DPC対象の病床数を大幅変更する場合には6か月前までに申請、遅れた場合のペナルティ検討も―中医協総会
2018.12.10.(月)
▼2018年10月より、重井医学研究所附属病院(岡山県)のDPC対象病床数を2分の1以下とする(80床→40床)▼2019年5月より、さいたま北部医療センター(埼玉県)のDPC対象病床数を2分の1以下とする(118床→54床)▼2018年12月より、防府消化器病センター防府胃腸病院(山口県)のDPC対象病床数を2分の1以下とする(120床→60床)―。
12月5日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった点が報告されました。いずれも、DPC制度への継続参加が認められています。
ところで、こうした「大幅な病床数変更」や「合併」については、「DPC制度への参加継続が妥当か否か」を判断するために病床数変更や合併の6か月前までの申請が求められていますが、遺漏が目立ちます(今回は3件中2件)。このため、「遺漏があった場合にペナルティを課す」べきか否かについて、今後、検討される可能性が出てきました。大幅な病床数変更等を検討中の病院では、留意が必要です。
DPC対象病床数が2倍以上、2分の1以下となる場合には、変更の6か月前までに申請
地域医療構想の実現等に向けて、各地で病院の再編・統合等が進んでいます。再編・統合等により、病院の機能が変化するケースもあります。例えば、「急性期のA病院と急性期のB病院」において、「急性期機能をA病院に集約し、B病院では回復期・慢性期に機能転換する」ケースなどです。
この場合、B病院が合併後にもDPCへの参加継続を認めるかどうかが、重要な論点の1つとなります。そこで中医協では、今年(2018年)3月に次のようなルールを決定し、個別に「DPC制度への参加継続が妥当か否か」を判断することとしています(関連記事はこちらとこちら)。
【DPC病院の合併】
▽DPC病院同士が合併する場合には、急性期同士の合併であり「今後も急性期入院医療を提供する」と考えられ、さらに提出されているデータ(DPCデータ)から合併後の診療内容を推測できる。このため、「DPC制度への参加継続に関する特段の審査は不要」で、合併後もDPC制度への参加基準を満たしていれば、参加継続が可能となる。
▽係数は、▼基礎係数は「合併前の主たる病院」の医療機関群のもの▼機能評価係数IIは「両者の加重平均値」(症例数ベース)▼激変緩和係数(2018年度診療報酬改定で新設される改定年度限り(1年度限り)の激変緩和措置)は「両者の加重平均値」(症例数ベース)—を適用する。
【DPC病院の分割】
▽DPC病院の分割では、▼一方が急性期医療を継続し、他方が慢性期等に機能転換するケース▼「両者ともに急性期医療を継続するケース▼両者ともに慢性期等に機能転換するケース―など、さまざまなパターンが考えられ、事例ごとに審査を行った上で、DPC制度への参加継続の可否を判断する。
▽「分割後、複数のDPC病院となる」ことが認められた場合の係数は、▼基礎係数は「DPC標準病院群」(旧III群)のもの▼機能評価係数IIは「分割前」のもの▼激変緩和係数は「分割前」のもの—を適用する。
【DPC病院の大幅なベッド数変更】
▽大幅な病床数変更をするケースでも、▼ベッドを減らしたまま急性期を維持するパターン▼ベッドを減らし、さらに慢性期等に機能転換するパターン―など、さまざまであり、事例ごとに審査を行った上で、DPC制度への参加継続の可否を判断する。
▽なお「大幅な病床数変更」は、▼同一年度に「200床以上増減」する▼同一年度に「2倍以上」または「2分の1以下」となる―ことを指す。
▽この場合の係数は、▼基礎係数は「ベッド数変更前」の医療機関群のもの▼機能評価係数IIは「ベッド数変更前」のもの▼激変緩和係数は「ベッド数変更前」のもの—を適用する。
今般、以下の3病院について、大幅な病床数変更(DPC対象病床数が2分の1以下となる)が行われます(行われたものも)が、DPC制度への参加を継続するが認められました。
▼重井医学研究所附属病院(岡山県):2018年10月よりDPC対象病床数を80床から40床とする
▼さいたま北部医療センター(埼玉県):2019年5月よりDPC対象病床数を118床から54床とする
▼防府消化器病センター防府胃腸病院(山口県):2018年12月よりDPC対象病床数を120床から60床とする
ところで、個別病院のDPC参加継続を認めるかどうかの判断には一定の時間が必要なため、中医協では「合併や大幅な病床数変更等の6か月前までに厚労省に申請すること」を決めました。しかし、今般の3件中2件について「遺漏」(6か月前までに申請がなかった)ことから、個別ケースを審議するDPC合併・退出等審査会において「次回診療報酬改定(2020年度改定)に向けて、手続きに遺漏があった場合の取扱いについて整理すべき」との意見が出ていることが、厚労省保険局医療課の森光敬子課長から報告されました。端的に「ペナルティを課してはどうか」という意見と考えられます。
DPC制度は、係数や点数などについて、「全DPC病院のデータ」を集計して「相対評価」を行って設定します。ここの一部の病院についてデータに不備があれば、設定した結果に狂いが生じる可能性が出てきます。合併等の手続きに遺漏があった場合でも同様の可能性が出てきます。
今後、地域医療構想の実現に向けた議論が進み、また地域人口の減少などが進む中では、「急性期ベッド数の削減」を選択する病院が増加すると考えられます。そうした病院について手続きの遺漏が続けば、「ペナルティを課すべき」との声も大きくなってくることでしょう。合併等や大幅な病床数変更を検討中の病院は、早めに手続きの内容等を確認し、漏れなく厚労省へ申請等を行うことが必要です。
なお、12月5日の中医協総会では、次の点について了承されています。
▼新薬(HIV-1感染症治療薬「ドルテグラビルナトリウム/リルピビリン塩酸塩」、販売名:ジャルカ配合錠、1錠:5350.90円)の薬価収載(12月12日予定)
▼高コレステロール血症治療薬の「アリロクマブ(遺伝子組換え)」(販売名:プラルエント皮下注75mgペン、同150mgペン、同75mgシリンジ、同150mgシリンジ)における、最適使用推進ガイドラインの改訂および、保険診療上の留意事項通知の改訂(スタチンによる治療が適さない患者への使用に関する改訂)(厚労省のサイトはこちら(ガイドライン)とこちら(留意事項通知))(関連記事はこちら)
▼来年(2019年)10月に予定される消費税率引き上げ(8%→10%)に伴う、特別の診療報酬プラス改定(消費税対応改定)の考え方(2014年度の消費税対応改定と同じく基本料の引き上げを行うことで対応するが、補填の過不足等を可能な限り解消するために「病院の入院基本料等の引き上げに充てる財源をより多く確保する」などの見直しを行う)(関連記事はこちらとこちら)
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