Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

入院患者の半数、外来患者の4割が「医師の紹介」を基に病院を選択―2017年受療行動調査

2018.9.5.(水)

 入院患者の51.0%、外来患者の37.3%が、「医師による紹介」によって病院を選択している。また入院患者の2割超で「退院許可が出ても、家族の協力や在宅医療などの面で課題があり、自宅療養ができない」状態である―。

 こういった状況が、厚生労働省が9月4日に公表した2017年の「受療行動調査(概数)の概況」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(2014年の前回調査の記事はこちらこちら)。

新規患者の獲得には、地域のかかりつけ医と連携し、「紹介」を受けることが重要

 受療行動調査は、3年に一度、一般病院の患者をターゲットとして「受療の状況」や「医療への満足度」などを調べるものです(前回は、2014年に実施)。昨年(2017年)10月に14万5700人(入院5万188人、外来9万5512人)を対象に調査が行われており、患者が受診している病院の内訳は、次のようになっています。
▼特定機能病院:26.4%(入院29.8%、外来24.6%)
▼500床以上の大病院:33.6%(入院35.2%、外来32.8%)
▼100-499床の中病院:24.4%(入院22.7%、外来25.3%)
▼99床未満の小病院:8.2%(入院4.3%、外来10.2%)
▼療養病床を有する病院:7.5%(入院8.0%、外来7.2%)

 まず「病院を選んだ理由」を聞いたところ、入院患者・外来患者のいずれにおいても「医師による紹介」が最も多く、外来患者では37.3%、入院患者では51.0%にのぼっています(複数選択)。

入院・外来とも、病院選択の最大の要素は「医師による紹介」である

入院・外来とも、病院選択の最大の要素は「医師による紹介」である

 
 また入院患者では、▼専門性の高い医療の提供:25.2%▼医師・看護師が親切:23.3%▼家族や友人・知人の勧め:22.5%—などが、外来患者では▼交通の便:27.6%▼専門性の高い医療の提供:23.9%▼家族や友人・知人の勧め:18.5%―などが、病院選択の重要要素となっていることが確認できました。

病院側からの視点では、「かかりつけ医との連携」が新規患者の獲得に向けて最も重要であることが分かります(関連記事はこちら)。

入院では「食事」や「プライバシー」、外来では「待ち時間」に患者は不満を感じる

 次に、患者の「満足度」について見てみましょう。

 全体では、入院患者の66.9%、外来患者の59.1%が「満足」と答え、「不満」を感じた人は入院患者の4.9%、外来患者の4.3%にとどまっています。

 「満足」と感じた入院患者の割合を病院の種類別に見ると、▼特定機能病院:76.7%▼大病院:74.5%▼中病院:69.7%▼小病院:68.9%▼療養病床を有する病院:62.0%—となっており、また「不満」と感じた割合は▼特定機能病院:3.5%▼大病院:3.6%▼中病院:4.2%▼小病院:4.4%▼療養病床を有する病院:5.8%—となっています。病院の規模が大きくなるほど「満足」と感じる患者が増え、逆に「不満」を感じる患者が減る傾向が伺えます。

入院患者では、大規模病院になるほど満足度が高くなる

入院患者では、大規模病院になるほど満足度が高くなる

 
 また「満足」と感じた患者の割合の推移を見ると、入院・外来ともに「2008年以降、概ね横ばい」と言えます。

さらに、項目別の満足度(「満足」と答えた患者の割合)を見てみると、入院では▼医師による診療・治療内容:70.1%▼医師以外のスタッフの対応:69.8%▼医師との対話:65.7%―で高く、▼食事内容:42.7%▼病室でのプライバシー保護:55.7%▼病室・浴室・トイレ等:56.2%―では、やや低めになっています。

外来では、▼医師以外のスタッフの対応:58.8%▼医師との対話:57.0%▼医師による診療・治療内容:55.3%―で満足度が高いのですが、入院に比べると低めです。

また、外来で満足度の低い項目として、「診療までの待ち時間」(29.0%)があげられ、26.3%の人が「不満」を感じています。病院の種類別に見ると、▼特定機能病院:満足22.9%・不満27.7%▼大病院:満足23.6%・不満35.2%▼中病院:満足26.4%・不満27.8%▼小病院:満足37.1%・不満18.9%▼療養病床を有する病院:34.6%・不満18.5%—となっており、大規模病院で「待ち時間に不満を感じる人が多い」傾向にあるようです。この点、「軽症で紹介状を持たずに、かつ予約をせずに特定機能病院や大病院を訪れ、結果として待ち時間が長くなっているのではないか」との疑問も生じます。「紹介状持参の有無」「予約の有無」など、より細かい調査が期待され、併せて患者サイドにも「適正な受診を心がける」という意識改革が必要でしょう。これは「医師の働き方改革」においても、重要テーマの1つとなっています。

外来では「待ち時間」の満足度が極端に低い

外来では「待ち時間」の満足度が極端に低い

 

医師による治療方針等の説明、5-6%入院患者は「不十分」と感じる

 次に、入院患者が、「医師からの説明の有無や程度」についてどのように感じているのかを見てみましょう。

 診断や治療方針にについて「医師から説明を受けた」と答えた患者は、入院・外来ともに95%程度に達しますが、1-2%程度の患者は「説明を受けていない」と答えています。医師から説明がない事例はなかなか考えにくいですが、患者と医師とでは知識量等に圧倒的な差があり、医師が「説明した」と思っても、患者は「説明を受けていない」と感じるケースなどがありそうです。高齢化が進行し、認知機能や聴力等が低下した患者が増える中では、こうしたケースが増えることも想定され、医師の負担も考慮した上で、「より分かりやすい説明」を工夫する必要があるでしょう。

また医師からなされた説明が「十分であったか」を見ると、「十分であった」と感じた患者は6-7割にとどまり、3-4割の患者は「まあまあ十分であった」、5-6%の患者は「十分ではなかった」と答えています。医師の多忙さを考慮すれば、看護師や薬剤師などの多職種と協力し、説明に関する「役割分担」を進めるなどし、「十分に説明を受けた」と感じる患者の増加(つまり患者の満足度が高まる)につなげることが重要でしょう。

医師から診断方針などについて「説明を受けていない」「十分な説明がない」と感じる患者も一部いる

医師から診断方針などについて「説明を受けていない」「十分な説明がない」と感じる患者も一部いる

 
さらに、患者が「説明に対する疑問や意見」を医師に伝えられたかどうか、を見てみると、8-9割は「十分に伝えられた」と答えていますが、1割程度の患者は「伝えられなかった」と感じています。「伝えられなかった」背景には、時間や気おくれなど、さまざまな要素があると考えられます。「相談支援窓口」の設置や周知、さらに、患者に最も身近な看護師の気配りなどが重要と言えそうです。
医師の説明に対する疑問等を「伝えられない」と感じる患者も一定程度いる

医師の説明に対する疑問等を「伝えられない」と感じる患者も一定程度いる

 

特定機能病院でも8%の患者が、家庭の事情などで退院できず

一方、入院患者が「今後の治療・療養」についてどのような希望を持っているのかを見ると、「完治するまでこの病院にいたい」という声が特定機能病院でも44.6%あり、「他の病院や診療所、介護施設などへの転院・退院」を希望する声は1割にとどきません。病院・病床の機能分化・連携を阻む壁の一つとなっている可能性もあり、「医療提供体制の在り方」について一般国民・患者にも分かりやすく周知していくことが必要と考えられます。

半数近くの患者が「完治まで現在の病院に入院していたい」と考えている

半数近くの患者が「完治まで現在の病院に入院していたい」と考えている

 
なお、退院許可が出た場合でも「自宅療養ができない」患者の割合を見ると、全体では21.7%(前回調査から4.2ポイント減)、病院の種類別では▼特定機能病院:8.1%▼大病院:9.3%▼中病院:13.4%▼小病院:17.8%▼療養病床を有する病院:32.1%―となっています。徐々に減少はしているものの、入院患者の2割が、いわゆる「社会的入院」であることは、依然として大きな課題と言えるでしょう。

自宅療養できない大きな理由は、▼家族の協力▼入浴や食事などの介助サービス▼通院手段の確保▼在宅医療▼療養のための指導(服薬・リハビリなど)—など、多岐にわたっていることが再確認されました。診療報酬でも入退院支援の充実が図られていますが、例えば「家族の協力」などは病院側ではいかんともしがたく、他分野からの支援や協力など、より広範な「退院支援」「自宅療養の支援」策を検討する必要もありそうです。

病院全体では21.7%、特定機能病院に限っても8%の入院患者が、退院許可後も家庭の事情などで退院できない

病院全体では21.7%、特定機能病院に限っても8%の入院患者が、退院許可後も家庭の事情などで退院できない

 

特定機能病院の紹介状なし外来患者、減少しているが依然3割にのぼる

最後に、外来患者が「最初にどの医療機関を受診したか」を病院種別に見てみましょう。

「最初から、今日来院した病院を受診した」、つまり他院からの紹介などを受けていない患者の割合は、▼特定機能病院:30.4%(前回調査から6.3ポイント減)▼大病院:40.1%(同7.6ポイント減)▼中病院:56.0%(同3.6ポイント減)▼小病院:64.5%(同0.6ポイント増)▼療養病床を有する病院:64.1%(同2.5ポイント減)—となっており、特定機能病院や大病院では「他の医療機関からの紹介患者」が増加していることが確認できました。外来の機能分化が進んでいることが分かります。

ただし、依然として3割の患者は、特定機能病院を紹介状を持たずに受診しています。こうした患者に対し、「なぜ身近なかかりつけ医などを受診せず、直接に大規模病院を受診するのか」「紹介状を持たずに受診した場合の特別料金をどう感じているのか(負担にならないと感じているのか、いくらであれば負担と感じるのか)」などを調べ、さらなる機能分化に向けた取り組みを進めることが必要と言えそうです(関連記事はこちら)。

依然として、特定機能病院でも3割の外来患者が紹介状なしである

依然として、特定機能病院でも3割の外来患者が紹介状なしである

 
 
診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

 

【関連記事】

入院期間が長いほど患者満足度は下がり、病院規模が小さいほど自宅療養できない患者が増える―2014年受療行動調査
患者の満足度は外来57.9%、入院66.7%-14年受療行動調査

紹介状なしに外来受診した場合の特別負担、500床未満の病院にも拡大へ—中医協総会(3)
紹介状なしに外来受診した際の特別負担、対象病院を拡大すべき—社保審・医療保険部会
地域包括ケアを支援する病院の評価新設、資源不足地域での要件緩和を―地域医療守る病院協議会

「4月分」データでも、在院日数短縮に新規患者獲得が追いつかない状況が伺える―病院報告、2018年4月分