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2022年度の「がん医療費」は医科入院では21.8%、医科入院外では9.2%を占める、がんの種類別に特徴がある―健保連

2025.4.23.(水)

健康保険組合連合会の2022年度医療費を分析すると、「がん」の医療費は、医科入院では1,943億円で医科入院医療費の21.8%、医科入院外では2798億円で医科入院外医療費の9.2%を占めている—。

がんの種類別に「受診率」「1件当たりの日数」「1日当たり医療費」「推計1入院当たり医療費」などに大きな違いがあり、それぞれの特性を踏まえた対策が医療費適正化に向けて重要となる—。

健康保険組合連合会が4月18日に公表した2022年度の「新生物(悪性及び良性・その他の新生物)の受診状況及び医療費に関する調査」から、こういった状況が明らかになりました(健保連サイトはこちら)。こうした分析をさらに深め、例えば「がん医療費適正化のために、検診をさらに推進する」などの政策に結び付けていくことに期待が集まります。

がん医療費、2022年度には医科入院医療費の21.8%を占める

がんは我が国の死因第1位であり(ただし女性では老衰が1位になっている、関連記事はこちら)、当然、医療費に占める割合も高くなってきています。政府は、我が国の「がん対策」の基本となる「がん対策推進基本計画」を定め(現在、第4期計画を推進中)、生活習慣の改善による予防や検診受診による早期発見・早期治療や、医療・生活支援の充実などを進めています。健保連では、がん対策を「医療費」という視点で眺めています。

今回の調査は、1310の健康保険組合(主に大企業の従業員とその家族が加入する公的医療保険)加入者のレセプトデータ(2022年度、入院外:1億6686万6697件、入院:171万594件)をもとに、(1)胃がん(2)結腸がん(3)直腸がん(4)肝・肝内胆管がん(5)気管・肺がん(6)乳がん(7)子宮がん(8)悪性リンパ腫(9)白血病(10)その他のがん(11)良性・その他の新生物―の状況を調べています。

画期的ながら極めて高額な抗がん剤の相次ぐ登場も強い追い風となり、がん医療費はますます増加していくと考えられます(関連記事はこちら)。

2022年度がん医療費の内訳をみると、入院:1943億円(医科入院医療費の21.8%で前年度から0.4ポイント増)、入院外2798億円(医科入院外医療費の9.2%で前年度から0.4ポイント減)となっています。

まず前者のがん「入院」医療費について少し詳しく見てみます。

加入者1人当たりで見ると7172円で、疾病19分類で最も高くなっています。これを3要素に分解すると、▼受診率(1000人当たりのレセプト発生件数):9.8▼1件当たり日数(1入院当たりの入院日数):7.94日▼1日当たり医療費(患者1人当たりの単価):9万2450円—となりました。疾病19分類の中で比較してみると、「受診率は最も高い(次に高い消化器系疾患が7.3)、1日当たり医療費は2番目に高い(最も高い先天奇形変形・染色体異常が12万1772円)」ことが分かりました。ここから、がん医療費の低減に向けて「がん予防」や「治療薬の後発品へのシフト」などが重要になってくることが伺えそうです。

がん種別(上述(1)-(11))のシェアを見ると、トップ5は次のようになっています。
【男性】
▽その他の悪性新生物:42.1%
▽良性新生物:11.2%
▽気管・肺の悪性新生物:10.7%
▽白血病:8.3%
▽悪性リンパ腫:7.4%

【女性】
▽良性新生物:32.5%
▽その他の悪性新生物:21.0%
▽乳房の悪性新生物:16.0%
▽子宮の悪性新生物:6.9%
▽白血病:4.7%

医科入院のがん種類別医療費(2022年度健保組合がん医療費1 250418)



次に、がんの種類別に1人当たり医療費と、その3要素分解、さらに推計1入院当たり医療費・平均在院日数を見てみると、次のような状況が明らかになりました。がんの種別によって医療費にも特徴があることが分かります。

【胃がん】
▽1人当たり医療費:男性365円、女性197円
・受診率:男性0.529、女性0.297
・1件当たり日数:男性8.72日、女性8.75日
・1日当たり医療費:男性7万9110円、女性7万5834円

▽推計1入院当たり医療費:男性93万5257円、女性90万857円
▽推計1入院当たり平均在院日数:男性11.82日、女性11.88日
→1日当たり医療費の高さが男性で1入院当たり医療費が高いことにつながっていると健保連は分析

【結腸がん】
▽1人当たり医療費:男性392円、女性344円
・受診率:男性0.569、女性0.526
・1件当たり日数:男性7.87日、女性7.59日
・1日当たり医療費:男性8万7501円、女性8万6158円

▽推計1入院当たり医療費:男性89万8429円、女性84万2702円
▽推計1入院当たり平均在院日数:男性10.27日、女性9.78日
→在院日数の長さ・1日当たり医療費の高さが女性で大きいことが、女性で1入院当たり医療費が高いことにつながっていると健保連は分析

【直腸がん】
▽1人当たり医療費:男性363円、女性227円
・受診率:男性0.438、女性0.281
・1件当たり日数:男性8.95日、女性8.66日
・1日当たり医療費:男性9万2572円、女性9万3207円

▽推計1入院当たり医療費:男性113万5307円、女性109万1315円
▽推計1入院当たり平均在院日数:男性12.26日、女性11.71日
→在院日数の長さが、男性で1入院当たり医療費が高いことにつながっていると健保連は分析

【肝・肝内胆管がん】
▽1人当たり医療費:男性155円、女性58円
・受診率:男性0.240、女性0.118
・1件当たり日数:男性8.33日、女性7.61日
・1日当たり医療費:男性7万7481円、女性6万4814円

▽推計1入院当たり医療費:男性85万9582円、女性63万6167円
▽推計1入院当たり平均在院日数:男性11.09日、女性9.82日
→在院日数の長さ・1日当たり医療費の大きさが、男性で1入院当たり医療費が高いことにつながっていると健保連は分析

【気管・肺がん】
▽1人当たり医療費:男性673円、女性375円
・受診率:男性0.863、女性0.484
・1件当たり日数:男性8.85日、女性7.97日
・1日当たり医療費:男性8万8199円、女性9万7260円

▽推計1入院当たり医療費:男性106万4632円、女性101万5825円
▽推計1入院当たり平均在院日数:男性12.07日、女性10.44日
→在院日数の長さが、男性で1入院当たり医療費が高いことにつながっていると健保連は分析

【乳がん】
▽1人当たり医療費:男性3円、女性1310円
・受診率:男性0.005、女性1.936
・1件当たり日数:男性7.07日、女性6.54日
・1日当たり医療費:男性8万8680円、女性10万3436円

▽推計1入院当たり医療費:男性78万9952円、女性83万3408円
▽推計1入院当たり平均在院日数:男性8.91日、女性8.06日
→1日当たり医療費の高さが、女性で1入院当たり医療費が高いことにつながっていると健保連は分析

【子宮がん】
▽1人当たり医療費:女性560円
・受診率:女性0.821
・1件当たり日数:女性7.04日
・1日当たり医療費:女性9万6860円

▽推計1入院当たり医療費:女性85万8055円
▽推計1入院当たり平均在院日数:女性8.86日

【悪性リンパ腫】
▽1人当たり医療費:男性464円、女性347円
・受診率:男性0.360、女性0.289
・1件当たり日数:男性13.78日、女性13.25日
・1日当たり医療費:男性9万3422円、女性9万704円

▽推計1入院当たり医療費:男性227万6081円、女性205万9277円
▽推計1入院当たり平均在院日数:男性24.36日、女性22.70日
→在院日数の長さ・1日当たり医療費の高さが、男性で1入院当たり医療費が高いことにつながっていると健保連は分析

【白血病】
▽1人当たり医療費:男性517円、女性381円
・受診率:男性0.268、女性0.203
・1件当たり日数:男性18.32日、女性18.12日
・1日当たり医療費:男性10万5593円、女性10万3560円

▽推計1入院当たり医療費:男性470万3465円、女性448万8361円
▽推計1入院当たり平均在院日数:男性44.54日、女性43.34日
→在院日数の長さ・1日当たり医療費の高さが、男性で1入院当たり医療費が高いことにつながっていると健保連は分析

医科入院のがん種類別の1人当たり医療費と3要素(男性)(2022年度健保組合がん医療費2 250418)

医科入院のがん種類別の1人当たり医療費と3要素(女性)(2022年度健保組合がん医療費3 250418)

2022年度の医科入院外のがん医療費、医科入院外医療費全体の9.2%を占める

次に後者のがん入院外医療費について見てみましょう。

加入者1人当たりで見ると1万327円で、疾病19分類で3番目の高さとなっています(1位は呼吸器系疾患の1万4048円、2位は内分泌・栄養・代謝疾患の1万2580円)。

3要素に分解すると、▼受診率:406.1▼1件当たり日数:1.58日▼1日当たり医療費:1万6109円—となりました。疾病19分類の中で比較してみると、「1日当たり医療費が最も高い」ことが分かります。「治療薬の後発品へのシフト」などが医療費適正化に向けて重要になってくることが伺えます。

がん種別(上述(1)-(11))のシェアを見ると、トップ5は次のようになっています。
【男性】
▽その他の悪性新生物:39.1%
▽気管・肺の悪性新生物:11.9%
▽良性新生物:11.1%
▽白血病:10.5%
▽胃の悪性新生物:8.0%

【女性】
▽乳房の悪性新生物:31.4%
▽その他の悪性新生物:21.4%
▽良性新生物:20.7%
▽気管・肺の悪性新生物:5.9%
▽胃の悪性新生物:4.3%

医科入院外のがん種類別医療費(2022年度健保組合がん医療費4 250418)



次に、がんの種類別に1人当たり医療費と、その3要素分解、さらに推計1入院当たり医療費・平均在院日数を見てみると、次のような状況が明らかになりました。

【胃がん】
▽1人当たり医療費:男性652円、女性550円
・受診率:男性34.286、女性33.478
・1件当たり日数:男性1.58日、女性1.63日
・1日当たり医療費:男性1万2039円、女性1万80円

【結腸がん】
▽1人当たり医療費:男性563円、女性512円
・受診率:男性45.138、女性40.204
・1件当たり日数:男性1.62日、女性1.66日
・1日当たり医療費:男性7716円、女性7682円

【直腸がん】
▽1人当たり医療費:男性332円、女性158円
・受診率:男性7.450、女性5.029
・1件当たり日数:男性1.71日、女性1.69日
・1日当たり医療費:男性2万6036円、女性2万1766円

【肝・肝内胆管がん】
▽1人当たり医療費:男性312円、女性171円
・受診率:男性15.594、女性12.221
・1件当たり日数:男性1.48日、女性1.51日
・1日当たり医療費:男性1万3497円、女性9255円

【気管・肺がん】
▽1人当たり医療費:男性973円、女性746円
・受診率:男性19.790、女性15.719
・1件当たり日数:男性1.63日、女性1.61日
・1日当たり医療費:男性3万89円、女性2万9502円

【乳がん】
▽1人当たり医療費:男性12円、女性3995円
・受診率:男性0.302、女性76.970
・1件当たり日数:男性1.64日、女性1.62日
・1日当たり医療費:男性2万5008円、女性3万1962円

【子宮がん】
▽1人当たり医療費:女性495円
・受診率:女性52.688
・1件当たり日数:女性1.55日
・1日当たり医療費:女性6050円

【悪性リンパ腫】
▽1人当たり医療費:男性363円、女性275円
・受診率:男性9.672、女性10.046
・1件当たり日数:男性1.74日、女性1.74日
・1日当たり医療費:男性2万1583円、女性1万5743円

【白血病】
▽1人当たり医療費:男性857円、女性425円
・受診率:男性5.280、女性4.470
・1件当たり日数:男性1.59日、女性1.63日
・1日当たり医療費:男性10万2157円、女性5万8296円

医科入院外のがん種類別の1人当たり医療費と3要素(男性)(2022年度健保組合がん医療費5 250418)

医科入院外のがん種類別の1人当たり医療費と3要素(女性)(2022年度健保組合がん医療費6 250418)



医科入院外でも、がんの種別によって医療費にも特徴があることが分かります。

より詳しく、例えばステージ別の医療費等分析、医療内容(手術や化学療法、放射線療法など)分析などを行い、「早期ステージほど医療費が低い」ことなどが明らかになれば、「早期発見に向けた検診推進を行うことにより、医療費の適正化、患者のQOL向上を図ることが可能になる。より検診推進に財源を投入しよう」という政策決定が可能になってくると期待できます。



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