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500床以上大病院の半数超で看護部長が副院長に、専門性の高い看護師が地域の感染対策リーダーとして活躍—日看協

2022.4.7.(木)

看護職員の離職率を見ると、新型コロナウイルス感染症のなかでも「低い水準」にとどまっていることが分かった。ただし、大都市とその近郊では比較的高い状況が続いている―。

病院全体の14%、500床以上の大病院に限れば半数超で看護職員(看護部長)が副院長として経営に携わっている―。

夜間の看護配置をさらに手厚くすることが、状態の不安定な患者対応にとって必須となっている―。

コロナ禍で「専門性の高い看護師」の7割が、地域の介護施設等における感染対策支援を行っており、「地域の感染対策のリーダー」として活躍している―。

日本看護協会が4月1日に公表した「2021年 病院看護・外来看護実態調査」結果速報から、このような状況が明らかになりました(日看協のサイトはこちら)。

看護職員の離職率はコロナ禍でも低い水準にとどまるが、大都市近郊で高い傾向続く

日看協は毎年、病院に勤務する看護職員の需給動向や労働状況、看護業務の実態などを調査(病院看護実態調査)しています(前年の状況に関する記事はこちらこちら)。

2021年調査では、例年と同じく(1)看護職員の離職率(2)給与状況―などを調べるとともに、「新型コロナウイルス感染症対応」や「外来における看護職員配置や看護機能」などに関する実態も調査しています(名称も変更)。ポイントを絞って調査結果を眺めてみましょう。



まず(1)の離職率について見てみます。

今年度(2022年度)からいわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になりはじめ、2025年度にはすべて後期高齢者となります。このため、地域の医療・介護ニーズが今後しばらくの間、急速に増加していきます。その後、2040年にかけて高齢者の増加スピードは鈍化するものの、高齢者を支える現役世代の数が急速に減少します。こうした状況の中では「医療・介護提供体制の確保」が極めて重大な課題となり、「看護職員の離職防止」が重要テーマの1つとなるのです。

2020年度における看護職の離職率を見ると、▼正規雇用で10.6%(前年度から0.9ポイント低下)▼新卒で8.2%(同0.4ポイント低下)―などと「低い水準」となりました。2020年度にはコロナ感染症が流行し「看護職員の離職が増加するのではないか」と見られましたが、看護職員の「患者・国民を守らなければならない」という強い意志が伺えます。ただし「バーンアウト」(いわゆる燃え尽き)が生じないような支援が必要でしょう。

病院看護職員の離職率の推移(2021年病院看護・外来看護実態調査4 220401)



病院の規模別に見ると次のような状況です。
▼99床以下:正規雇用11.7%(前年度から1.8ポイント低下)・新卒10.5%(同3.3ポイント低下)
▼100-199床:正規雇用11.7%(同1.2ポイント低下)・新卒11.3%(同1.1ポイント上昇)
▼200-299床:正規雇用11.4%(同1.0ポイント低下)・新卒8.3%(同0.1ポイント上昇)
▼300-399床:正規雇用10.7%(同1.1ポイント低下)・新卒9.3%(同1.3ポイント上昇)
▼400-499床:正規雇用10.0%(同増減なし)・新卒8.2%(同0.6ポイント上昇)
▼500床以上:正規雇用9.8%(同0.9ポイント低下)・新卒7.2%(同1.3ポイント低下)

正規雇用スタッフでは「概ね病床規模に関わらず低下」していますが、新卒スタッフでは「規模による違い」(100床未満の小規模病院と、500以上の大規模病院で低下し、中間規模で上昇)が見られます。教育体制の違いなど、背景を詳細に分析していく必要がありそうです。



また設置主体別に「離職率の高い病院」を見ると、正規雇用では▼医療法人:13.6%(前年度に比べて0.8ポイント低下)▼その他公的(日赤や済生会など以外):13.0%(同4.7ポイント低下)▼私立学校法人:12.1%(同増減なし)▼公益社団・財団法人:12.0%(同0.2ポイント低下)▼社会福祉法人:12.0%(同1.2ポイント上昇)―などです。前年に比べて「個人病院」の離職率が大幅に低下しています。

また新卒では、▼その他の法人(一般社団法人・財団法人、宗教法人):12.9%(前年度に比べて3.7ポイント上昇)▼公益社団・財団法人:10.5%(同2.0ポイント上昇)▼医療法人:9.4%(同0.6ポイント低下)―などで離職率が高くなりました。



逆に離職率が低いのは、正規雇用では▼公立(自治体立、地方独立行政法人など):7.5%(前年度に比べ1.0ポイント低下)▼会社:8.3%(同0.6ポイント低下)▼日赤:9.6%(同0.2ポイント上昇)―など、新卒では▼その他公的:4.5%(同0.4ポイント低下)▼医療生協:4.9%(同3.4ポイント低下)▼社会保家団体(健保組合、共済組合立など):6.7%(同1.9ポイント低下)▼厚生連:6.9%(同1.2ポイント上昇)―などとなりました。どういった取り組みにより離職防止につなげているのかに注目が集まります。

病床開設主体別に見た看護職員の「離職率」(2021年病院看護・外来看護実態調査5 220401)



さらに都道府県別に見ると、離職率が高いのは、正規雇用では▼神奈川県:14.0%(前年度に比べて0.2ポイント上昇)▼東京都:13.4%(同1.5ポイント低下)▼埼玉県:13.0%(同0.5ポイント低下)―など、新卒では▼栃木県:15.0%(同5.1ポイント上昇)▼香川県:14.5%(同2.3ポイント上昇)▼兵庫県:10.7%(同0.4ポイント上昇)―などです。

逆に離職率が低いのは、正規雇用では▼岩手県:6.1%(前年度に比べ0.5ポイント上昇)▼山形県:6.1%(同1.4ポイント低下)▼島根県:6.5%(同1.0ポイント低下)―など、新卒では▼富山県:2.9%(同0.4ポイント低下)▼山形県:4.7%(同1.6ポイント上昇)▼鳥取県:4.7%(同1.8ポイント低下)▼島根県:4.7%(同1.5ポイント低下)▼愛媛県4.7%(同8.0ポイント低下)▼鹿児島県:4.7%(同1.7ポイント低下)―などとなっています。

正規雇用では、東京や大阪などの大都市とその周辺で高く、「転職しやすさ」が離職率に大きく関係しているようです。

500床以上の大病院の半数超で、看護職員(看護部長)が副院長を兼ねる

また、看護職員の「副院長への登用」状況をみると、2021年は14.0%で、2015年調査に比べて3.9ポイント上昇しました。

病床規模別にみると、▼500床以上:51.2%(2015年調査に比べて13.2ポイント上昇)▼400-499床:20.6%(同0.2ポイント上昇)▼300-399床:16.3%(同5.7ポイント上昇)▼200-299床:10.3%(同0.8ポイント低下)▼100-199床:8.0%(同2.5ポイント上昇)▼99床以下:6.4%(同3.9ポイント上昇)―という状況です。

看護職員の「病院経営への関与」が大規模病院を中心に急速に進んできている状況が伺えます(関連記事はこちら)。

看護部長の「副院長」登用状況(2021年病院看護・外来看護実態調査3 220401)



関連しての「看護職員の給与」を見てみると、次のような状況です。

●2021年度採用の新卒看護師の初任給
▽高卒+3年課程:基本給(平均):20万3445円(前年度調査から1156円上昇)、税込給与(平均):25万9233円(同3044円低下)
▽大卒:基本給(平均):20万9990円(同1072円上昇)、税込給与(平均):26万7440円(同2852円低下)

●勤続10年(31-32歳)・非管理職の給与
▽基本給(平均):24万8149円(同3562円上昇)、税込給与(平均):32万846円(同1930円上昇)

看護職員の平均給与の推移(2021年病院看護・外来看護実態調査6 220401)

状態の不安定な患者への夜間対応、さらなる「手厚い看護配置」が必要

また、看護職員の働き方改革の一環として、急性期一般病棟における「夜間看護配置」と「夜間インシデント」との関係を見ると、「夜間看護配置が手厚いほど、インシデントが多くなる」状況が伺えました。

日看協では、「『夜間の看護配置を手厚くする必要のある患者』に対し、看護配置を一定程度手厚く配置しているが、それでもインシデントが多く発生する」と分析。つまり「状態の不安定な患者には、さらに手厚い夜間看護配置をしなければ危険である」ことを物語っています。事故防止のためには、例えば診療報酬上の手当てをさらに行い「より手厚い夜間看護配置」を実現することなどが必要となってきそうです。

「夜間看護配置」と「夜間インシデント」との関係(2021年病院看護・外来看護実態調査7 220401)



また関連して「家族介護を行う職員への柔軟な対応」状況を見ると、▼短時間勤務:79.0%(利用実績ありが43.8%)▼フレックスタイム制:19.5%(同10.9%)▼始業時間・終業時間の変更:49.0%(同28.9%)▼介護サービス利用に対する費用補助:9.6%(同4.7%)―となっています(複数回答)。

公的介護保険が2000年度から施行されていますが、「家族介護」が依然として必要な状況です。また、高齢化の進展とともに公的介護費用が増加する中では、「家族介護」の重要性が増していくことも否定できません。多くの職場で「家族介護」と「仕事」との両立が可能な仕組みが準備されることに期待が集まります。

7割の病院で「専門性の高い看護師」の外来関与がなされている

次に「外来看護」について見てみましょう。

医療法では、一般病院・特定機能病院ともに「30対1以上」の看護師・准看護師配置を求めています。

病床規模別に病院の「一般外来における看護配置」(患者/看護職員比率)を見ると、▼99床以下:11.7対1▼100-199床:12.3対1▼200-299床:14.0対1▼300-399床:16.6対1▼400-499床:19.3対1▼500床以上:24.1対1―となっており、「大病院ほど外来看護配置が薄くなる」状況が伺えます。日看協では、小規模病院においては「診察室への医師事務作業補助者や看護補助者の配置が手薄い」(確保が困難)、「トリアージ実施目的での看護職員が配置されていない」などの背景もあると分析。

「大病院ほど外来の看護職員負担が大きい」とも言え(例えば1人の看護職員が複数の診察室に対応している)、より詳細な分析等(業務負担と外来看護配置との関係など)に期待が集まります。

病床規模別の「外来看護配置状況」(2021年病院看護・外来看護実態調査8 220401)



また、専門性の高い看護師(専門看護師(CNS)・認定看護師(CN)など)の一般外来への配置状況を見ると、▼CNS・CN(ダブルホルダー)の配置:28.4%の病院▼CNSのみ配置:33.2%の病院▼CNのみ配置:64.0%▼特定行為研修修了者のみ配置:34.6―となっています。ただし日看協では「CNS等が一般外来以外に配属された場合も、看護外来等で活動していると見込まれ、全体の7割程度の病院で専門性の高い看護師が外来患者への対応を行っている」と見ています。外来医療の質向上に向けて「専門性の高い看護師」の活躍がさらに進むことが期待されます。

専門性の高い看護師の配置状況(2021年病院看護・外来看護実態調査9 220401)



さらに、看護職員が「一般外来において何を実施できているのか、逆に何を実施できていないのか」を見ると、▼患者の情報収集・アセスメント▼患者・家族からの電話対応▼入院前の説明―などは実施できているものの、▼ACPに関する意思決定(人生の最終段階でどのような医療・ケアを受けたいか、逆に受けたくないかなど)支援▼重症化予防などに向けた受診日以外の健康状態確認や療養指導▼退院前訪問▼他施設の指導やコンサルテーション▼地域住民等への健康教育―については「実施できていない」との声が多くなっています。



他方、「看護外来」(一定の時間と場を確保して、生活に伴う症状の改善や自己管理の支援等を医師や他職種と連携して『看護職が主導』して行う外来)の開設状況を見ると、▼全体:36.9%(前年度に比べて8.5ポイント増加)▼99床以下:11.4%(同2.7ポイント増加)▼100-199床:22.2%(同4.5ポイント増加)▼200-299床:38.9%(同11.4ポイント増加)▼300-399床:62.2%(同9.5ポイント増加)▼400-499床:76.1%(同8.7ポイント増加)▼500床以上:90.3%(同6.1ポイント増加)―となりました。大規模病院ほど「看護外来」開設が進んでいます。

また「看護外来などの今後」に関しては、▼外来看護職員の人材育成▼退院支援▼入院支援▼タスクシフト・シェアの推進—などを重視する声が多く、また「外来看護職員の配置人数の増強」を上げる声も小さくありません。



なお、病院の看護師によりICT等を活用したコンサルテーション先として「訪問看護ステーション」「居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)」「介護施設」を上げる声が多くなっており、500床以上病院・400床台病院といった大規模病院の9割が「訪問看護ステーションを支援している」点に注目が集まります。最新の知識や技術が、大病院から訪問看護ステーションに伝授されることで、「地域全体の看護レベルが向上する」と期待されます。

病床規模別の「ICT等を活用したコンサル先」(2021年病院看護・外来看護実態調査10 220401)

専門性の高い看護師の7割が、地域の介護施設などにおける感染対策支援にも尽力

最後にコロナ感染症の対応状況などを見ると、次のような点が明らかになっています。

▽大規模病院ほど感染管理に関する専門性の高い看護師配置が進んでおり、また専門性の高い看護師は7割が「地域の介護・福祉施設に対する支援」を実施している

感染管理にかかる専門性の高い看護師の配置状況(2021年病院看護・外来看護実態調査1 220401)

専門性の高い看護師による「地域の感染対策支援」状況置状況(2021年病院看護・外来看護実態調査2 220401)



▽コロナ感染症に関する「困りごと」としては、▼コロナ感染症以外の患者の減少▼発熱外来設置のための体制整備▼コロナ感染・自宅待機(濃厚接触など)に伴う「働けなくなる看護職員」の増加—などが多い



前者からは「専門性の高い看護師」が地域全体の感染管理のリーダー役となっていることを確認できます。



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