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医療保険財政が逼迫する中、「軽症者の保険給付範囲縮小」へ舵を切るべきでは―健保連、全国健康保険協会

2019.5.16.(木)

 国民皆保険制度を維持するために、重症疾患用医薬品の保険収載を続けながら、軽症疾患用医薬品については保険給付範囲を見直すなど、「軽症者の保険給付範囲縮小」へ舵を切るべきではないか―。

 代表的な被用者保険である健康保険組合連合会と全国健康保険協会は5月15日に、こうした内容の「『保険給付範囲の見直し』に向けた意見」を公表しました(健保連のサイトはこちら(意見)こちら)。

 今後、社会保障審議会・医療保険部会や中央社会保険医療協議会で積極的な議論が行われることを両団体は強く求めています。

5月15日に記者会見に臨んだ健康保険組合連合会の幸野庄司理事(写真、向かって右)と全国健康保険協会の吉森俊和理事(写真、向かって左)

5月15日に記者会見に臨んだ健康保険組合連合会の幸野庄司理事(写真、向かって右)と全国健康保険協会の吉森俊和理事(写真、向かって左)

 

少子高齢化の進展、超高額医薬品の相次ぐ登場で、医療保険財政は逼迫

 2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となるため、今後、医療・介護ニーズが急速に増加していくと予想されています。さらに、その後、2040年にかけて高齢者の増加スピードそのものは鈍化するものの、高齢者を支える現役世代の数が急速に減少していきます。つまり「支えられる側」の高齢者が増加する一方で、「支える側」の若人が減少するため、医療保険制度をはじめとする社会保障制度が極めて脆弱になっていくのです(関連記事はこちらこちら)。

 さらに、そうした中で医学・医療は進歩・発展を続け、画期的ながら「極めて高額」な医療技術が相次いで登場しています。例えば意見が公表された5月15日には、中医協総会で画期的な白血病等治療薬「キムリア点滴静注」の保険収載が承認されましたが、その薬価は1患者当たり3349万円に設定されました(関連記事はこちら)。また2月20日の中医協総会では、画期的な脊髄損傷患者の機能改善薬「ステミラック注」の保険収載が認められており、その薬価は1496万円に設定されています(関連記事はこちら)。

これらは患者自身を含めたヒトの細胞をもとにした再生医療等製品と呼ばれ、優れた効果が期待され、患者・国民にとって非常に喜ばしい(▼優れた医療技術を適正な価格で保険収載することは、患者に必要な医療を届ける観点から極めて重要▼個人で負担しきれないリスクをカバーすることが、医療保険制度の責務である―)反面、個別性が高く、超高額になりがちなため、医療保険財政をさらに厳しいものにしてしまいます。

この点、主に大企業に勤めるサラリーマンとその家族が加入する健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)と、主に中小企業に勤めるサラリーマンとその家族が加入する協会けんぽを運営する全国健康保険協会では、超高額な医療技術を保険導入しながら国民皆保険制度を維持していくには、▼薬価制度に基づく医薬品価格の適正化▼高齢者医療費の負担構造改革▼医療費適正化策―だけではとても追いつかず、「公的医療保険の給付範囲について、除外も含めて、改めて見直しを検討することが喫緊の課題である」と強く訴えています。

具体的には、重症疾患用で個人での負担が困難な医薬品は保険で確実にカバーする一方、軽症疾患用医薬品については▼スイッチOTCを推進する▼諸外国事例も参考にしながら保険給付範囲からの除外や償還率変更―を実行すべきと訴えています。例えばフランスでは、「抗がん剤は100%保険給付(自己負担ゼロ)」「ビタミン剤などは100%自己負担」などと薬剤の種類に応じて保険からの償還率が区分けされており、こうした仕組みが参考になるでしょう。

健保連では、これまでに「ヒルドイド等の保険給付範囲から除外」などを提言しており、5月15日に記者会見に臨んだ健保連の幸野庄司理事は▼花粉症治療薬(現在研究中)▼第1世代湿布薬―などについて保険給付からの除外を検討すべきとの見解を示しています。

公的医療保険、軽症者の保険給付を縮小する方向に舵を切るべきか

 
ところで健保連・全国健康保険協会の意見は、いわば「重症者などクリティカルな部分は公的保険でしっかりカバーし、軽症者については保険給付を縮小する」という方向へ舵を切るべきとの提言と言えます。医療保険制度は、個人では負担しきれない医療費を共助でカバーするものであり、この方向には理解が得られやすいと考えられます。

ただし、医療費については「ごく一部の重症者が、保険財源の大部分を消費している」との研究結果もあり、「軽症者の保険給付を縮小したとしても、その効果は小さい」と指摘する識者も少なくありません。

この点について幸野健保連理事は、「保険給付範囲の見直しで患者・国民の受療行動が変化していくことが期待できる」との考えを示しました。たしかに、OTC類似医薬品等の自己負担が増えれば「軽症疾病については市販薬(OTC)で済まそう。しかし、なぜ自己負担が増えたのであろう。それは医療保険財政が厳しいからだ。では、必要性の低い医療機関受診等を控えよう」などと国民全体が考え、医療保険財政の堅持に向けた新たな道筋が見えてくることも期待できます。

また同じく5月15日に記者会見に臨んだ全国健康保険協会の吉森俊和理事は、この点について「国民皆保険の堅持に当たっては、大きなリスク(重傷者)と小さなリスク(軽症者)をどうマネジメントしていくかが重要である。そのために、議論の端緒として、今回の意見・提案がある」とコメント。OTC類似医薬品等の自己負担増を切っ掛けに、「それほど医療保険は厳しいのか、そう言えば毎月の健康保険料も随分高くなった。医療保険を守るには、私には何ができるのだろうか」と1人1人の国民が我がこととして考えるようになれば、さまざまな医療保険改革・医療提供体制改革が円滑に進むと期待されます。

 
健保連・全国健康保険協会は、医療保険部会や中医協などで、こうした「保険給付の在り方」論議が積極的に行われることを強く望んでいます。

 
 

 

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