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厚労省認定の「複数医療機関の再編・統合」、「医療機能に関連する設備共有」等の新メリット付与—地域医療構想影響に・医師確保計画WG

2023.3.2.(木)

地域において「複数医療機関の再編・統合」を進めることが、地域医療構想実現に向けて重要となる。このめた「複数医療機関の再編・統合」に関して、地域医療構想調整会議で計画を整え、厚生労働省の認定を得た場合(認定再編計画)には、税制優遇などのインセンティブが設けられている。

さらなるインセンティブを付与するため、認定再編計画を活用して「複数医療機関の再編・統合」を行う場合、一定の要件を満たせば、「併設するに当たって医療提供に関連する施設・設備を共有する」ことを認めるとともに、「病床過剰地域においても再編の中止勧告などを行わない」ことを明確化する—。

3月1日に開催された「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」(「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織、以下、地域医療構想・医師確保計画WG)で、こうした方針が固められました。本年度末(2023年3月末)に発出予定の「「第8次医療計画等の作成指針」(厚生労働省医政局長通知、同地域医療計画課長通知)と一体として、都道府県にこの考え方が示される見込みです。

3月1日に開催された「第11回 地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」

「医療機能に関連する施設・設備」の共有を認める

2025年度には団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達することから、今後、急速に医療ニーズが増加・複雑化していきます。従来型の医療提供体制(例えば、病院完結型の医療)では、増加・複雑化する医療ニーズに効果的・効率的に応えることが難しくなるため、各地域において2025年度の医療ニーズを踏まえた【地域医療構想】の実現が求められています。

地域医療構想は、地域(主に2次医療圏をベースとする地域医療構想調整区域)における将来(2025年度)の医療需要をもとに、▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期等―の機能別必要病床数などを推計した、言わば「将来の医療提供体制の設計図」という位置づけです。

一方、一般病床・療養病床を持つすべての病院には、毎年度「自院の各病棟がどの機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)を持つと考えているのか、自院の診療実績や人員配置・構造設備などはどのような状況なのか」を都道府県に報告する【病床機能報告】が義務付けられています。

各地域において、設計図である【地域医療構想】と、現状である【病床機能報告】とを比較し、「実際の医療提供体制が設計図にできるだけマッチしていく」ように、つまり「地域医療構想が実現する」ように、病院の機能改革・連携強化に向けた論議を関係者が膝をつき合わせて行うことが求められています。

地域医療構想とは(地域医療構想・医師確保計画WG3 210729)

地域医療構想の実現に向けた取り組みの大枠(地域医療構想・医師確保計画WG4 210729)



こうした地域医療構想の実現に向けては「複数医療機関の再編・統合」が重要要素の1つになります。例えば地域にX・Y2つの病院があり、いずれも「救急」「急性期」「回復期・慢性期」という幅広い機能を持っている場合、医療従事者確保等が難しい中では「両病院ともに救急機能が逼迫する」事態に陥りやすくなります。この場合、X・Y両病院、さらに地域の医療機関を交えた協議を行い「X病院に救急・急性期機能を集約化、Y病院に回復期・慢性期機能を集約化する」といった機能部分化・機能強化を行うことで、「医療提供体制の安定化」「より質の高い医療提供体制の構築」が実現できます。

厚生労働省は「複数医療機関の再編・統合」を推進するために、例えば次のような仕組み(認定再編計画へのインセンティブ付与を設けています(関連記事はこちらこちらこちら

◎地域医療構想調整会議において「複数医療機関の再編」計画を整え、それを厚生労働省が認定する場合、▼当該計画に基づき取得した不動産に対する税制優遇措置(登録免許税、不動産取得税)▼当該計画に基づく増改築資金、長期運転資金に関する金融優遇措置—などを行う

認定再編計画のインセンティブ1(地域医療構想・医師確保計画WG1 230301)

認定再編計画のインセンティブ2(地域医療構想・医師確保計画WG2 230301)



ただし、これまでにこの仕組みが利用されたのは、▼北海道札幌市(記念塔病院+北31条内視鏡クリニック→交雄会新さっぽろ病院)▼兵庫県神戸市(荻原みさき病院+荻原整形外科病院→荻原記念病院)—にとどまっています(現在、山形県米沢市(米沢市立病院と三友堂病院による地域医療連携推進法人設立)が枠組み利用に向けて動いている)。

そこで、厚労省は「複数医療機関の再編・統合のさらなる推進→地域医療構想の実現」に向けて、次のような「認定再編計画における新たなインセンティブ付与」を行ってはどうかとの考えを3月1日の地域医療構想・医師確保計画WGに提示しました。

(A)認定再編計画の枠組みを利用した場合、併設する医療機関について「医療法の施設基準の特例」を認める
→認定再編計画の枠組みを利用した場合、各医療機関がそれぞれ医療法上の基準を満たし、かつ、各医療機関の患者に対する治療に支障がない場合に限り、医療機関に併設する介護 医療院の取扱いを参考に「医療法で定める施設の一部を共用する」ことを認める
→要件として「各医療機関が同一の地域医療連携推進法人に参加している」「各医療機関のいずれも出資持分のある医療法人により開設されたものではない」こととする

(B)認定再編計画の枠組みを利用した場合、病床過剰地域における医療機関の再編統合のうち「勧告をしないことが適当と認められる場合」について明確化する
→病床過剰地域における複数医療機関の再編統合を行う場合、その前後で病床数合計が増加されず、かつ、認定再編計画の枠組みを利用した場合は「都道府県知事は勧告を行わない」旨を通知で明確化する
→病床過剰地域であることに鑑み、「原則、稼働していない病床数を除いた範囲」とする



まず(A)は「医療機関を併設する際に設備等の一部供用」を認めてコスト軽減のインセンティブを付与するものです。

上述したX・Y病院の再編統合に当たって「患者の利便性、医療機能の強化を図るために両病院を併設する」ケースがままあります(X・Y病院が、隣接するようにそれぞれ移転・新築する、既存のXまたはY病院の隣接地に、YまたはX病院が移転する、など)。

例えば、埼玉県では「県立小児医療センター」と「さいたま赤十字病院」とが併設。低層階部分は廊下で連結し、「赤十字病院でハイリスク分娩を行い、新生児を隣接する小児医療センターにすぐさま搬送し、適切な処置・治療を行う」といった優れた運用がなされています(両院で総合周産期母子医療センターを設立)。

埼玉県立小児医療センターとさいたま赤十字病院との併設事例(地域医療構想・医師確保計画WG3 230301)



また、上述した山形県米沢市では公立の米沢市民病院と、民間の三友堂病院とが地域医療連携推進法人を構築して、両院を併設(隣接地に移転)。主に市立病院(地域医療支援病院)が急性期機能を、三友堂病院が回復期・慢性期機能を担う形に機能分化・機能強化を実現。あたかも「1つの巨大総合病院」として、地域住民の生命・健康保持を行っています。

三友堂病院と米沢市立病院との併設事例(地域医療構想・医師確保計画WG4 230301)



こうした併設については、これまで医療提供機能とは関係のない部分での施設・設備共有(例えば会議室や保育所の共有など)が可能ですが、さらに認定再編計画を活用する場合には、一歩踏み込んで「一定の条件を付したうえで『医療機能に関係する部分』の施設・設備共有を認める」ことにしたものです。

例えば「手術室や処置室、病室などの共有」は認められませんが、介護保険施設などの併設と同様に、相当程度広い範囲で共有が可能となることから、「新設・改築などに当たり、大幅なコスト減」が実現できる可能性があります。また、併設・隣接は「医療機能の強化」「来院患者の利便性向上」など、より根本的なメリットがある点は、上述の埼玉県や山形県の事例を見れば明らかです。

共有可能とする施設・設備の考え方・参考先行事例1(地域医療構想・医師確保計画WG5 230301)

共有可能とする施設・設備の考え方・参考先行事例2(地域医療構想・医師確保計画WG6 230301)



なお、一定の条件としては「認定再編計画を活用すること」「地域医療連携推進法人の中で行うこと」「持ち分あり医療法人の参加は認められないこと」などが予定されています。

病床過剰地域での再編統合、一定要件満たせば中止勧告などは行わない

医療法では、都道府県知事に対し「病床過剰地域において、医療機関の開設・増床に関して、中止などを勧告できる」権限を付与しています(法第30条の11)。病床過剰になれば「医療費が増加する」「症例・人材が散在し、医療の質が低下する」などの問題が生じるためです。

ただし、「同一地において開設者が変更となり、病床数が増加されない」場合(下図の(1))、「同一開設者において、同一医療圏内での移転がなされ、病床数が増加されない」場合(下図の(2))には、「病床過剰状態を助長しない」ことから、上記の「中止などの勧告を行わない」ことが厚労省医政局長通知で示されています。

この点、「増床を伴わない」のであれば、「複数医療機関が再編・統合して、新たな医療機関を新設する」ような場合にも「中止などの勧告を行わない」旨を明確化しておくことが、「複数医療機関の再編・統合のさらなる推進→地域医療構想の実現」にとって有用と考えられます。しかし、この点について「勧告を行わない」旨が厚労省から示されていないため、例えば「複数医療機関で再編・統合し新病院を建設したい。しかし、都道府県から中止勧告などが行われる可能性がゼロではないので、再編・統合の協議を進められない」といったケースがあるやもしれません。

病床過剰地域では、医療機関の開設等について「中止勧告」権限があり、これが再編・統合に一定の影響を与えている可能性がある(地域医療構想・医師確保計画WG7 230301)



そこで厚労省は今般、(B)のように、「認定再編計画を活用して複数医療機関の再編・統合を行う場合」であっても、「一定の要件(総病床数の増加を伴わない、地域で過剰となっている機能区分(例えば急性期)の病床数増加を伴わないなど)を満たせば、中止勧告を行わない」旨を明確化する考えを示しました。この明確化により、「複数医療機関の再編について予見可能性を確保する」ことが可能(「中止勧告されることがあるかもしれない」という不安を払拭できる)となり、「複数医療機関の再編・統合のさらなる推進→地域医療構想の実現」が進みやすくなると期待されます。



この(A)(B)の見直しに反対意見は出ておらず、厚労省は本年度末(2023年3月末)に発出予定の「「第8次医療計画等の作成指針」(厚生労働省医政局長通知、同地域医療計画課長通知)と一体として、都道府県にこの考え方を示す見込みです。



なお、3月1日の地域医療構想・医師確保計画WGでは、地域医療構想の実現に向けたさらなる知見を得るために、石川県・大阪府・三友堂病院(上述)からヒアリングを行っており、例えば▼地域医療構想調整会議では「機能別病床数の数合わせ」議論だけでなく、地域住民も含めた幅広い関係者が集い、地域の医療提供体制全体の在り方そのものを議論することが重要である(石川県)▼ケアミクス病院において「急性期病床→回復期病床への移行を進める」ことは比較的容易であるが、「急性期病院→回復期病院」への移行などは難しい(石川県)▼ポスト地域医療構想においては「回復期機能」の名称を考え直す必要がある(大阪府)▼民間の三友堂病院・公立の米沢市立病院では「再編・統合」には様々なハードルがある。再編・統合に向けた第一歩として地域医療連携推進法人を設立することが重要ではないか(三友堂病院)—などの意見が出されています。今後の議論に向けて大いに参考になります。



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GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。

ガイドラインでは「外部アドバイザーの活用も有効である」と明示していますが、コンサルティング会社も玉石混交で「紋切り型の一律の改革プランしかつくれない」ところも少なくありません。この点、GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。

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