が2018年度までと大きく変化していますが、計算方法が従前と異なったためです。

政策分野別の社会支出(2019年社会保障費用統計4 210831)



またGDPに占める社会支出の割合は22.85%(前年度比0.31ポイント増)、国民所得(NI)に占める割合は31.87%(同0.67ポイント増)となりました。



我が国における社会支出の対GDP比(22.85%、2019年度)は、英国(21.36%、2017年度)と近い水準ですが、▼フランス(32.21%、2017年度)▼ドイツ(27.64%、2017年度)▼スウェーデン(26.64%、2017年度)—といった欧州の大陸諸国に徐々に近づいてきているようにも見えます。なお、米国は、いわゆるオバマケアが導入されたことにより、2017年度に24.78%となっており、我が国よりも高い水準となっています(民間の医療保険支出が社会支出に計上されるようになった)。

社会支出の国際比較(2019年社会保障費用統計5 210831)



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