社会保障給付費、前年度から2.4%伸び、過去最高の115兆円―2015年度社会保障費用統計
2017.8.2.(水)
2015年度の社会保障給付費は過去最高の114兆8596億円で、前年度に比べて2兆6924億円・2.4%の伸びとなった。とくに医療給付の伸びが大きく(前年度比3.8%増)、対前年度増加額お51.4%を占める―。
国立社会保障・人口問題研究所が1日に公表した2015年度の「社会保障費用統計」から、このようなことが明らかになりました(社人研のサイトはこちら)(前年度の状況はこちら)。
また施設整備費などを含めた「社会支出」は、2015年度には前年度比2兆7079億円・2.3%増の119兆2254億円となっています。
超高額薬剤の影響で医療給付が大幅増
社会保障費用統計では、年金や医療保険、介護保険、雇用保険、生活保護など社会保障制度に関する1年間の支出をOECD(経済協力開発機構)基準による「社会支出」と ILO(国際労働機関)基準による「社会保障給付費」の2通りで集計しています。「社会支出」(OECD 基準)は「社会保障給付費」(ILO 基準)に比べて、施設整備費など直接個人にわたらない支出も集計範囲に含めています。
まず、我が国で戦後間もなくから集計されている後者の「社会保障給付費」(ILO基準)について見てみましょう。
2015年度の社会保障給付費は114兆8596億円で、前年度に比べて2兆6924億円・2.4%増加しました。GDP(国内総生産)に対する社会保障給付費の割合は21.58%で、前年度に比べて0.08ポイント低下しました(3年連続の低下)。
国民1人当たりの社会保障給付費は90万3700円で、前年度に比べて2万2200円・2.5%の増加、1世帯当たりで見ると224万6900円で、前年度に比べて5万3400円・2.4%の増加となっています。
部門別に見ると、年金がもっとも多く54兆9465億円(前年度比1.1%増)、次いで医療37兆7107億円(同3.8%増)、介護9兆4049億円(同2.3%増)となりました。社会保障給付費全体に占める割合(シェア)は、▼年金47.8%(同0.6ポイント減)▼医療32.8%(同0.4ポイント増)▼介護8.2%(同増減なし)という状況です。
また社会保障給付費を機能別に見てみると、高齢者給付が最も多く55兆2350億円(同1.4%増)で、給付費全体の48.1%(同0.4ポイント減)を占めています。次いで保健医療の36兆409億円(同3.9%増)が大きく、給付費の31.4%(同0.5ポイント増)を占めています。また家族給付(同7.7%増)と障害者給付(同5.1%増)が前年度に比べて大きく増加しています。
2015年度は医療関係給付の伸びが大きくなっています(対前年度増加額2兆6924億円の51.4%を占める1兆3850億円の伸び)が、この背景には抗がん剤オプジーボやC型肝炎治療薬ハーボニーなどの超高額薬剤の保険収載の影響があると考えられます(関連記事はこちら)。
さらに、社会保障財源を見てみると、前年度に比べて10.2%・14兆84億円と大幅に減少し、123兆2383億円となりました。大幅減の主因は、年金資産運用益の減少(前年度の運用益が大きかった)によるものですが、株式変動などの影響を大きく受けるため、長期的に見る必要があります。内訳を見ると、▼社会保険料66兆9240億円(前年度比2.7%増、全体の54.3%を占める)▼公費46兆1379億円(同2.5%増、同37.4%を占める)▼その他10兆1763億円(同62.4%減、同8.3%を占める)となっています。その他収入の大幅減は、上記のとおり年金資産運用益の減少によるものです。
施設整備費などを勘案した社会支出、前年度比2.3%増の119兆2254億円
次に、OECD基準に基づく「社会支出」を見てみましょう。諸外国でも使用されている指標で、国際比較を行う場合にはこちらも有用です。
冒頭で述べたとおり、社会支出は社会保障給付費よりも広範囲で、施設整備費なども含んでおり、2015年度には前年度に比べて2兆7079億円・2.3%増加の119兆2254億円となりました。
国民1人当たりで見ると93万8100円(前年度に比べて2万2300円・2.4%増)、1世帯当たりで見ると233万2300円(同5万3700円・2.4%増)となっています。
社会支出を政策分野別に見ると、▼高齢55兆3549億円(同1.4%増)▼保健41兆884億円(同4.0%増)▼家族6兆9687億円(同5.9%増)▼遺族6兆6775億円(同0.0%増)―などという状況です。
またGDPに占める社会支出の割合は22.40%(同0.10ポイント減)、国民所得(NI)に占める割合は30.69%(同0.11ポイント減)となりました。社会支出の対GDP比(22.40%)は、▼フランス(31.75%)▼スウェーデン(27.81%)▼ドイツ(26.11%)▼英国(22.76%)―の欧州諸国よりも低くなっていますが、米国(19.10%)よりも高い状況です(諸外国は2013年度時点のデータ)。