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GemMed塾 ミニウェビナー DPC委員会のありかたとは?

オンライン資格確認等システムの導入義務化に経過措置を設け、加算を拡充、後発品使用体制加算なども増点—中医協総会

2022.12.23.(金)

オンライン資格確認等システムの導入が、医療機関・薬局の責に帰せない状況で遅れている状況もあることに鑑み、「オンライン資格確認等システムの導入義務」(一部例外を除き、来年(2023年)4月から義務)について一定の経過措置を設ける—。

オンライン資格確認の導入・普及を促進するために、【医療情報・システム基盤整備体制充実加算】について、マイナンバーカードによる医療機関等受診をしない患者を対象として、▼点数の引き上げ▼再診時にも算定できる区分の新設▼オンライン請求要件の一部緩和—を時限的に行う―。

医薬品の供給不安が長引く中、医療現場の「医薬品確保、処方変更などの手間・負担」が増大している点を踏まえ、▼一般名処方加算▼後発医薬品使用体制加算▼外来後発医薬品使用体制加算▼調剤薬局の地域支援体制加算—について、時限的な増点を行う―。

12月23日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こうした内容の短冊が厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨課長から提示され、原案どおり答申が行われました。今後、細部を厚生労働省で詰め、年明け1月(2023年1月)を目途に関係法令の改正を行い、4月から施行されます(加算充実は来年(2023年)12月までの臨時的な措置)。

なお、小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)は「やむを得ずタイトな日程になり申し訳ない。本来であれば、重要な問題について時間をかけて議論する必要があった」「医療DXについて、国民の理解・実感が伴わなければ先に進まない。中医協も状況を検証し、問題があれば改めていくことが求められる」とコメントしています。

答申書を本田顕子厚生労働大臣政務官(写真向かって左)に手渡す、小塩隆士・中医協会長(一橋大学経済研究所教授、写真向かって左から2人目)と公益代表の秋山美紀委員(慶應義塾大学環境情報学部教授、写真中央)・関ふ佐子委員(横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授、写真向かって右から2人目)・中村洋委員(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授、写真向かって右)

オンライン資格確認等システム、やむを得ない事情があれば「4月導入義務」を延期可

Gem Medで報じているとおり、今夏(2022年夏)の中医協総会で、▼保険医療機関においてはオンライン資格確認等システムの導入を義務化する(療養担当規則などの見直し)▼オンライン資格確認等システムの導入を後押しするために【医療情報・システム基盤整備体制充実加算】を新設する—という見直しが行われました(関連記事はこちらこちらこちら)。

しかし、年末(2022年12月)の状況を見ると「オンライン資格確認等システムの導入が遅れている」こと、「導入遅れの事情をみると、やむを得ないものも少なくない」ことが分かりました(関連記事はこちら)。

こうした中で「保険医療機関におけるオンライン資格確認等システムの導入、原則義務化」を厳格に進めれば、地域医療に穴が開いてしまうと懸念されます。

そこで厚労省保険局医療介護連携政策課の水谷忠由課長は、次のような経過措置を設けることを提案(関連記事はこちら)。そこで概ねの合意が得られたことを踏まえ、12月23日の中医協総会では、眞鍋医療課長から、療養担当規則等を次のように見直す考えが改めて示されました。

(1)2023年2月末までにベンダーと契約締結したが、導入に必要なシステム整備が未完了(5万6000施設程度と見込まれる)
→システム整備が完了する日まで(遅くとも2023年9月まで)
→医療情報化支援基金による補助の拡充措置も2023年9月末の事業完了まで継続

(2)オンライン資格確認等システムに接続可能な光回線のネットワーク環境が整備されていない(離島、山間地のほか、建物が古いなど、施設数は不明)
→光回線のネットワークが整備されてから「6か月」まで
→医療情報化支援基金による補助の拡充措置は2024年3月末事業完了まで継続
→インターネット回線を用いる方法(IP-SEC+KE方式)もあり、その導入も働きかける

(3)訪問診療のみを提供する(数百施設程度と見込まれる)
→居宅同意取得型のオンライン資格確認等システムの運用開始(2024年4月)まで(関連記事はこちら
→財政支援は、2024年3月末補助交付まで実施

(4)改築工事中、臨時施設(施設数は不明)
→改築工事が完了、臨時施設が終了するまで
→来年(2023年)2月末までに契約し同年9月末までに事業完了する場合には、医療情報化支援基金による補助の拡充措置の対象とする

(5)廃止・休止に関する計画を定めている(施設数は不明)
→廃止・休止に関する計画を提出のうえ、廃止・休止の間まで(遅くとも2024年秋まで)
→来年(2023年)2月末までに契約し同年9月末までに事業完了する場合には、医療情報化支援基金による補助の拡充措置の対象とする

(6)その他特に困難な事情がある(例外措置(紙レセ対応)または上記(a)から(e)と同視できるかを個別に判断する、施設数は不明)
→特に困難な事情が解消されるまで
→来年(2023年)2月末までに契約し同年9月末までに事業完了する場合には、医療情報化支援基金による補助の拡充措置の対象とする

経過措置1

経過措置2

経過措置3

経過措置4

経過措置5



経過措置の適用を希望する医療機関等は、地方厚生局に対し「理由と、状況が解消する予定期限」をオンライン申告。厚生局を通じて厚労省が「やむを得ない」と判断した場合に経過措置が適用されます。また厚生局・厚労省・社会保険診療報酬支払基金(オンライン資格確認等システムの導入をサポートしている)で情報連携し、必要な対応・支援も行われます。

なお、前回会合で「可能な限り具体化し、限定適用せよ」と支払側から指摘された(6)「その他特に困難な事情がある」ケースについて、水谷医療介護連携政策課長は次のような考えを示しました。
▼自然災害等により継続的に導入が困難となる場合
▼高齢の医師等でレセプト取扱件数が少ない場合 (目安として、来年(2023年)4月時点で常勤医師が高齢(70歳以上が該当、60-69歳の医師については個別に判断)で、月平均レセプト件数が50件以下)
▼その他、(1)から(5)と同視できる特に困難な事情がある場合

高齢医師・レセ件数の状況



この点、「経過措置の再延長は許されない」などの注文が支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)や安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)らからついたことを踏まえ、「原案通り了承する」とともに、次のような附帯意見が付されました。支払側の松本真人委員は「附帯意見も答申と同じく重く受け止め、確実な実行を要望する」と強く求めています(後述する「附帯意見」すべてについて)。

▽本経過措置は真にやむを得ない事情に限定して対象を明確化し、最小限に留めるものであるという前提の下、延長を行わない
▽(1)の「契約を締結したがシステム整備未完了の場合の経過措置」適用に当たっては、医療機関・薬局、システム事業者、導入支援事業者に対し、経過措置は期限を区切った導入加速化を目指したものであるとの趣旨を周知徹底し、更なる導入に向けた取り組みを行い、「2023年9月末までにシステム整備を完了」させる
▽(6)の「その他特に困難な事情がある場合」については、具体例を明確化し、特に限定的に扱う

オンライン資格確認等の推進に向け、医療情報・システム基盤整備体制充実加を拡充

また、オンライン資格確認等システムの導入を加速化されるために、さらに深化・複雑化する診療情報の把握に医療現場の負担・手間が大きく増加している点に報いるために、加藤勝信厚生労働大臣・鈴木俊一財務大臣による来年度(2023年度)予算案編成に関する折衝で、「2023年12月までの期間限定で▼初診時・調剤時における追加の加算▼再診時における加算—を設定などする」ことが決まりました。

眞鍋医療課長は、この合意に沿って、【医療情報・システム基盤整備体制充実加算】を次のように見直す考えを提示。

(1)初診時・調剤時の加算の特例
一定の施設基準を満たす保険医療機関・保険薬局では、初診・調剤時の加算点数を引き上げる
▽(医科・歯科の初診時)医療情報・システム基盤整備体制充実加算1(マイナンバーカードの利用なし):現行「4点」 → 来年(2023年)4―12月「6点」
▽(調剤)医療情報・システム基盤整備体制充実加算1(マイナンバーカードの利用なし):現行:「3点(6か月に1回)」 → 来年(2023年)4―12月「4点」

(2)再診時の加算の特例
一定の施設基準を満たす保険医療機関を受診した患者に対し、再診を行った場合における評価を新設する(患者の薬剤情報、その他、必要に応じて健診情報等を確認することが必要)
▽(再診時)医療情報・システム基盤整備体制充実加算3(マイナンバーカードの利用なし): 来年(2023年)に2点(1か月に1回)

(3)加算要件の特例
現行「オンライン請求を行っていること」を要件としているが、「オンライン請求を来年(2023年12月31日までに開始する旨を届け出た保険医療機関・保険薬局は、来年(2023年)4月1日から同年12月31日までの間に限り、この要件を満たすものと見做す)との特例を設ける

【施設基準】
▽次の事項を医療機関・薬局の見やすい場所およびホームページ等に掲示する
・オンライン請求を行っている(上記(3)のように時限的に緩和)
・オンライン資格確認を行う体制を有している
・オンライン資格確認等体制に関する事項、および質の高い診療を実施するための十分な情報を取得・活用して診療を行う



マイナンバーカードを利用して医療機関等を受診する場合には「点数の引き上げ」などは行われません(従来どおり、医科・歯科では初診時「2点」を算定、再診時の特例は設けず、調剤では6か月に1回「1点」を算定)。

医療情報・システム基盤整備充実体制加算の見直し(1)

医療情報・システム基盤整備充実体制加算の見直し(2)



この提案内容について、診療側委員は歓迎していますが、支払側はやはり患者負担増に懸念の声をあげました。

このため、次のような附帯意見を付したうえで「原案を了承する」に至っています。

▽来年(2023年)12月末までの措置とし、延長は行わない
▽オンライン請求の導入やその体制整備もあわせて強力に促進する
本年(2022年)8月の附帯意見に照らし、早急に患者・国民の声を丁寧かつ幅広く聴き、初診時・調剤時・再診時の「取得した医療情報の活用による医療の質の向上の状況」等について十分に調査・検証を行うとともに、課題が把握された場合には速やかに中医協へ報告の上、対応を検討する
▽患者がマイナンバーカードを用いて医療機関等を受診することで、健康・医療情報に関する多くのデータに基づいた安心・安全でより良い医療を受けることが可能になるなど様々なメリットがあることについて、広く患者・国民が理解し、実感できるよう、関係者が連携して周知等に取り組む

医薬品供給不安の中、特段の患者対応を行う医療機関・薬局に時限的な「上乗せ加算」

一方、医薬品の供給不安が長引く中で、医療現場には「医薬品の確保、処方変更の手間」などの負担が非常に大きくなっているとの声を受け、厚労相・財務相間で「▼一般名処方・後発品の使用体制▼薬局における地域支援体制—の加算について、2023年12月までの期間限定で「上乗せ」を行う」ことが決定しています。

眞鍋医療課長は、この合意に沿って、次のように加算を臨時特例的に見直す考えを提示しました。

医薬品安定供給問題を踏まえた加算見直しの全体像



(1)一般名処方加算
追加の施設基準を満たす医療機関では、来年(2023年)4―12月「2点」の上乗せ加算を行う(特別の取り組みを行う医療機関では、通常の一般名加算+追加の加算を算定可)

(追加の施設基準)
▽薬剤の一般的名称を記載する処方箋を交付する場合には、医薬品の供給状況等を踏まえつつ一般名処方の趣旨を患者に十分に説明することについて保険医療機関の見やすい場所に掲示する

一般名処方加算の見直し



(2)後発医薬品使用体制加算
追加の施設基準を満たす医療機関では、来年(2023年)4―12月「20点」の上乗せ加算を行う(特別の取り組みを行う医療機関では、通常の後発医薬品使用体制加算+追加の加算を算定可)

(追加の施設基準)
(a)後発医薬品使用体制加算に係る届け出を行っている保険医療機関である
(b)医薬品の供給が不足等した場合に治療計画等の見直しを行うなど、適切に対応する体制を有している
(c)(a)(b)の体制に関する事項、医薬品の供給状況によって投与する薬剤を変更する可能性があること、変更する場合には入院患者に十分に説明することについて医療機関の見やすい場所に掲示する

後発医薬品使用体制加算の見直し



(3)外来後発医薬品使用体制加算
追加の施設基準を満たす医療機関では、来年(2023年)4―12月「2点」の上乗せ加算を行う(特別の取り組みを行う医療機関では、通常の外来後発医薬品使用体制加算+追加の加算を算定可)

(追加の施設基準)
(a)後発医薬品使用体制加算に係る届け出を行っている保険医療機関である
(b)医薬品の供給が不足等した場合に、医薬品の処方等の変更などに関して十分な対応ができる体制を有している
(c)(a)(b)の体制に関する事項、医薬品の供給状況によって投与する薬剤を変更する可能性があること、変更する場合には患者に十分に説明することについて医療機関の見やすい場所に掲示する

外来後発医薬品使用体制加算の見直し



(4)地域支援体制加算
追加の施設基準を満たす薬局では、来年(2023年)4―12月「1点、または3点」の上乗せ加算を行う(特別の取り組みを行う薬局では、通常の地域支援体制加算+追加の加算を算定可)

(追加の施設基準)
(a)地域支援体制加算に係る届け出を行っている保険薬局である
(b)後発医薬品調剤体制加算に係る届け出を行っている保険薬局である
(c)地域の保険医療機関・同一グループではない保険薬局に対する在庫状況の共有、医薬品融通などを行っている(取り組み例、▼地域の薬局間での医薬品備蓄状況の共有と医薬品の融通▼医療機関への情報提供(医薬品供給の状況、自局の在庫状況)、処方内容の調整▼医薬品の供給情報等に関する行政機関(都道府県、保健所等)との連携)
(d)に係る取組を実施していることについて当該薬局の見やすい場所に掲示する

地域支援体制加算の見直し



この提案についても診療側委員は歓迎していますが、支払側委員は「医薬品の供給不安の影響を最も受けているのは患者である。その患者に負担増を求めることは筋が違う」と改めて難色を示しました。

このため次のような附帯意見を付したうえで「原案どおり承認する」こととなりました。

▽▽来年(2023年)12月末までの措置とし、延長は行わない
▽オンライン請求の導入やその体制整備もあわせて強力に促進する
▽患者・国民の声をよく聴き、実施状況・安定供給問題への対応状況について調査・検証を行い、課題 把握された場合には速やかに中医協に報告の上、対応を検討する
▽供給が不安定な中にあっても医薬品を必要とする患者に安定的に医薬品を供給できる方策について、患者負担との関係も念頭に置きつつ、安定供給問題の根本的解決に向け、有識者検討会の議論も踏まえながら、十分かつ早期に検討する
▽医薬品の適正使用を含め、限りある医療資源を有効に活用する取り組みを積極的に推進する



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