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急性骨髄性白血病(AML)患者への治療薬「ティブソボ錠」の適応を判定する1DH1遺伝子検査、診療報酬算定ルールなど明確化—厚労省

2025.9.4.(木)

新たな臨床検査手法や医療機器の保険適用を踏まえて、検査料等の診療報酬算定ルールを見直す—。

具体的には、(1)B005-14【プログラム医療機器等指導管理料】(2)D004【穿刺液・採取液検査】(3)D004-2【悪性腫瘍組織検査】(4)D012【感染症免疫学的検査】(5)D215【超音波検査(記録に要する費用を含む)】(6)K598【両心室ペースメーカー移植術】(7)N002【免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製】—の7項目について、新たな検査・機器を踏まえた算定ルールを設定する—。

厚生労働省は8月29日に通知「『診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について』等の一部改正について」を発出し、こうした点を明確にしました。9月1日から適用されています(厚労省サイトはこちら)。

アプリを使用したアルコール依存症治療、プログラム医療機器等指導管理料を準用算定可

今回、改正が行われたのは、2024年度診療報酬改定に関する次の通知です。
(A)「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(2024年3月5日付、保医発0305第4号)
(B)「特定保険医療材料の材料価格算定に関する留意事項について」(2024年3月5日付、保医発0305第8号)
(C)「特定保険医療材料及びその材料価格(材料価格基準)の一部改正に伴う特定保険医療材料料(使用歯科材料料)の算定について」(2024年3月5日付、保医発0305第10号)
(D)「特定保険医療材料の定義について」(2024年3月5日付、保医発0305第12号)



本稿では(A)の通知改正に着目します。この通知は、診療報酬点数を算定する際の細かなルール(どういった医療行為を行えば点数算定ができるのか、どういった診療ガイドラインに従わなければならないのか、どの点数と併算定が可能なのかなど)を規定しています。

今般、以下の診療報酬項目について算定ルールの見直しを行いました。
(1)B005-14【プログラム医療機器等指導管理料】
(2)D004【穿刺液・採取液検査】
(3)D004-2【悪性腫瘍組織検査】
(4)D012【感染症免疫学的検査】
(5)D215【超音波検査(記録に要する費用を含む)】
(6)K598【両心室ペースメーカー移植術】
(7)N002【免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製】

まず(1)のB005-14【プログラム医療機器等指導管理料】は、アプリケーションや人工知能(AI)を活用した「疾病の診断・治療」を目的とするプログラム医療機器を自宅で使用しながら疾患治療に臨む際に、適切・安全にプログラム医療機器を使用するための医師による指導・管理を評価するために2024年度診療報酬改定で設けられました(糖尿病等で在宅自己注射を行う患者に医師が指導・管理を行うことを評価する【在宅自己注射指導管理料】のプログラム医療機器版といったイメージ)。

これまでに、例えばニコチン依存症治療補助アプリや高血圧症治療補助アプリなどのプログラム医療機器等(特定保険医療材料に限る)に係る指導管理を行った場合に、月に1回「90点」を算定できること、初回の指導管理を行った月には【導入期加算】(50点)を上乗せ算定できることが明示されています。

ところで7月16日の中医協総会で、アルコール依存症患者の飲酒量低減治療補助に用いる【CureApp AUD飲酒量低減治療補助アプリ】の保険適用が認められたことを受け、当該プログラム医療機器を用いたアルコール依存症の治療・管理を行った場合、次のように【【プログラム医療機器等指導管理料】の準用算定を認めることとなっています。

▽アルコール依存症に係る適切な研修を修了した医師が、アルコール依存症に係る総合的な指導および治療管理を実施し、かつ、特定保険医療材料のアルコール依存症飲酒量低減治療補助アプリを算定する場合、月1回に限り本区分の点数(90点)を準用して算定する

▽アルコール依存症飲酒量低減治療補助アプリに係る初回の指導管理を行った場合は、当該初回の指導管理を行った月に限り、【導入期加算】の点数(50点)を準用して更に所定点数に加算する

アルツハイマー病治療薬の投与開始・中止後の再開を判定する新検査を保険適用

(2)のD004【穿刺液・採取液検査】については、アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)・軽度の認知症の進行抑制が期待できる医薬品(レケンビケサンラ)の投与開始・中止後の再開を判定するための、新たな検査手法の保険適用を踏まえて、次のような算定ルールの新設・見直しが行われました。

●「リン酸化タウ蛋白/アミロイドβ42比(髄液)」の新設
▽対象患者
→アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)または軽度の認知症が疑われる患者等

▽目的
→効能・効果としてアルツハイマー病による軽度認知障害・軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品の投与の要否を判断する

▽検査方法等
→効能・効果として「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)・軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品」に係る厚生労働省の定める最適使用推進ガイドライン(PMDAのサイトはこちら(レケンビ)こちら(ケサンラ))に沿う
→アミロイドβ病理を示唆する所見を確認するため、ECLIA法により脳脊髄液中の「β-アミロイド1-42」および「181位リン酸化タウ蛋白」を同時に測定する

▽算定点数等
→D004【穿刺液・採取液検査】の「15 アミロイドβ42/40比(髄液)」の所定点数(1282点)を準用して患者1人につき1回に限り算定する
→効能・効果としてアルツハイマー病による軽度認知障害・軽度の認知症の進行抑制を有する医薬品の投与「中止」後に初回投与から18か月を超えて再開する場合は、さらに1回に限り算定できる。この場合には「本検査が必要と判断した医学的根拠」をレセプトの摘要欄に記載する



●「アミロイドβ42/40比(髄液)」の見直し
▽併算定ルール
→▼14 リン酸化タウ蛋白(髄液)▼15 アミロイドβ42/40比(髄液)▼区分「15」の所定点数を準用するリン酸化タウ蛋白/アミロイドβ42比(髄液)—のうち、いずれかを併せて行った場合は「主たるもの」のみ算定する

尿路上皮がんのFGFR3遺伝子検査、AMLのIDH1遺伝子変異検査の算定ルールを明確化

(3)D004-2【悪性腫瘍組織検査】は、がん患者に対し「どの抗がん剤が効果的か、適切か」を選択するために行う遺伝子検査などを評価する診療報酬項目です。「Xという遺伝子変異がある場合に、●●という抗がん剤等が奏効する」といった知見が集積されてきたことを受けたもので、次のように複雑な点数設定がなされています。

1 悪性腫瘍遺伝子検査
イ 処理が容易なもの
(1)医薬品の適応判定の補助等に用いるもの:2500点
(2)その他のもの:2100点
ロ 処理が複雑なもの:5000点

2 抗悪性腫瘍剤感受性検査:2500点

▽注1 患者から1回に採取した組織等を用いて同一がん種に対して「1のイ」の検査を複数実施した場合は、検査の項目数に応じて次の点数を算定する
イ 2項目:4000点
ロ 3項目:6000点
ハ 4項目以上:8000点

▽注2 患者から1回に採取した組織等を用いて同一がん種に対して「1のロ」の検査を複数実施した場合は、検査の項目数に応じて次の点数を算定する
イ 2項目:8000点
ロ 3項目以上:1万2000点



点数表の解釈通知(2024年度診療報酬改定における「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」)では、上記の各区分にどういった種類の検査が該当するのかなどを詳細に示しています。

今般の通知では、次の2点の算定ルール見直しを行っています。

▽「1 悪性腫瘍遺伝子検査」の「イ 処理が容易なもの」の「(1)医薬品の適応判定の補助等に用いるもの」(2500点)に、新たに次の検査項目を追加する

▼「カ 尿路上皮がんにおけるFGFR3遺伝子検査」

これに伴い、同区分には次の検査項目が対象となった
ア 肺がんにおけるEGFR遺伝子検査、ROS1融合遺伝子検査、ALK融合遺伝子検査、BRAF遺伝子検査(次世代シーケンシングを除く)、METex14遺伝子検査(次世代シーケンシングを除く)、KRAS遺伝子変異(G12C)検査
イ 大腸がんにおけるRAS遺伝子検査、BRAF遺伝子検査
ウ 乳がんにおけるHER2遺伝子検査
エ 固形がんにおけるマイクロサテライト不安定性検査
オ 濾胞性リンパ腫におけるEZH2遺伝子検査
(新)カ 尿路上皮がんにおけるFGFR3遺伝子検査



急性骨髄性白血病(AML)患者の血液・骨髄穿刺検体から抽出したゲノムDNA中の「IDH1遺伝子変異」の検出(白血病治療薬「ティブソボ錠250mg」(一般名:イボシデニブ)のAML患者への適応判定の補助)を行う新たな検査手法の保険適用を踏まえて、「1DH1遺伝子検査」を保険診療の中で行う際の点数算定ルールを次のように設定する

▼検体
→急性骨髄性白血病の骨髄液また末梢血

▼検査方法
→白血病治療薬「イボシデブ」(販売名:ティブソボ錠250mg)の適応の判定補助

▼必要な行為
→1DH1遺伝子変異の評価

▼算定点数
→D004-2【悪性腫瘍組織検査】の「1 悪性腫瘍遺伝子検査」の「イ 処理が容易なもの」の「(1)医薬品の適応判定の補助等に用いるもの」の所定点数(2500点)を準用して、患者1人につき1回に限り算定する

先天性血友病患者へのコンシズマブ用量調整の判断を補助する検査の点数算定ルール設定

(4)D012【感染症免疫学的検査】については、先天性血友病患者における出血傾向の抑制に用いる「コンシズマブ」(販売名:アレモ皮下注15mg、同皮下注60mg、同皮下注150mg、同皮下注300mg)を投与中の血友病A・血友病B患者においてコンシズマブの用量調整を判断するための検査手法が保険適用されたことを踏まえて、「コンシズマブの血中濃度測定」に関する算定ルールを追加しています。

●コンシズマブの血中濃度測定
▽対象患者
→コンシズマブ投与中の先天性血友病患者

▽目的
→コンシズマブ用量調整の判断のための補助

▽検査手法
→ELISA法

▽算定点数等
→D012【感染症免疫学的検査】の「66 抗アデノ随伴ウイルス9型(AAV9)抗体」の所定点数(1万2850点)を準用して、原則として患者1人につき1回に限り算定できる
→医学的な必要性から本検査を2回以上算定する場合は、その理由をレセプトの摘要欄に記載する

超音波診断装置を用いて上腕静脈用カテーテルを挿入・留置する場合の算定点数等整理

(5)D215【超音波検査(記録に要する費用を含む)】については、「肘窩を含む上腕の末梢血管から経皮的にアクセスし、上腕の静脈へ挿入留置して輸液・血液の採取等を行う」新たな医療機器の保険適用を踏まえて、次のような点数算定ルールを新設しています。

▽超音波診断装置を用いて上腕の静脈の位置等を確認しながら上腕静脈用カテーテルを挿入・留置した場合は、D215【超音波検査(記録に要する費用を含む)】の「2 断層撮影法(心臓超音波検査を除く)」の「ロ その他の場合」の「(3) その他(頭頸部、四肢、体表、末梢血管等)」の所定点数(350点)を準用して算定する

▽カテーテルの挿入に伴う検査、および画像診断の費用は当該点数に含まれる

アプリを使用したアルコール依存症治療、プログラム医療機器等指導管理料を準用算定可

(6)K598【両心室ペースメーカー移植術】は、「1 心筋電極の場合」と「2 経静脈電極の場合」に区分されており(いずれも3万1510点を算定できる)、次のような点数算定ルールが設けられています。

(i)両心室ペースメーカー移植術は左右の心室を電気的に刺激することにより重症心不全患者の心臓リズムを補正すると同時に、左右の心室間伝導障害を軽減し血行動態を改善することを目的に実施され、次のいずれかの心不全に対して治療が行われた場合に算定する
ア 十分な薬物治療にもかかわらず改善のみられない「QRS幅120ms以上、および左室駆出率35%以下のNYHAクラスIIIまたはIV(中等度、重度)の心不全患者」の症状改善
イ 至適薬物療法が行われているペースメーカーの適応および高頻度に心室ペーシングに依存することが予想される「左室駆出率50%以下の患者」の症状改善または心不全進行(増悪)遅延

(ii)「1 心筋電極の場合」については、循環器内科または小児循環器内科の医師と心臓血管外科の医師が参加する「重症心不全患者または不整脈患者の治療方針を決定するカンファレンス」により本治療の適応判断を行う

(iii)両心室ペースメーカー移植術を行った患者については、診療報酬請求に当たってレセプトに症状詳記を記載する。なお、「1 心筋電極の場合」を算定する場合は、(ii)に規定する「カンファレンスの概要」も併せて記載する

今般の通知では(i)に関して、次の患者等を「ウ」として算定対象に加えることを明らかにしています。

▽十分な薬物治療にもかかわらず改善のみられない「▼NYHAクラスII(軽度)▼左室駆出率30%以下▼QRS幅150ms以上▼左脚ブロック▼洞調律—の全てを満たす心不全患者」の症状改善(当該患者に対する使用が薬事承認において認められている医療機器を用いて実施した場合に限る)

HER2タンパクの免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製、算定対象など拡大

(7)N002【免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製】については、「3 HER2タンパク」(690点)区分の算定ルールを次のように見直しています。

▽対象患者
→「化学療法歴のある手術不能または再発乳がん患者」という縛りを解除(後述「目的」にあるように、もう少し広い範囲の乳がん患者にも算定を認める)

▽手法等(変更なし)
→過去に乳がんに係る本標本作製を実施した場合で、「抗HER2ヒト化モノクローナル抗体抗悪性腫瘍剤の投与の適応を判定するための補助に用いるものとして薬事承認・認証を得ている体外診断用医薬品」を用いる

▽目的(「ロ」「ハ」を追加)
→以下の目的で実施することを新たに要件化
イ 「化学療法歴のある手術不能または再発乳がん患者」に対して、HER2低発現の確認により当該抗悪性腫瘍剤の投与の適応を判断する目的
(新)ロ 「ホルモン受容体陽性の手術不能または再発乳がん患者」に対して、HER2低発現または超低発現の確認により当該抗悪性腫瘍剤の投与の適応を判断する目的
(新)ハ 「過去にHER2低発現を確認する目的で本標本作製を実施し、HER2陰性が確認されている、化学療法歴がありホルモン受容体陽性の手術不能または再発乳がん癌患者」に対して、HER2超低発現の確認により当該抗悪性腫瘍剤の投与の適応を判断する目的

▽算定回数等
→「目的別」に1回に限り算定できる(乳がんに係る初回の標本作成を2024年3月31日以降に実施した場合は、2026年5月31日までの間に限る)
→HER2タンパクの「2回目以降の算定」に当たっては、その医学的必要性についてレセプトの摘要欄に記載する



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