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原則、すべての医療法人がG-MIS用いて毎年度の経営情報を報告、国・都道府県で分析して国民に情報公表—社保審・医療部会(1)

2023.7.10.(月)

原則として、すべての医療法人にG-MIS用いて毎年度の経営情報を報告する義務を課す。その経営情報を国・都道府県で分析し、国民に情報公表するほか、さまざまな医療政策に活かしていく—。

7月7日に開催された社会保障審議会・医療部会で、このような「医療法人の経営情報に関するデータベース(MCDB)」の本年(2023年)8月施行分に関する報告が行われました。7月下旬にも関連省令が示され、順次、通知などが発出されていきます。なお、同日には「医療DX推進に関する工程表」「医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト、立入検査の実施」に関する報告も行われており、これらは別稿で報じます。

7月7日に開催された「第100回 社会保障審議会 医療部会」

医療法人の経営データを公表する際には、「データの見方、読み方」をセットで示せ

昨年(2022年)11月の「医療法人の経営情報のデータベースの在り方に関する検討会」(以下、検討会)で、医療法を改正し▼「医療法人の経営情報データベース」を構築する▼一部の小規模法人を除き、原則、すべての医療法人に経営情報の提出を義務付ける▼データベースを活用し、医療政策の企画・立案、医療従事者の処遇改善、医療機関の経営支援などを行う▼医療法人の経営状況に関する情報を広く国民に提供するとともに、医療経済研究に向けたデータの第三者提供を行う—方針が固められ、その後、「医療部会での審議」→「国会での改正法案の審議」を経て、改正法が成立しました(関連記事はこちら)。

医療法人経営情報データベース等の大枠(社保審・医療部会(1)2 230707)



▼医療技術の高度化・少子高齢化に伴う医療保険財政の逼迫▼物価高騰・為替変動(円安)に伴う医療機関経営の逼迫▼新興感染症(新型コロナウイルス感染症など)に伴う医療提供環境の急変—など、医療機関経営を巡る大きな変化が生じる中で、「データに基づく適切かつ迅速な政策立案や医療機関支援」などが必要となることを踏まえた制度改正です。

制度改正内容の一部、具体的には次の事項については、「本年(2023年)8月1日に施行」されます。

(1)都道府県知事は、管内医療法人の活動状況、その他の厚生労働省令で定める事項を調査・分析し、その内容を公表するよう努める(改正法第69条の2第1項)

(2)医療法人(厚生労働省令で定める者を除く)は、厚生労働省令の定めにより、開設する病院・診療所ごとに収益・費用その他の厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に報告する(同2項)

(3)厚生労働大臣は、医療法人の活動の状況その他の厚生労働省令で定める事項に関する情報を収集・整理・分析し、その結果を国民にインターネットその他の高度情報通信ネットワークの利用を通じて迅速に提供できるよう必要な施策を実施する(同3項)

(4)厚生労働大臣は、(3)のために、都道府県知事に対し管内医療法人の活動状況その他の厚生労働省令で定める事項ついて情報提供を求めることができる(同4項)

(5)都道府県知事が(4)に応じて厚生労働大臣に情報提供するときは、電磁的方法その他の厚生労働省令で定める方法による(同5項)



施行目前となった7月7日の医療部会には、上記の「厚生労働省令で定める事項」とは具体的には何かが報告されました。

まず(1)の都道府県知事による調査・分析・公表の内容としては、「上記(3)の分析結果、その他、地域で必要とされる医療を確保するために都道府県知事が必要と認めるもの」とされました。詳細は、今後示される通知等で明らかにされます。なお、その際「個人の権利利益が害されるおそれがある部分を除く」ことも明示されています。医療法人の経営情報の中には、例えば「1人医療法人」など小規模なところもあり、あらゆる情報が開示されれば「院長・理事長等の個人情報に極めて密接な内容」も推察できてしまうことが考えられ、そうした情報は公表などの対象から除外されることが明らかにされているものです。



また(2)では、冒頭に述べたように「原則、すべての医療法人に経営情報等を提出する」ことを義務化していますが、この義務から「一部の者」を除外することとしています。この除外対象については、いわゆる「四段階税制」(租税特別措置法第67条第1項の計算特例)を適用して、最終会計年度の所得金額を計算した医療法人であることが明示されました。

四段階税制は、小規模なクリニックについて、概算経費率を診療報酬収入が2500万円以下の医療機関では72%、2500万円超3000万円以下では70%、3000万円超4000万円以下では62%、4000万円超5000万円以下では57%の4段階とする仕組みで、2020年度には61法人に適用されています。これら小規模法人は、データ提出負担を考慮して「データ提出義務を免除する」ものです(もちろん任意でデータ提出することは妨げられない)。



また、(2)で医療法人に求められるデータ提出について「どのような方法で、いつまでに提出するのか」「どのような項目を提出するのか」については、次のように厚生労働省令で定めることが明らかにされています。

▽どのような方法で提出するのか
→▼電磁的方法を利用して自ら・都道府県知事が同一情報を閲覧できる状態に置く措置を講ずる方法(G-MISを想定)▼書面の提出―のいずれか

▽いつまでに提出するのか
→原則として、毎会計年度の終了後「3か月以内」
→外部監査が適用される医療法人(医療法第51条第2項の「負債合計額50億円以上、または事業収益合計が70億円以上の医療法人」「負債合計額20億円以上、または事業収益合計が10億円以上の社会医療法人」「社会医療法人債発行法人である社会医療法人」:医療法施行規則第33条の2)では、毎会計年度の終了後「4か月以内」

▽「どのような項目を提出するのか」
→次の項目とする
(a)病院・診療所の名称、所在地、その他の基本情報
(b)病院・診療所の収益・費用の内容
(c)病院等の職員の職種別人員数、その他の人員に関する事項
(d)その他必要な事項

詳細は、今後発出される通知などの中で明らかにされますが、検討会では次のような点を確認しています。

▽収益・費用(損益計算書)については、対象を病院・診療所に限定し、「医療機関ごとの財務諸表を作成するために策定された病院会計準則」をベースにデータ提出を求める

▽資産・負債・純資産(貸借対照表)については提出を求めず、現行の「事業報告書等の貸借対照表」による

▽「職種ごとの年間1人当たりの給与額」を「『1月1日から12月31日までの職種別総給与支出』÷『病床機能報告における職種ごとの人数(毎年7月1日時点)』」として計算し、「任意」でのデータ提出を求める

病院に提出が義務付けられるデータ(医療法人経営データベース検討会1 221108)

診療所に提出が義務付けられるデータ(医療法人経営データベース検討会2 221108)

職員給与等の任意提出を求める職種一覧(医療法人経営データベース検討会3 221108)



このうち、「職種別の1人当たり給与額」は(c)の中に含まれ、「任意提出である」旨は通知等の中で明示される見込みです。小規模医療法人においては、「職種別の給与費を把握しておらず、義務化すれば大きな事務負担増となる」「例えば『薬剤師は1人配置のみ』で、職種別給与=当該個人の給与費であり、個人情報保護の観点で問題がある」などの点に配慮したものです。



他方、(3)(4)の「厚生労働大臣が収集・分析・公表する医療法人の情報」に関しては、▼医療法第 52 条第1項各号に掲げる書類(事業報告書等、監事の監査報告書、公認会計士等の監査報告書)に記載された事項▼上記(2)の報告内容▼その他必要な事項―とされました。



また、(5)の都道府県知事による厚生労働大臣への情報提供は、「電磁的方法を利用して自ら・厚生労働大臣が同一情報を閲覧することができる状態に置く措置を講ずる方法、その他の適切な方法」とされています。端的に「G-MIS」が想定されています。

医療法人による経営情報提出義務などの詳細(社保審・医療部会(1)1 230707)



こうした内容の厚生労働省令(医療法施行規則)見直しを7月下旬に行い、あわせて細部を明らかにする通知などが発出され、8月の施行に備えます。

上記の内容は、すでに検討会医療部会で議論されてきた内容であり、異論などは出ていませんが、今後に向けて「以前、社会福祉法人の経営データが公表された際には『莫大な内部留保がある』と報道等されたが、実際にはデータの見方を知らない報道機関が誤った解釈をしたものであった。医療法人も『非営利』であり、一般企業の財務諸表とは見方が大きく異なる点などを丁寧に分かりやすく説明する必要がある」(松原由美委員:早稲田大学人間科学学術院教授)、「医療法人の経営状況は、医療保険制度を考える際にも重要となる。情報公表の際には『実態が見える』ように工夫してほしい」(河本滋史委員:健康保険組合連合会専務理事)、「国民に分かりやすい形で情報提供するとともに、将来に向けてデータベースの充実を図ってほしい」(井上隆委員:日本経済団体連合会専務理事)などの提案がなされたほか、自治体サイドから「データを提出する医療機関への説明、分析などを行う都道府県への説明も丁寧に、早期に行ってほしい」との要望が出ています。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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