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全看護師の処遇改善、ナースプラクティショナー創設の検討、救急外来の看護配置基準設定など進めよ―日看協

2022.4.11.(月)

2022年2月から「看護職員の処遇改善」が始まっているが、対象が限定されている。すべての看護師について職務・職責に見合った報酬となるような賃金改善を行うべきである―。

特定行為研修ではカバーしきれない領域があり、また医師の指示を待たずに看護職員が医行為を実施できるようになることで「状態の悪化」を防止できるケースも少なくない。医師の指示を待たずに一定の医行為を実施できる「ナースプラクティショナー」(NP)制度化に向けた検討を早急に始めるべきである―。

外来看護配置基準(30対1)の見直し、とりわけ「救急外来の看護配置基準」設定を行う必要がある―。

日本看護協会は3月28日に、厚生労働省医政局の伊原和人局長に宛てて、2023年度の予算・政策においてこうした点を実現してほしいとの要望書を提出しました(日看協のサイトはこちら)。

特定行為研修を実施する施設の拡充、看護補助者の確保促進も強力に進めよ

日看協の伊原医政局長への要望内容は内容を多岐にわたり、その中でも(1)全看護職員の処遇改善(2)外来における人員配置強化(3)訪問看護総合支援機能制度化(4)タスク・シフト/シェア推進のための体制整備(5)ナースプラクティショナーの検討(6)救急外来の看護配置基準・評価の設定―などにGem Medは注目しました。

まず(1)では、▼訪問看護、クリニック、高齢者施設などでも看護職員が新型コロナウイルス感染症対応に奮闘している▼看護職員給与は「専門職としての職責・職務内容」に見合っていない―点を強調しています。

Gem Medでも報じているとおり、▼今年(2022年)2-9月を対象とする補助金今年(2022年)10月以降を対象とする診療報酬―によって「看護職員の処遇改善」支援がなされますが、対象は「診療報酬のA205【救急医療管理加算】を算定し、救急搬送件数が年間200台以上の医療機関、および3次救急を担う医療機関に勤務する看護職員等」に限定されます。このため10月以降の制度設計を行う中央社会保険医療協議会でも「看護職員を分断してしまうのではないか」との意見も出ています(関連記事はこちら)。

こうした点を踏まえて「すべての看護職員の賃金改善」を日看協は強く要望しています。ただし「財源をどう確保するか」「対象を広げれば、1人当たりの賃金改善度合いが小さくなる」などの難しい問題もある点に留意が必要でしょう。

全看護職員の賃金改善を要望(日看協要望1 220328)



また(2)では▼外来医療の機能分化等を議論する場への看護職員参画の明確化▼医療法の基準見直し―の2点を求めています。

後者の医療法では、一般病院・特定機能病院ともに「外来では患者30人に対し1人以上」(=30対1以上)の看護配置を求めています。しかし、この基準は1948年に制定されており、現下の医療提供体制を見れば、高度外来医療を提供する「特定機能病院」「地域医療支援病院」が設けられ、さらに来春(2023年春)には新たに「紹介受診重点医療機関」が誕生します。日看協では「一律の基準」を辞め、例えば「特定機能病院や地域医療支援病院などの外来機能を踏まえた看護配置基準を設定すべき」と訴えています(関連記事はこちら)。

病院機能に応じた外来看護配置基準設定を要望(日看協要望2 220328)



一方、(3)では、今後増大する訪問看護ニーズ(高齢化の進展、地域医療構想の実現(療養病棟に入院する医療区分1患者の70%を在宅等に移行する)、コロナ軽症患者の自宅・宿泊療養など)に対応するために「訪問看護総合支援機能」の制度化を求めるものです。具体的には▼事業所運営基盤の整備支援▼潜在看護師・プラチナナース(定年退職前後の看護職員)などの就業・転職支援▼教育・研修実施体制の組織化▼人材出向支援▼訪問看護事業所の開設支援▼新卒看護師採用に向けた取り組み▼訪問看護に関する情報分析―といった機能に日看協は期待を寄せています。

訪問看護総合支援機能の制度化を要望(日看協要望3 220328)



また(4)の「タスク・シフト/シェア」に関しては、▼特定行為研修を受講しやすくなるような体制整備・定員増に向けた財政措置▼看護補助者の確保―などを求めています。

2024年度からの「医師働き方改革」(新たな労働時間規制がスタート)に向け、医師から看護職員、とりわけ「特定行為研修を修了した看護師」へのタスク・シフト(業務移管)に注目が集まっています。ただし、看護職員もすでに多忙であるため、看護職員から「看護補助者」へのタスク・シフトも非常に重要です。

しかし医療現場を振り返ると、「特定行為研修を実施する指定研修機関が限られている(近隣に存在しない、定員が少ないなど)」「看護補助者の確保が非常に難しい」という問題があり、日看協はこうした状況の改善を厚労省に求めています。

なお、2022年度の診療報酬改定では【看護補助体制充実加算】が新設され、わずかながら「看護補助者への十分な教育・研修の実施、活用」の経済的評価がアップしています。こうした財源も活用し「看護補助者の給与増→応募増」につなげる取り組みが全国の医療機関で求められます(関連記事はこちら)。

特定行為研修実施機関(指定研修機関)の拡充等を要望(日看協要望4 220328)



さらに(5)のナースプラクティショナー(NP)は「医師の指示がなくとも、一定の医行為を実施できる看護職員」をさします。上述した「特定行為研修を修了した看護師」は「医師・歯科医師の包括的指示を受け、予め定められたプロトコルの中で医行為を実施できる」とされ、NPとは大きな違いがあります。

この点、日看協は「特定行為研修制度では対応できない医療ニーズがある」「医師の指示が得られずに状態が悪化する患者・利用者が少なくない」点に鑑み、早急に「NP制度創設」の検討を始めるべきと強く訴えています。

ナースプラクティショナー検討を要望(日看協要望5 220328)



また(6)では、救急医療現場の負担軽減に向けて▼救急外来における看護配置基準を設ける▼救命救急センターの充実段階評価において「看護職員配置」「専門性の高い看護師(専門看護師、認定看護師)の配置」に関する項目を追加する―ことを求めています(関連記事はこちら)。

救急外来の看護配置基準設定を要望(日看協要望6 220328)



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