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都道府県における医師配置の格差は依然大きく、また外科医の減少が続く―医師・歯科医師・薬剤師統計

2022.3.18.(金)

2020年12月31日現在、我が国の医療施設に勤務する医師数は32万3700人で、人口10万人当たりに換算すると256.6人だが、依然として都道府県間の格差は大きい。また診療科別にみると「外科医」の減少が続いている―。

厚生労働省が3月17日に公表した2020年の「医師・歯科医師・薬剤師統計」の概況から、このような状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら(概況資料)、詳細な政府統計データはこちら(統計表、データをダウンロード可)こちら(閲覧資料、データをダウンロード可))。

医師の95.3%が医療施設に従事、人口10万人当たり256.6人

医師・歯科医師・薬剤師統計は、名称どおり医師・歯科医師・薬剤師の数や勤務状況などを調べるもので、現在は2年に1度実施されています(2年前の2018年統計の記事はこちら、16年統計の記事はこちら、4年前の2014年統計の記事はこちら)。

今後の医師養成数設定や、現在、各都道府県で作成が進められている「医師確保計画」(医師偏在対策)の重要な基礎資料になります(関連記事はこちらこちらこちら)。

本稿では医師に焦点を合わせて2020年の統計概況を眺めてみます。



まず、2020年12月31日時点の医師数を見ると33万9623人で、2年前(2018年12月31日)に比べて1万2413人・3.8%増加しました。また、人口10万人当たりの医師数は269.2人で、2年前に比べ10.4人増加しています。

医師数の推移(2020年三師統計1 220317)



医師の中で「医療施設に従事」している人は32万3700人(2年前に比べて1万1737人・3.8%増加)で、全体の95.3%(同増減なし)を占めています。人口10万人当たりでは256.6人で、2年前に比べて9.9人・4.0%増加しています。

医療施設以外では、▼介護老人保健施設に3405人(2年前に比べて17人・0.5%増)で全体の1.0%(同増減なし)▼行政機関や教育機関などに9419人(同88人・0.9%増)で全体の2.8%(同0.1ポイント減)―が従事しています。

勤務場所別の医師数(2020年三師統計2 220317)

病院従事医は2年前から4%増加、一般病院勤務が15万人強、大学病院勤務医が6万人弱

医療施設に従事する医師を、少し詳しく見てみましょう。

まず病院に従事する医師は21万6474人(2年前に比べて8347人・4.0%増)で、医師全体の63.7%となります。細かく見ると、▼大学病院(医育機関附属病院)勤務:5万7581人(病院従事医の26.5%)▼一般病院(医育機関附属病院を除く)の開設者等:5142人(同2.4%)▼一般病院の勤務者:15万3851人(同71.1%)―となっています。

また、クリニックに勤務する医師は10万7266人で、2年前に比べて3390人・3.3%の増加となりました。

年次推移をみると、一般病院の勤務医で増加割合が若干高いことが伺えます。

病院勤務医の増加が目立つ(2020年三師統計3 220317)



また医療施設ごとに「医師の平均年齢」を見ると、一般病院では47.2歳(同0.2歳上昇)、診療所60.2歳(同0.2歳上昇)、大学病院39.3歳(同0.3歳上昇)となっています。

さらに、施設ごとに「どの年代の医師が多く働いているのか」を見ると、▼一般病院では30歳代と40歳代が23%弱で同程度▼診療所では50歳代と60歳代が3割弱で同程度▼大学病院では30歳代が42%強―という状況です。この傾向は2年前と大きく変わっていません。

勤務場所別の医師年齢(2020年三師統計4 220317)

医師全体、病院従事医のいずれにおいても「外科」の減少目立つ

次に、医療施設に従事する医師が、どの診療科(主たるもの)に従事しているのか(臨床研修医は除く)を見ると、最も多いのは内科で6万1514人(2年前調査に比べて1111人・1.8%増、医療施設に従事する医師に占めるシェア19.0%)、次いで整形外科2万2520人(同637人・2.9%増、同シェア同7.0%)、小児科1万7997人(同676人・3.9%増、同シェア5.6%)などで多くなっています。

また、産婦人科は1万1219人(同441人・4.1%増、同シェア3.5%)、産科は459人(同95人・17.1%減、同シェア0.1%)、婦人科は1995人(同51人・2.6%増、同シェア0.6%)という状況です。

なお外科医師は1万3211人(同540人・3.9%減、同シェア4.1%)となり、減少が続いています。



また、病院従事医(大学病院・一般病院)に限定すると、最も多いのは内科で2万1950(同430人・2.0%減、病院従事医に占めるシェア10.1%)、次いで整形外科1万4419人(同439人・3.1%増、同シェア6.7%)、精神科1万2163人(同277人・2.3%増、同シェア5.6%)、消化器内科(胃腸内科)1万1826人(同477人・4.2%増、同シェア5.5%)、外科1万547人(同342人・3.1%減、同4.9%)などが多くなっています(臨床研修医1万7308人を除く)。

病院でも「外科医の減少」が進行し続けている点が懸念されます。

外科医の減少が続いている(2020年三師統計5 220317)

広告可能な専門医資格、総合診療内科専門医が2年前に続きシェアトップ

また広告可能な専門医資格を見ると、総合内科専門医が最も多く3万3119人(同3961人・13.6%増、医療施設に従事する医師に占めるシェア10.2%)、外科専門医2万2312人(同405人・1.8%増、同シェア6.9%)、消化器病専門医1万9811人(同757人・4.0%増、同シェア6.1%)という状況です。

病院従事医(大学病院・一般病院)では、総合内科専門医2万3463人(同2587人・12.4%増、病院従事医に占めるシェア10.8%)、外科専門医が1万9138人(同211人・1.1%増、同シェア8.8%)、消化器病専門医1万3118人(同325人・2.5%増、同シェア6.1%)が多くなっています。

人口当たり医師数、大都市と西日本で多い状況変わらず

都道府県別に、医療施設に従事する医師の状況(従事地、人口10万人当たり)を見ると、徳島県が最も多く338.4人(2年前調査に比べて8.9人増)、次いで京都府332.6人(同9.3人増)、高知県322.0人(同5.1人増)で多い状況です。

逆に少ないのは埼玉県の177.8人(同8.0人増)、茨城県193.8人(同6.3人増)、新潟県204.3人(同6.4人増)などです。

大都市と西日本で多い傾向は変わっておらず、最多の徳島県と最少の埼玉県の格差は1.90倍です(2年前より0.04ポイント縮小)。大都市では人口が多く、当然患者数も多くなるためですが、さらに「研修医を受け入れる大学病院や大規模病院」が集中していることも関係してきます。

都道府県別にみると医師数に大きな格差がある(2020年三師統計6 220317)



今後、2024年度からの第8次医療計画論議の中で「医師偏在の是正」策も重要論点の1つとなり、本統計結果が重要な基礎資料の1つに位置づけられます(関連記事は こちらこちら)。



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