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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

2020年度の次期診療報酬改定や介護保険制度改革等に向けて提言―財政審

2019.4.26.(金)

 2020年度の次期診療報酬改定に向けては、▼地域医療構想の実現に資する急性期入院医療報酬の見直し▼かかりつけ機能の評価の整理▼かかりつけ機能を持つ薬局の評価と、そうでない薬局の減額―などを検討するとともに、次期介護保険制度改革に向けて▼要介護1・2の生活援助サービスの地域支援事業への移行▼ケアマネジメントへの利用者負担導入▼介護サービス事業所・施設の再編・統合―などを検討すべき―。

 4月23日に開催された財政制度等審議会・財政制度分科会で、こういった議論が行われました。

社会保障制度改革に関し、例えば2020年度改定や介護保険制度改革に関する方向性探る

2025年度には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となることから、今後、医療・介護ニーズが急速に増加していきます。その後、2040年にかけて、高齢化のスピードそのものは鈍化するものの、社会保障の支え手となる現役世代人口が急速に減少していくことが分かっています。少ない若人(現役世代)で、増加する高齢者を支えなければならず、社会保障制度の基盤が極めて脆くなっていくことは確実です。このため、各所で「社会保障制度改革」論議が継続して行われています。

財政審では、11月下旬にも2020年度予算編成に向けた建議を取りまとめますが、そこでは「社会保障改革」に向けた提言も行われます。4月23日の財政制度分科会では、建議取りまとめを睨み、早くも財務省から社会保障改革に向けた提案が行われました。

提案内容を眺めると、▼少額の場合の「受診時定額負担」の導入(3割等の一部負担と別の、定額負担の導入)▼地域医療構想の実現(⾃主的な取組が進まない場合の都道府県知事により機能転換命令権限等の付与など)▼地域別診療報酬の設定―など、これまでの提言内容と重複するもの少なくありませんが、医療・介護分野に関する重要項目をいくつか見ていきましょう。

 
まず2020年度の次期診療報酬改定に向けて、次のような提案を行っています(関連記事はこちたこちらこちら)。

【全体】⾼齢化・医療の⾼度化等により医療費が毎年増加している中で、国⺠負担の増加を抑制する観点から「診療報酬の合理化・適正化」を行う

【入院】「2018年度の前回診療報酬改定が、地域医療構想に沿った病床の再編や急性期⼊院医療費の削減にどの程度つながっているのか」について進捗を評価し、必要に応じて更なる要件厳格化等を次期改定で実施する

【外来】「適切かつ効率的な外来診療体制」のため、▼かかりつけ機能の評価の整理▼かかりつけ医やかかりつけ薬局以外に外来受診等をした際の定額負担導⼊▼「⼤病院受診時の選定療養による定額負担」の対象範囲・⾦額の拡大(診療報酬の中で定額負担を求め、診療報酬への上乗せ収入とはしない)―などの仕組み見直しを行う

【調剤】かかりつけ機能のあり⽅を改めて検討した上で、「地域でかかりつけ機能を担っている薬局」を適切に評価する(ただし、患者負担増にも留意する)、⼀⽅、こうした機能を果たしていない薬局の報酬⽔準を適正化する。また対物業務に関し、近年の技術進歩等を踏まえて、▼投与⽇数や剤数に⽐例する調剤料設定の妥当性の評価▼調剤業務のあり⽅⾒直しによる業務効率化―などへの対応も含めた、調剤報酬の見直しを行う

【地域別診療報酬】都道府県における医療費適正化⼿段を付与し、都道府県のガバナンスを強化する観点も踏まえ、「医療費適正化に向けた地域別の診療報酬」の具体的に活⽤可能なメニューを国として⽰す

【薬価】薬価制度の抜本改⾰で「残された検討課題」を着実に検討するとともに、イノベーション推進に向けて、さまざまな施策も活⽤しつつ▼創薬コストの低減▼製薬企業の費⽤構造の⾒直し▼制約業界再編―に取り組む。また2021年度の薬価改定(毎年改定における初回の中間年改定)の対象範囲について「⾦額ベースで⾒て国⺠負担の軽減に⼗分につながる」ように実施する
財政制度分科会2 190423
 
【新規技術の保険収載】「費⽤対効果」や「財政影響」などの経済性の⾯からの評価も踏まえて医薬品・医療機器等の「保険収載の可否も」含めた保険対応の在り⽅を決める仕組みを導入する

 
 薬価制度抜本改革の一環として「毎年の薬価改定」が実施されます(2年に一度の通常改定と、その中間年の改定、2021年度が中間年改定の初回)。この点、改定の規模が今後の重要論点の1つとなりますが、財務省の「⾦額ベースで⾒て国⺠負担の軽減に⼗分につながる」ものとすべきとの提言が、今後の検討にどのような影響を与えるのか注目されます。

また急性期の入院報酬については、中医協の下部組織である「入院医療等の調査・評価分科会」で間もなく議論が本格スタートすることから、その動向に注目する必要があるでしょう(関連記事はこちら)。

 
また上記提案のうち「受診時定額負担」は、診療報酬というよりも、医療保険制度に関する事項と言えます。これに関連する提案内容としては、▼医薬品の有⽤性に応じた保険給付率の設定(抗がん剤は給付率を高くし、逆にビタミン剤等は給付から除外するなど)▼一般用医薬品と同⼀の有効成分を含む医療⽤医薬品の保険給付の在り⽅⾒直し(保険外併⽤療養の活用も検討)▼後期高齢者の医療機関窓口2割負担▼保険給付率(保険料・公費負担)と 患者負担率のバランス等を定期的に⾒える化し、診療報酬、保険料・公費負担、患者負担での総合的な対応(いわゆる医療版マクロ経済スライド等)―なども提案されています。すでに社会保障審議会・医療保険部会で「困難」「時期尚早」と判断された内容も多く、今後、どういう切り口で議論を行うのか注意深く見守る必要があるでしょう。
財政制度分科会1 190423
 
さらに、効率的な医療提供体制を再構築するための「地域医療構想」に関しては、▼都道府県知事の権限を強化する(⾃主的な取組が進まない場合の、⺠間医療機関に対する病床機能転換命令権限等)▼「地域医療介護総合確保基⾦」や「国⺠健康保険の保険者努⼒⽀援制度」において地域医療構想の進捗状況を評価する際に、「合意内容と2025年における必要病床数との整合性」「病床機能の分化・連携の進捗状況」「医療費適正化状況」などを指標とする▼メリハリのある地域医療介護総合確保基⾦の配分調整を行い、病床ダウンサイジングに係る追加的な⽀援策を検討する―よう求めています。

 
なお、介護保険制度改革(社会保障審議会・介護保険部会で、本年(2019年)中に意見を取りまとめ、2020年度に法改正等を行い、2021年度からの第8期介護保険事業(支援)計画に生かす)に関しては、次のような提案がなされています(関連記事はこちらこちら)。

▽要介護1・2における⽣活援助サービス等について地域⽀援事業へ移⾏し、⽣活援助サービスを対象とした▼⽀給限度額の設定▼利⽤者負担割合の引上げ―などを検討する

▽介護費の地域差縮減(まず半減を目指す)に向け、▼保険者機能強化推進交付⾦(インセンティブ交付⾦)への適切なアウトカム指標の設定・活⽤やPDCAサイクルの確⽴▼保険者機能の⼀層の強化―を進める

▽在宅サービスについても▼総量規制▼公募制―などの「サービスの供給量を⾃治体がコントロールできる仕組み」を検討する
財政制度分科会3 190423
 
▽介護療養の転換を進める
財政制度分科会4 190423
 
▽介護サービスの経営主体の統合・再編等を促す

▽介護ロボット等の設備に応じて設備・運営基準や報酬に差を設けるなど「⽣産性向上に向けたインセンティブ」を強化し、底上げを図る

▽介護保険サービスの利⽤者負担を段階的に2割へ引き上げる

▽ケアマネジメントに利⽤者負担を設け、利⽤者・ケアマネ・保険者が⼀体となって質の⾼いケアマネジメントを実現する

 
 
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