オンライン資格確認等システム導入にとどまらず、「過去の診療情報を閲覧可能な体制」を多くの医療機関等で整えよ—中医協・総会
2022.9.14.(水)
オンライン資格確認等システムを導入していても、「患者の過去の診療情報閲覧」体制が整っていない医療機関等もある。こうした医療機関等では新設される【医療情報・システム基盤整備体制充実加算】が取得できないことを周知する必要がある。さらに質の高い医療提供を目指し、また医療DXを推進していくために「患者の過去の診療情報閲覧」体制を医療機関等で整えていく必要がある—。
9月14日に開催された中央社会保険医療協議会・総会において、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)からこうした訴えがありました。これを受け、厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨課長も、加算取得要件の事実確認(患者の過去の診療情報閲覧体制が整っていなければ取得不可)を行うとともに、医療機関等のシステム改修補助などを通じて「患者の過去の診療情報閲覧」体制整備を国としても進めていく考えを強調しています。
過去の診療情報閲覧可能体制なければ、医療情報・システム基盤整備体制充実加算は取得×
Gem Medでも繰り返し報じているとおり、オンライン資格確認等システムのインフラを活用して「患者の過去の診療情報」を全国の医療機関等で閲覧・共有可能とし、これを診療内容に活かす取り組みが進められています。診療報酬面では、次のような手当てが行われます(関連記事はこちら)。
(1)来年(2023年)4月から、保険医療機関等では「オンライン資格確認等システムの導入」を原則義務化する
(2)本年(2022年)10月から、オンライン資格確認等システムのインフラを活用して「患者の過去の診療情報」を閲覧し、診療に活かす取り組みを【医療情報・システム基盤整備体制充実加算】として評価する(【電子的保健医療情報活用加算】は9月いっぱいで廃止)
この点、9月8日の社会保障審議会・医療部会、9月9日の社会保障審議会・医療保険部会において「オンライン資格確認等システムを導入しているが、『過去の診療情報』を閲覧するか否かの確認を問われない」医療機関において、上記(1)(2)がどう取り扱われるのかが問題になりました。
院内において「過去の診療情報を閲覧する」体制を整えるためには、大規模なシステム改修が必要となります(とりわけ大病院では大掛かりなシステム改修が必要となる)。このため、医療機関の中には、「オンライン資格確認等システムは導入済であるが、「過去の診療情報を閲覧する体制は整えていない」ところもあるのです。
この点について眞鍋医療会長は、9月9日の医療保険部会および9月14日の中医協において、「過去の診療情報を閲覧する体制は整えていない場合には、【医療情報・システム基盤整備体制充実加算】の施設基準を満たしておらず、同加算を取得できない」旨を確認しています。
支払側の松本委員は、こうした説明を踏まえ「過去の診療情報を閲覧できる体制が整っていなければ、患者が質の高い医療を受けられない。厚労省においては『過去の診療情報を閲覧可能な体制が整っていなければ、加算の取得ができない』旨を医療機関等に周知し、医療機関等では『過去の診療情報を閲覧可能な体制』を早急に整備していく必要がある」と強く訴えました。
眞鍋医療課長も、「オンライン資格確認等システムの導入にとどまらず、新たな【医療情報・システム基盤整備体制充実加算】や、システム改修の補助などを通じて『過去の診療情報を閲覧可能な体制』の整備を医療機関等に進めてもらう」と述べ、松本委員の見解に賛意を示しています。
なお、上記(1)(2)と、オンライン資格確認等システム導入・過去の診療情報を閲覧可能な体制との関係は次のように整理できます。
▽オンライン資格確認等システム導入:×
▽過去の診療情報を閲覧可能な体制:×
↓
(1)を満たさず(療担違反、紙レセ医療機関以外では最悪「保険指定取り消し」もありうる)、(2)の加算取得×
▽オンライン資格確認等システム導入:○
▽過去の診療情報を閲覧可能な体制:×
↓
(1)は満たす(療担違反にはならない)が、(2)の加算取得×
▽オンライン資格確認等システム導入:○
▽過去の診療情報を閲覧可能な体制:○
↓
(1) を満たし(療担違反にはならない)、(2)の加算取得も○(他の基準、要件を満たす必要がある)
現在はもちろん、将来における「より良い医療の提供」に向け、全国の医療機関や薬局では、早急に「オンライン資格確認等システム導入」「過去の診療情報を閲覧可能な体制の整備」に向けて取り組むことが期待されています(関連記事はこちら)。
咽頭画像所見などを分析し「インフルエンザの診断補助」する検査などを保険適用×
9月12日の中医協総会では、▼新たな臨床検査の保険適用▼新たな医療機器の保険適用▼再審査の評価終了後の最適使用推進ガイドラインの改定—などを了承したほか、先進医療・DPC対象病院の合併・2021年7月における施設基準届け出状況などに関する報告を受けました。
施設基準届け出状況は、毎年7月1日の状況を集計して中医協総会に報告するもので、今回は昨年(2021年)7月1日時点の状況が示されました。この点、支払側の松本委員は「機能強化加算やオンライン診療料などの届け出件数が増えていることがわかるが、2024年度診療報酬改定に向け『届け出の割合』などの分析的診療も今後提示してほしい」と要望しています。
【新たに保険適用される臨床検査】(本年(2022年)10月保険適用予定)
▽百脳脊髄液中の細菌、ウイルスおよび酵母様真菌を検出する「FilmArray髄膜炎・脳炎 パネル」
▽▼抗がん剤「ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)」(キイトルーダ)の固形がん患者への適応判定補助▼大腸がんにおけるリンチ症候群の診断補助▼大腸がんにおける化学療法選択補助を行う「ベンタナOptiView[MLH1(M1)、PMS2(A16-4)、MSH2(G219-1129)、MSH6(SP93)]」
【新たに保険適用される医療機器】(本年(2022年)12月保険適用予定)
▽咽頭画像の撮影・撮影された画像上のリンパ組織等の咽頭所見と診療情報を併せて解析し、インフルエンザウイルス感染症診断を補助する「nodoca(ノドカ)」:特定保険医療材料とせず、技術料で評価
▽先端部に超音波を送受信するトランスデューサを内蔵し、心臓の構造・血流の画像化を行うカテーテル「再製造心腔内超音波カテーテルV(日本ストライカー)」:償還価格20万9000円
【再審査の評価終了後の最適使用推進ガイドラインの改定】
▽再審査期間を終え、有効性・安全性に関する情報が十分に蓄積された品目および効能・効果に関しては「最適使用推進ガイドラインの簡略化」を行う
【新たな先進医療】
▽EGFR遺伝子増幅陽性切除不能の食道・胃・小腸・尿路上皮・乳がんに対するネシツムマブ(販売名:ポートラーザ点滴静注液800mg、切除不能な進行・再発の扁平上皮非小細胞肺がんに効能・効果が認められている)投与療法(名古屋大学医学部附属病院で実施)
▽切除不能な肝門部領域胆管がんに対する生体肝移植(熊本大学病院で実施)
【DPC対象病院の合併】
▽市立川西病院(兵庫県川西市)と医療法人協和会協立病院(同)が合併し、本年(2022年)9月1日から「川西市立総合医療センター」(同)となる。合併後もDPCを継続する
【関連記事】
看護職員処遇改善評価料の詳細を提示、本年(2022年)10月1日算定開始のためには「10月20日までに届け出」を—厚労省
本年(2022年)10月からの【医療情報・システム基盤整備体制充実加算】の詳細提示、初診時の「標準的な問診票」も示す—厚労省
オンライン資格確認等システム、来年(2023年)4月からの原則義務化に向け「一刻も早い対応」が必須—厚労省・三師会
本日(2022年8月24日)18時半から、オンライン資格確認等システムのWEB説明会—厚労省
訪問診療や訪問看護等、初回訪問時に「過去の診療情報共有」等の包括同意を取得する仕組みに—社保審・医療保険部会(2)
オンライン資格確認等システム導入の経費補助を充実、医療機関等は「早期の申し込み、システム改修」に努めよ—厚労省
【看護職員処遇改善評価料】を答申、病院ごとの看護職員数・入院患者数に応じた点数を設定—中医協総会(2)
オンライン資格確認等システムを2023年度から保険医療機関等に義務化、導入促進に向け「初診料の新加算」創設—中医協総会(1)
オンライン資格確認等システム、2023年4月から紙レセ医療機関等以外は「原則、導入義務」へ—中医協総会(2)
【看護職員処遇改善評価料】を新設し、コロナ対応病院に勤務する看護職員等の賃金引き上げを推進—中医協総会(1)
診療報酬による看護職員処遇改善、「看護職員等の処遇が確実に継続的に改善される」ためのルール等設定へ—中医協
2024年度の診療報酬・介護報酬同時改定に向け、早くも入院・外来の調査分析項目の大枠を決定—入院外来医療分科会(2)
看護職員の処遇改善、「病院の必要額>報酬額」となるケースに、どこまで・どのように対応すべきか―入院外来医療分科会(1)
看護職員の処遇改善、外来で対応せず「入院の診療報酬上乗せ」のみのほうが患者に分かりやすいのではないか—中医協(1)
「初再診料への上乗せ」と「入院料への上乗せ」組み合わせ、看護職員処遇改善に対応してはどうか―入院外来医療分科会
「看護職員の処遇改善」に向けた診療報酬、負担増となる患者への合理的かつ納得ゆく説明も極めて重要—中医協(1)
「看護職員の処遇改善」への診療報酬対応、無理筋であると病院団体から不満噴出―日病協・小山議長、山本副議長
病院ごとに「看護配置と患者数」などの関係を見て、看護職員処遇改善の診療報酬対応検討―入院外来医療分科会
看護職員等の処遇改善、病院の必要額と診療報酬との間に生じる過不足をどう考えていくかが最大論点—中医協総会
「看護職員の処遇改善」に向けた診療報酬対応、「消費税対応の二の舞」となることを懸念―日病協
感染対策、ICU等の早期離床・リハ加算、MFICUの成育連携支援加算、湿布薬上限など明確化―疑義解釈6【2022年度診療報酬改定】
感染対策向上加算等の研修や訓練・カンファレンス実績、届け出時点では不要―疑義解釈4【2022年度診療報酬改定】
10月からの看護職員処遇改善、「看護師数×1万2000円」財源を診療報酬でどう配分すべきか―入院外来医療分科会
外来腫瘍化学療法診療料とがん患者指導料「ハ」、同一患者に併算定できない―疑義解釈3【2022年度診療報酬改定】
一般病棟・ICUの看護必要度、2022年度診療報酬改定踏まえて詳細を明示―疑義解釈1【2022年度診療報酬改定】(3)
地域ごとに「面で感染症に対応できる体制」構築のための【感染対策向上加算】―疑義解釈1【2022年度診療報酬改定】(2)
急性期充実体制加算の緊急手術・看護必要度II・敷地内薬局NG等の考え方整理―疑義解釈1【2022年度診療報酬改定】(1)
2022年度GHC診療報酬改定セミナー!急性期医療の定義に切り込んだ「医療提供体制改革」を進める改定内容!
井内医療課長・鈴木前医務技監がGHC改定セミナーに登壇!2022年度改定で何を目指すのか!
看護職員処遇改善のための診療報酬設定論議スタート、まず技術的課題等を分科会で整理―中医協総会
2022年度のDPC機能評価係数IIトップ、大学病院群で和歌山医大病院、特定群で帯広厚生病院、標準群で飯山赤十字病院
生殖補助医療、従前の支援事業で6回終了したとしても、要件満たせば保険診療で改めて6回チャレンジ可
「クリニック・中小病院」と「紹介受診重点医療機関」との双方向情報連携を【連携強化診療情報提供料】で評価
新設された【看護補助体制充実加算】、病棟の看護師長、病棟看護師、看護補助者のそれぞれで所定研修受講など要件化
療養病棟で「中心静脈栄養離脱に向けた摂食・嚥下機能回復」実施促すための飴と鞭
一部疾患でDPC病棟への入棟経路ごとの分類を設定、DPC全般でさらに「在院日数短縮」が重要テーマに―厚労省
複数の減算ルールに該当する地域包括ケア病棟、「減算を複数適用した低い点数」算定に―厚労省
スーパーICU評価する【重症患者対応体制強化加算】を新設、ECMOの処置料・管理料を設定―厚労省
急性期充実体制加算の施設基準、全身麻酔手術2000件以上、救急受け入れ2000件以上、時間外加算1取得など―厚労省
【2022年度診療報酬改定答申17】救急医療管理加算の点数引き上げと対象状態拡大、あわせて「不適切事例」への対処も
【2022年度診療報酬改定答申16】安全性・有効性を確認した不妊治療技術を保険適用、生殖補助医療では年齢・回数制限
【2022年度診療報酬改定答申15】小入管の加算新設など、小児、新生児等への医療提供充実を診療報酬でサポート
【2022年度診療報酬改定答申14】オンライン初診料は251点に、オンラインの医学管理・在総管の点数を整理
【2022年度診療報酬改定答申13】後発品使用促進、人工腎臓の適正化、リフィル処方箋など組み合わせ医療費の膨張抑止
【2022年度診療報酬改定答申12】外来化学療法の評価、がん患者の遺伝子パネル検査・結果説明などの評価を大幅充実
【2022年度診療報酬改定答申11】訪問看護でも『量の拡大』と「質の向上」目指す、専門性の高い看護師への期待高まる
【2022年度診療報酬改定答申10】在宅医療の「裾野」を拡大して量を充実、「頂」を高くして質の向上を目指す
【2022年度診療報酬改定答申9】療養病棟、障害者施設・緩和ケア病棟、有床診のそれぞれに「適切な機能発揮」促す
【2022年度診療報酬改定答申8】地域全体の感染防止対策強化を目指し、感染防止対策加算を改組し、外来で新加算創設
【2022年度診療報酬改定答申7】かかりつけ医機能の明確化に向け、機能強化加算の施設基準・算定要件を厳格化
【2022年度診療報酬改定答申6】紹介受診重点病院を加算で評価、外来→在宅の円滑移行を新たな診療報酬でサポート
【2022年度診療報酬改定答申5】地域医療体制確保加算、医師事務作業補助体制加算、夜間看護配置に関する加算を軒並みアップ
【2022年度診療報酬改定答申4】質の高いリハ提供できない回復期リハに退場宣告、特定機能病院での良質なリハに注目
【2022年度診療報酬改定答申3】大規模病院の地域包括ケア病棟にも在宅患者受入れ促すため、飴(加算)と鞭(減算)
【2022年度診療報酬改定答申2】手厚い医療体制敷くICUに新加算、3日以内750点、4-7日500点、8―14日300点ON
【2022年度診療報酬改定答申1】充実した急性期一般1を評価する新加算、7日以内460点、8-11日250点、12―14日180点に設定