先天性風疹症候群の防止に向け、抗体検査・予防接種の支援事業対象者を「妊婦の同居者」等にも拡大―東京都
2018.10.30.(火)
風疹が流行する中では、妊婦が罹患した場合、胎児が「先天性風しん症候群」となる可能性がある。このため、「ワクチンの接種履歴が不明な場合の抗体検査」について対象を拡大するなどの緊急対策を行う―。
東京都は10月26日に、こうした考えを明らかにしました(都のサイトはこちら)(関連記事はこちら)。
妊婦は風疹の予防接種を受けられないため、「感染防止」が重要
風疹は、▼発熱▼発疹▼リンパ節腫脹—を特徴とするウイルス性発疹症で、くしゃみや咳、唾液のしぶきなどの飛沫によって感染するほか、インフルエンザのように接触によっても感染します、感染から14-21日の潜伏期間を経て、▼発熱▼耳介後部、後頭部など首の後ろのリンパ節腫脹▼全身の発疹(淡紅色の小紅斑や小丘疹を呈する)▼眼球結膜の充血—などの初期症状が現れます(ただし15-30%の患者では症状が現れないこともある)。
こうした症状が出そろった時期に、最も感染力が強くなりますが、その前後(発疹出現の1週間前から、症状が消えるまで)でも感染が起こり、また症状が現れなくても感染力を持っています。今夏・秋(2018年夏・秋)には風疹の届け出が例年より多く、「関東地方で多い」(東京都では今年(2018年)1月1日から10月21日までに510人が感染)、「30-50歳代の男性で多い」(東京都では62.4%が30-50歳代の男性)という特徴があります。
風疹そのものは、多くの場合、症状は軽くすみますが、「妊娠20週頃までの妊婦」が感染した場合、胎児が▼白内障▼難聴▼心疾患—などを主な症状とする「先天性風疹症候群」となる可能性があります。
妊婦は風疹の予防接種を受けることができないため、▼妊娠する前に予防接種を受ける▼予防接種を受けていない・不明な場合には、感染を防ぐ―ことが重要です。
そこで、東京都では先天性風しん症候群の発生防止を目的に、区市町村と連携した「緊急対策」の実施を決定。従前より「母子手帳などから風疹のワクチン接種歴等が明らかでない『妊娠を予定または希望する女性』を対象として、予防接種を抗体検査と一体的に行う区市町村の事業を支援」していますが、さらに今般の緊急対策では、対象者を、▼妊婦の同居者▼妊娠を予定または希望する女性の同居者—にも拡大するものです(同居者から女性への感染を防ぐ)。
例えば、東京都の中央区や港区、新宿区、世田谷区、板橋区、練馬区などは▼妊娠を予定または希望する女性▼妊婦の同居者▼妊娠を予定または希望する女性の同居者—が、風疹の抗体検査を行い、検査結果に応じて予防接種を行う場合の費用が全額補助されます(つまり、無料で検査・予防接種を受けられる)。区市町村によって助成の対象者や拡大の実施時期が異なるので、下記リンク先(都のサイト)でご確認ください。
●各市区町村における費用助成の状況(今年(2018年)10月29日時点)はこちら
都では、「同居家族に限らず、周囲の方も注意してほしい」とも呼びかけています(風疹抗体の有無は、医療機関における血液検査で調べられる)。
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