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インターネットで情報を入手する患者が急増しており、集患のために「ネット広報」が重要性増している―2023年受療行動調査

2024.9.24.(火)

入院患者の66.7%、外来患者の68.4%が「家族・知人・友人の口コミ」から医療機関の情報を入手しているが、「インターネット」で情報を入手する患者が急増しており、集患のために「ネット広報」が重要であることが分かる—。

患者の病院に対する満足度は上がっているが、入院では食事や設備、外来では診療待ち時間に不満を感じる患者が依然として少なくない。設備については改築等の折に十分に検討する必要がある―。

いわゆる社会的入院は再び減少してが、一定数あるため、各地域で「地域包括ケアシステム」の構築と稼働を急ぐ必要がある―。

また、特定機能病院などを「紹介状なし」に受診する患者は依然として3割程度おり、患者の意向などを十分に把握する必要がある—。

こういった状況が、厚生労働省が9月20日に公表した2023年の「受療行動調査(概数)の概況」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(2020年の前回調査に関する記事はこちら(確定数)こちら(概数)、2017年の前回調査に関する記事はこちら(確定数)こちら(概数)、2014年調査の記事はこちら(各定数)こちら(概数))。

インターネットで「医療機関の情報」を入手する患者が増加、ネット広報に注力を

受療行動調査は、3年に一度、一般病院の患者を対象に「受療の状況」や「医療への満足度」などを調べるものです(前回調査は2020年に実施、関連記事はこちら(確定数)こちら(概数))。

昨年(2023年)10月に、15万3390人(入院4万4131人、外来10万9259人)を対象に調査が行われており、患者が受診している病院の内訳は、次のとおりです。
▼特定機能病院:25.0%(入院26.9%、外来24.1%)
▼500床以上の大病院:33.2%(入院34.7%、外来32.5%)
▼100-499床の中病院:25.7%(入院23.5%、外来26.8%)
▼99床未満の小病院:7.8%(入院5.4%、外来8.9%)
▼療養病床を有する病院:8.3%(入院9.5%、外来7.7%)



まず、「医療機関の情報」をどこから入手しているかを見ると、入院・外来ともに「家族・知人・友人の口コミ」が依然として圧倒的に多い状況です(入院66.7%(前回調査から2.7ポイント減)、外来68.4%(同2.7ポイント減))。しかし、「医療機関が発信するネット情報」(入院21.4%(同3.1ポイント増)、外来28.8%(同5.3ポイント増))、「SNSや電子掲示板、ブログ情報など」(入院14.4%(同2.8ポイント増)、外来18.1%(同4.1ポイント増))などが大きく増加しています。「患者に選ばれる医療機関」になるためには、「ネットでの広報」に力を入れていくことが重要となってきています。

この点について国・都道府県は、全国の医療機関の機能等を検索可能とする医療情報ネット「ナビイ」(医療機能情報提供制度)を運用しています。知名度こそ非常に低いものの、利用した人の評価・満足度は非常に高く、医療機関サイドは医療機能情報提供制度への十分な情報提供を、患者・国民は「ナビイ」の利活用をより積極的に行うことに期待が集まります(関連記事はこちら)。

患者の満足度は上がっているが、入院では食事や設備、外来では待ち時間に不満多し

次に、患者の「満足度」について見てみましょう。

全体では、入院患者の67.3%(前回調査に比べて1.6ポイント減)、外来患者の63.7%(同0.8ポイント減)が「満足」と答え、「不満」を感じた人は入院患者の5.3%(同0.4ポイント増)、外来患者の4.4%(同0.6ポイント増)にとどまっています。

「満足」と感じた入院患者の割合を病院の種類別に見ると、▼特定機能病院:80.6%(前回調査に比べて0.3ポイント増)▼大病院:76.0%(同1.7ポイント減)▼中病院:71.5%(同1.8ポイント減)▼小病院:74.8%(同0.2ポイント減)▼療養病床を有する病院:59.1%(同2.6ポイント減)—となっています。逆に「不満」と感じた割合は、▼特定機能病院:2.9%(同0.3ポイント減)▼大病院:3.6%(同0.5ポイント増)▼中病院:4.4%(同0.5ポイント増)▼小病院:3.6%(同0.4ポイント増)▼療養病床を有する病院:6.9%(同0.6ポイント増)—となっています。全体に満足度が向上しており、病院サイドの努力が強く伺えます。また、満足が若干減少し、不満が若干増加していますが、これが「誤差の範囲内」と言えるのか、「満足度が下がってきている」と考えるべきなのか、などは中長期的に見ていく必要があります。



また「満足」と感じた患者の割合の推移を見ると、入院・外来ともに「全体としては増加している」ことが伺えます。



また、項目別の満足度(「満足」と答えた患者の割合)を見てみると、入院では▼医師以外のスタッフの対応:71.9%(前回調査に比べて0.1ポイント低下)▼医師による診療・治療内容:69.9%(同1.6ポイント低下)▼医師との対話:65.4%(同1.6ポイント低下)―などで高く、▼食事内容:45.1%(同1.0ポイント低下)▼病室・浴室・トイレ等:56.8%(同0.7ポイント上昇)▼病室でのプライバシー保護:58.3%(同0.1ポイント向上)―では、やや低めになっています。設備については老朽化等もあり、満足度が下がることは「やむを得ない」と見るべき面もあります。改築や建て替え等の際には、こうした点の改善検討も重要になってきます。

外来では、▼医師以外のスタッフの対応:63.7%(前回調査に比べて0.4ポイント上昇)▼医師との対話:61.7%(同0.7ポイント上昇)▼医師による診療・治療内容:59.8%(同0.2ポイント上昇)―で満足度が高くなっていますが、入院に比べるとやや低めです。

また、外来で満足度の低い項目として、依然として「診療までの待ち時間」があげられます。満足しているは32.2%(前回調査に比べて0.6ポイント低下)にとどまり、25.2%が「不満」(同じく1.3ポイント上昇)と答えています。

患者の満足度(外来)(2023年受療行動調査5 240920)

患者の満足度(入院)(2023年受療行動調査6 240920)



病院の種類別に「外来診察までの待ち時間に不満を感じている人」の割合を見ると、▼特定機能病院:37.0%(前回調査に比べて1.9ポイント増加)▼大病院:33.9%(同3.3ポイント増加)▼中病院:25.0%(同0.7ポイント減少)▼小病院:18.9%(同1.1ポイント増加)▼療養病床を有する病院:18.6%(同2.6ポイント増加)—となっています。依然として大規模病院になるほど「待ち時間に不満を感じる人が多い」傾向にあり、「特定機能病院で待ち時間に不満を感じる人が大きく増加している」点が気になります。

昨今では、多くの病院において予約システムが導入され、待ち時間はかつてに比べて大幅に短縮していますが、「不満を持つ患者が増えている」背景に何があるのか、詳しく見ていく必要がありそうです。この点、大病院の外来は「紹介患者中心になっていく」ことに鑑みれば、「診察までの待ち時間に不満を感じる」人は減少していくことが期待されます。また、受付スタッフが診療待ちの患者に「声掛け」するだけで、不満が減少するとの報告もあり、こうした点への配慮も重要となります。もちろん、患者サイドにも「予約した時間に遅れないようにする」「紹介状を持たずに大病院を受診することを避ける」といった努力が求められることは述べるまでもありません。

医師による説明がない・不十分と感じる患者も一定程度おり、説明の工夫を

次に、入院患者が「医師からの説明の有無や程度」についてどのように感じているのかを見てみましょう。

診断や治療方針にについて「医師から説明を受けた」と答えた患者は、入院では94.2%、外来では96.3%に達しますが、入院では2.5%、外来では0.7%が「説明を受けていない」と答えています。医師から説明がない事態はなかなか考えにくいですが、患者と医師とでは知識量等に圧倒的な差があり、医師が「説明した」と思っても、患者は「説明を受けていない」と感じるケースなどもありそうです。高齢化が進行し、認知機能や聴力等が低下した患者が増える中では、こうしたケースが増えていくと想定されます(小規模病院や療養病床を持つ病院で「説明を受けていない」と答える患者が比較的多い点からも、この点が強く想起される)。医師の説明は「医師-患者間の信頼関係醸成」に最も重要と言え、医師の負担も考慮した上で「より分かりやすい説明」を工夫する必要があるでしょう。

患者の「説明」に関する意識(2023年受療行動調査2 240920)



また医師からなされた説明が「十分であったか」を見ると、「十分であった」と感じた患者は6-7割強にとどまり、2-3割の患者は「まあまあ十分であった」、4-10%程度の患者は「十分ではなかった」と答えています。医師の多忙さを考慮すれば、看護師や薬剤師などの多職種と協力し、説明に関する「役割分担」を進めるなどし、「十分に説明を受けた」と感じる患者の増加(つまり患者の満足度が高まる)につなげることが重要でしょう。



医療内容が高度化し(それだけ医師等と患者との知識・理解の乖離が大きくなる、つまり患者にとって分かりにくくなる)、患者の高齢化が進む中で、「分かりやすい説明、患者が納得できる説明」がさらに重要性を増していきます。

いわゆる「社会的入院」は再び減少、多様な患者ニーズ踏まえた退院支援が重要

他方、入院患者が「今後の治療・療養」についてどのような希望を持っているのかを見ると、「完治するまで今の病院にいたい」という声が特定機能病院でも39.7%(前回調査に比べて1.0ポイント減少)、大病院でも38.2%(同2.7ポイント減少)あります。「病院の機能分担」について患者サイドの理解が徐々に進んでいることが伺えるかもしれません。

もっとも、4割の入院患者が「完治するまで大学病院等に入院したい」と考えており、「他の病院や診療所、介護施設などへの転院・退院」を希望する声は1割にとどかない状況を考えれば、「医療提供体制の在り方」について一般国民・患者に、さらに分かりやすく周知していくことが必要です。▼大規模病院では急性期治療を受ける→▼回復やリハビリについては当該機能を強化した病院(回復期リハビリ病棟や地域包括ケア病棟など)に転院等して受ける—という流れについて、適切かつ丁寧な説明がなければ、「大病院に見捨てられた、追い出された」と考える患者・家族も出てくることでしょう。

病院サイドはもちろん、行政(国・都道府県)や医療保険者(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)も「医療機能分化、連携の強化」について機会をとらえて丁寧に、繰り返し情報提供することが必要です。

患者の「今後の治療等」希望(2023年受療行動調査3 240920)



なお、退院許可が出た場合でも「自宅療養ができない」患者の割合を見ると、全体では19.4%(前回調査から5.6ポイント減少)。病院の種類別にみると、▼特定機能病院:6.6%(同0.1ポイント減)▼大病院:8.1%(同0.1ポイント減)▼中病院:11.5%(同1.1ポイント減)▼小病院:14.4%(同4.8ポイント減)▼療養病床を有する病院:30.6%(同9.1ポイント減)―となっています。

2017年調査→20年度調査にかけ、いわゆる社会的入院が増加しているように見えましたが、今回の23年調査では、再び減少していることが分かりました。今後も状況を注視する必要があります。

また自宅療養できない大きな理由としては、▼家族の協力▼入浴や食事などの介助サービス▼通院手段の確保▼在宅医療▼療養のための指導(服薬・リハビリなど)—など、多岐にわたっていることが改めて確認されました。診療報酬でも入退院支援の充実が図られてきていますが、例えば「家族の協力」などは病院側ではいかんともしがたく、まさに「地域包括ケアシステム」(要介護度が高くなっても可能な限り住み慣れた地域で生活できるよう、地域において▼医療▼介護▼予防▼住まい▼生活支援―の各サービスを整備し、それを有機的に結合する体制)の構築を地域で進めることの重要性をここで再認識する必要があります。

患者の退院見通し(2023年受療行動調査4 240920)

特定機能病院でも、依然として3割近くの患者は「紹介状なし」で直接受診

最後に、外来患者が「最初にどの医療機関を受診したか」を病院種別に見てみましょう。

「最初から、今日来院した病院を受診した」、つまり「他院からの紹介などを受けていない患者」の割合は、▼特定機能病院:25.4%(前回調査から4.3ポイント減少)▼大病院:35.7%(同3.4ポイント減)▼中病院:53.1%(同2.9ポイント減)▼小病院:66.0%(同0.5ポイント増)▼療養病床を有する病院:62.8%(同0.6ポイント減)—となっており、「紹介を受けずに大病院を受診する患者」が減少していることが分かります。

外来患者の最初の受診場所(2023年受療行動調査1 240920)



このように、外来の機能分化が進んでいる状況が伺えますが、逆に見れば「3割程度の患者は、特定機能病院などの大病院を紹介状を持たずに受診している」ことも明らかとなりました。

紹介状を持たずに大病院を受診する患者には特別負担を課す仕組みが導入され、拡大されてきています(関連記事はこちら)。しかし「特別負担を課してもなお、大学病院等に直接かかりたい」と考えている患者が一定程度いることが分かります。

「なぜ、まず身近なかかりつけ医などを受診しないのか」「特別負担をどう感じているのか(負担にならないと感じているのか、いくらであれば負担と感じるのか)」などをさらに詳しく調べ、さらなる機能分化に向けた取り組みを進めることが必要かもしれません。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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