医療情報ネットを「より使いやすい仕組み」に2024年度リニューアル、今後「かかりつけ医機能」情報も充実—医療機能情報提供制度等分科会
2023.11.24.(金)
患者・一般国民が医療機関を選択する際の一助となる「医療機能情報提供制度」(医療情報ネット)について、より使いやすくするために、来年(2024年)4月から「全国統一システム化、サイトのリニューアル」などを行う。例えば高齢者や障害者向けに「バリアフリー対応がなされているか」「手話対応が可能か」などの視点で医療機関を検索する機能も設ける—。
11月20日に開催された「医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」でこうした方針が了承されました。尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)と厚生労働省とで最終調整を行い、「来年(2024年)1月より各医療機関が報告を行う」ようにシステム整備が進められます。
なお、別に「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」において、「かかりつけ医機能報告」制度の詳細論議が始まっています。ここで固められた「かかりつけ医機能に関する項目」なども医療機能情報提供制度に搭載されていきます。
医療情報ネットを「より使いやすい仕組み」に来年度からリニューアル
2023年の医療法改正(「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」の一部)で、(1)医療機能情報提供制度の刷新(来年(2024年)4月施行)(2)かかりつけ医機能報告の創設(再来年(2025年)4月施行)(3)慢性疾患患者等に対する書面交付・説明の努力義務化(再来年(2025年)4月施行)—を行うことになりました。「まずかかりつけ医を受診し、そこから基幹病院の専門外来を紹介してもらう。専門外来での治療が一定程度終了した後には、かかりつけ医に逆紹介を行う」という外来医療の流れ・機能分化を推し進めると同時に、地域包括ケアシステムの中で極めて重要な役割を果たす「かかりつけ医機能を持つ医療機関」の明確化を図る狙いがあります。
このため厚労省は、10月13日には「国民・患者に対するかかりつけ医機能をはじめとする医療情報の提供等に関する検討会」を発足させ、その下部組織として▼医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会(以下、本分科会)▼かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会(以下、かかりつけ医機能分科会)—も設置。
本分科会では、まず「医療機能情報提供制度の全国統一システム化」を行い、そののち、かかりつけ医機能分科会で固められる「かかりつけ医機能報告」制度の詳細を踏まえて、医療機能情報提供制度の充実(かかりつけ医機能に関する情報の搭載)を検討していくことなります。
11月20日の会合では「医療機能情報提供制度の全国統一システム化」方針を固めました。
医療機能情報提供制度は、国民が医療機関を適切に選択できることを目指し、医療機関等(▼病院▼診療所▼歯科診療所▼助産所―)に対し、自院の持つ機能を毎年度、都道府県に報告することを義務付けるものです(2007年度からスタート)。都道府県では報告された情報を整理して、ホームページ上で公開しています(厚労省のサイトはこちら(各都道府県のホームページに飛ぶことができる)。
国民に詳細な医療機関情報を提供する優れた取り組みですが、残念ながら「利用が少ない」のです。その背景には「都道府県が独自に情報公開を行っているために、例えば県境の居住者が利用しにくい」などの問題点があることから、「2024年度から全国統一システムに移行する」ことが決まっています。
11月22日の会合では、この全国統一システム化に向けて▼医療機能情報提供制度実施要領を一部改正する▼住民・患者へのわかりやすい情報提供を行う—という2点の内容を固めました。
前者の実施要領改正は上記の改正医療法等を踏まえた制度的対応(条文の見直し)であるため、後者に焦点を合わせると、次のような対応が図られます。
▽用語解説について、「利用者が簡便に知りたい解説に辿り着ける」ような工夫を行ったうえで、医療情報ネット(全国統一の医療機能情報提供制度、以下同)の検索画面上で閲覧可能とする
→詳細に関する厚労省資料はこちら
▽「高齢者」「小児」「障害児・者、難病患者」のボタンを設け、該当者が多く検索するであろう情報提供項目を予め準備しておく(「どのような用語で検索すればわからない」人のために、予め「バリアフリー対応」「在宅医療対応」「手話対応」などの項目を設定しておく)
→詳細に関する厚労省資料はこちら
▽スマートフォンでの利用を念頭においたサイト構成とする
こうした対応に明確な反論・異論は出ていませんが、構成員からは今後の改修・バージョンアップも念頭した意見が多数でています。例えば「より多くの視点・目線での改修を目指し、事前にデモ利用できるような工夫を考えてほしい」(山口育子構成員:ささえあい医療人権センターCOML理事長)、「女性医師対応の有無、外国語対応の充実などを検討してほしい」(三浦直美構成員:ジャーナリスト/医学ジャーナリスト協会幹事)、「検索する際の『例示』などを盛り込み、利用しやすくなる工夫をしてほしい」(福長恵子構成員:消費者機構日本理事)などの注文がついており、今後の改修において重要な参考視点となるでしょう。
また、多くの委員が「患者・国民への周知」にさらに力を入れてほしいと要望しています。
ところで医療提供サイドの小森直之構成員(日本医療法人協会副会長)と森隆夫構成員(日本精神科病院協会副会長)からは、「一定の用語で検索すると、多くの機能を保有する『大病院』がヒットしやすいようだが、これは『まずかかりつけ医機能を持つクリニックや中小病院を受診し、そこから高度専門的機能を持つ大病院を紹介してもらう』という流れに逆行してしまうのではないか。公表情報の取捨選択を行うべきではないか」といった旨の指摘がなされました。
この指摘には頷ける部分もありますが、▼法律上、報告内容はすべて公表することになっていること▼情報の恣意的な取捨選択は、国民の知る権利に照らし問題が少なくないこと▼高度専門的機能を持つ大病院への直接受診(紹介なし受診)には、特別負担が課されるために(関連記事はこちら)、一定のブレーキがかかると期待されること—などを踏まえれば、「情報の取捨選択」は必ずしも良い考えとは言えないでしょう。
「まずかかりつけ医機能を持つクリニックや中小病院を受診し、そこから高度専門的機能を持つ大病院を紹介してもらう」という外来医療の流れと、その理由(軽症患者が高度専門的機能を持つ大病院に集中すると、重症患者の医療アクセスが阻害され、勤務医の負担も過重になってしまうなど)などを、さまざまな場面で繰り返し、丁寧に説明していくことが、「情報の取捨選択」よりもはるかに重要と言えそうです。
今後、構成員の意見も踏まえて尾形分科会長と厚労省とで最終調整を行い、「来年(2024年)1月より各医療機関が報告を行い、来年(2024年)4月から全国統一システムで国民が医療機関情報を閲覧・確認できる」ようにシステム整備が進められます。
なお、各都道府県独自の情報提供サイトは、今後「全国統一システム」に吸収されていくと思われますが、当面は両者が併存する形になるでしょう。
また、幸野庄司構成員(健康保険組合連合会参与)は「かかりつけ医機能分科会と、本分科会との関係などを明確化する」よう要請しています。この点については、上述のように、本分科会では「2024年4月からの全国統一システム化」をまず進め、「かかりつけ医機能分科会」の議論を待ちながら、「かかりつけ医機能に関する医療機関情報を、どのように医療機能情報提供制度に搭載していくか」を検討していくことになることが厚労省から繰り返し説明されています。
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