医師偏在対策に向けた「日病提言」をまとめる、規制的手法よりも「医師少数区域で勤務してよかった」と思える策が望ましい—日病・相澤会長
2024.10.2.(水)
医師偏在解消に向けた総合的な対策のパッケージの策定論議が進んでおり、日本病院会でも「提言」をまとめる—。
日本病院会の相澤孝夫会長が10月1日に定例記者会見を開き、こうした考えを述べました。10月中にも提言をまとめる構えです。
相澤会長は、規制的手法よりも「医師少数区域で勤務することで、医師としても人間としても良いことがある」と感じられるような策の方が好ましいのではないかともコメントしています。
10月中にも「医師偏在対策の日病提言」をまとめる
Gem Medで報じているとおり、「医師の地域偏在、診療科偏在」対策論議が進んでいます。
厚生労働省は、8月30日に「近未来健康活躍社会戦略」の中で「医師偏在対策総合パッケージの骨子案」を提示し、9月5日には「厚生労働省医師偏在対策推進本部」で総合パッケージに向けた論点を整理しました(関連記事はこちら)。
さらに、「社会保障審議会・医療保険部会」では、医療保険制度で可能な対応の検討も始まっています。
日本病院会幹部(会長、副会長、常任理事)の間では、「とりわけ地方の中小病院において、医師・医療従事者の確保が極めて困難な状態に陥っている」と危機感が共有され、「日病としての医師偏在是正に向けた提言」を10月中にもまとめる方針を固めました。
日病幹部の間では、例えば▼若手医師はワークライフバランスを重視しながら専門医資格取得を目指しており、中堅医師は専門医として多忙であるなど、年代別に状況が異なるため、「年代別の医師偏在対策」を考えるべきではないか▼「医師偏在指標」(人口10万対医師数をベースにした医師の多い・少ないの相対指標)と「現場の医師の多い・少ないに関する肌感覚」との間には乖離があるため、「医師の多い・少ない」状況を評価する仕組みを改めて検討してはどうか▼経済的インセンティブとして「医師少数区域における税制優遇」を検討してはどうか―などの考えが出ていることが相澤会長から報告されています。
ところで、上述のように厚労省検討会では「規制的手法」の検討も行われています。
相澤会長は「規制的、強制的な手法では、良い方向に向かわないと考えている。医師少数区域での勤務を強制的に行わせるよりも、『医師少数区域で勤務すると、医師としても、人間としても良いことがある』と感じてもらえる仕組みづくりが大事であろう」と個人的な見解を示したうえで、具体的な方策についての考え方を次のように述べました。
▽医師少数区域での勤務経験を公的病院の管理者(院長等)要件とする規制的手法について→若手医師は積極的に「管理者(院長)になりたい」と思っていない。多くの医師は専門医を志向しており、医師少数区域での勤務経験は「専門医資格取得や更新の要件」などとしては考えてはどうか
▽外来医師多数区域での新規クリニック開業制限について
→大都市でクリニック開業が増えている背景をきちんと分析しなければいけない。クリニックにもいろいろな形態がある点も含めて検討すべきである。
→相澤会長は、個人的な見解として「都会で開業するクリニック医師の一部でも医師少数区域で勤務してくれるとありがたい。ただし規制的手法でそれが実現できるかは疑問である」とコメント
医師偏在対策の総合パッケージは本年内(2024年内)に策定されます。日病では、この議論に間に合うよう10月中にも提言をまとめる構えです。
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